第3話
転生。転移のフレーズが脳裏に浮かぶ。ラノベでよくあるアレだ。一時期嵌まって読み漁ったので知識はある。転生は普通に生まれ直す物で、転移は前世と同種か上位者が定番であったはずだ。にしてもそのどれにも転移先を選べるイベントが発生し、神かそれに類する者と出会い、Sが付くような能力を与えられて、ウハウハハーレムが決定事項。
イベントは無く、神にも会えず、ハーレムどころか美女に剣を向けられる。これ不潔だし。
「神よ・・・これはあんまりだ」天井を仰ぎ、返らぬ返事を求めた。あれか!不慮不遇の事故でも、不治不全な病で死んだわけじゃなく、BNNで死んだからなのか。仕掛けたのが自分自身とはいえ、事故は事故だろ。自殺ではなかった。
「な、なにを言っている」
「おれが死ねば、その悲劇は終わるのか?他に魔王は居ないのか?ここは世界の何処ら辺で、大陸なのか孤島なのか?教えて欲しい。取り敢えず」床に転がした変態の魔剣とやらを拾い、剣の鞘に戻して床に置き直し正座して向き直った。
「お前の他にも、魔王と呼ばれる異形は後6匹居る」所謂7大魔王という者か。
「ならば、その後ろには魔神、とか?」
「そうだ。魔神サタヲと呼ばれる奴が居る」なぜだ!後少し、頑張れよ!ン
「おれは、元人間だ。簡単に言えば、朝起きたら急にこれに転移させられた」
「そんな話を信じられるものか!」それはそうだよねぇ。普通信じられないよねぇ。
「では、後何匹魔王が生き残っているんだ」
「お前が、手始めだ。他は暴れると言っても、お前程の悪行は晒していない。真っ先に奮い立ち上がった私たちの前に朽ち果てろ」
「・・・初手、だったのか。なんとなくだが、おれが一番弱いとか?」
「・・・そうだ」ですか!なら襲われる前に討伐すれば良かったと。思わずには居られない。初手、手始め、小手調べ。漂う小物感。
「ではなぜ、やられる前に討伐しなかった?忌むべき魔王だろ。あれか、何処かの平和国家のような専守防衛とかあるのか?にしたって1国滅びる前に手を打てよ」押し黙る勇者たち。一様に暗い。どうやら図星らしい。
「この聖剣が神から遣わされたのが、ほんの2ヶ月前だからだ」あまりに正直な勇者様だ。なるほどと。対抗手段が手に入ったのが最近なのか。
「グリエール。魔族に情報を与えてどうする」仲間の一人が横槍を入れる。
「まあいい。質問を変えよう。おれを倒そうと強い仲間を集め、ここまでやって来た勇者グリエルさんは、正直おれを倒せそうか?さっきの感触だと、避けられそうだが」
「くぅ」勇者が苦い表情を浮かべた。
「おれが7大の一つだとして。倒せば魔神の力が弱まるとか?」
「そんな都合良い話ではない!」ないのかよ!しかも怒ってる。