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第2章 第26話 リミットブレイク

 真っ白な雪原が続く。その中にポツポツと出来上がる小山。

 魔物たちの屍。下級の部類。目標の洞窟まではたっぷり距離がある。

 「焦るな。右手が押されてる。中央誰か加勢に向かえ」

 どうして大雑把な指示を出しているか。それには理由がある。

 大筋の暫定プランはこうだ。

 2週間目に突入した今、2週目以内に魔王の取り巻きまで到達。

 3週目以内にカリシウム本体の討伐。

 最後の4週目に師匠の卒業試験。本当の地獄はそこに在る。

 後方に見える小高い丘に、腕組みした師匠他、セラスさん、ゴラちゃんが並び、控え目にクレネが本日のお弁当を持参して顔を覗かせている。頼むから今日は、普通であってくれ!

 こんなに近くに居て大丈夫かだと?師匠を馬鹿にしてるのか!魔王以下全ては調教済。セラスさんに目標を絞っただけで、骨の髄まで刷り込まれた恐怖が呼び覚まされるって寸法さ。

 ゴラちゃんは強い。残りのメンバーよりも段違いに。レベル差を考慮して、今回は手出しを禁じられた。

 クレネは配給係兼、緊急救護。この訓練において、クレネに矢を射らせたら減点対象。晩飯抜きのご褒美が待つ。激戦と乱戦を繰り返し、疲弊しきった身体に飯抜きでは寝られないわ、翌日動けなくなるわ。栄養ドリンクだけでは生きられないのと一緒。

 大雑把な指示に戻る。

 理由は至って単純。個々と個別の連携能力を伸ばす為。乱戦の中で指揮者が居なくなっただけで敗北するような下手を打たないように。独自判断、即時決断。例えるなら、隣の席の奴がどんなに嫌いで相性悪くても、組んだならきっちり仕事はやり遂げろってな。

 「孤立だけは許さない。行き成りは無理だろうから、手始めは3分。誰か一人でも単独で行動していたなら、全体責任で罰則を科す」

 連帯責任だそうだ。

 常時多数相手の戦場で少数精鋭で戦い抜く場合、孤立状態のやつから狙われる。後には当然の結果が待つ。

 殲滅能力の高い俺、グリエール、ウィート、茜、ガレーの上位組は孤立しても雑魚相手なら問題ないだろうが、他の下位組はそうは行かない。

 「おれは何時でも逃げれるぜ」とのユードは別格とする。

 排泄行為は?こんな戦場でそんなリアルを語らせるのか?女子組の目が刺すように痛い。

 どうしてもって時は、誰かを連れて一時離脱するしかないだろうな。

 「は?なんで私が男のトイレに付き合うの?仕事じゃないんだから、お断り」

 仕事に関してはよく解らないが、茜が師匠に。

 「飲めないなら、今すぐ私を殺しなさいよ!」と食って掛かり。

 「む。そちらの事情は不問としよう」師匠を渋々納得させていた。

 それ位にデリケートな問題だ。これ以上の深掘りは止めてくれ。

 念話も使用可能レベル域に達している。そちらの許可は次週以降。こっそり使えば・・・もう解るだろ?

 便利なアイテムBOX。大きな物は俺とガレー君にしかない。女子組はクレネの召喚術を織り交ぜて死に物狂いで、夜な夜な行き渡らせたらしい。女子の執念恐るべし。

 長らく暇を持て余していたゴラちゃんだけは独自開発をしていた。里からの手土産もそれで持参していた。地上最強種を嘗めてはいかんぜよ。

 先日の夜、そのゴラちゃんが土産を片手に。

 「エルドがのぉ。「いったい何時まで待たせるの、ツヨシ君」と言っておったぞ。あの時、挨拶行くって宣言した切りじゃからのぉ。悶えながら怒っておった」

 あぁ、やっべぇ。なんで記憶持ってんの?の疑問よりも。いったい累計何年待たせたのかが問題だ。

 行きます。許されるなら直ぐにでも。もう少々お待ちを、御母様!

 「ねぇ、剛。ボディーローション作ってよ」BOXにそれ・・・入れたかったんかい。

 乾燥地帯では欲しい物ではある。お陰でクレネさんのお肌もすっべすべのつやっつや。

 生唾出て来た。安定期に入ったら・・・割愛。

 男子組のほうも、俺とガレー君で暇を作ってコーチング中なので、小規模なら行き渡るのも時間の問題。各自のセンスを乗り越えるだけの需要と欲求。人の欲望は留まらないねぇ。

 これで貴重な最上級やエリクサーを心置きなく配給出来るのだから問題ない。

 敵が念話やBOXを編み出してしまったら?

 「念話に似たような物なら、魔族が基から得意な分野。BOXは、出される前に叩き潰せ」

 師匠。そりゃそうなんですけども!


 2週目の基本布陣。

 前衛。グリエール、ウィート、ダリエ、ゲップス。近接火力が高いメンバー。

 中衛。茜、ユード。自由度の高いメンバー。今回は孤立回避用の補助的な色が強い。

 後衛。ガレー君とメデス。何でメデスが後ろに居るかって?何でも今回は、投擲術を磨きたいらしいよ。ずっと前張ってたから、他をと。

 俺とアーレンは後援部。全体の回復サポートと簡易軍師係。

 お前らだけ楽してないか?

 だから!師匠を嘗めるのも大概にしろよ。あの師匠がボサッと立ってるワケねぇだろ!!

 突然ランダムで飛んで来る攻撃に、誰が対処出来る。俺しか居ないだろ!!

 特別メニューからダリエ君がしれっと外されている。

 今回は2人か・・・と安堵の表情を浮かべた俺を、師匠は見逃してはくれなかった。

 戦況は1週目よりも酷い。武器と術を一部解禁されていていも尚。

 前方の小猿たちの密集隊形。切り崩せるだけの火力がまだ出せていない。

 左からの野生羊の群れ。右からのグレートウルフの群れ。どちらも数えるのを止めた。

 左の羊はまだ良し。臆病さを何処かに置き忘れただけの野生暴走集団。回避すれば素通りしてくれる。

 右手のウルフが厄介。突進に加え、徒党連携を組んでの噛付き攻撃。確実に薄くなった所を攻められる。

 アーレンに背中を預けて、後ろを向いた。

 「アームド・フォース、アーマード・ボディ。クリエイト・リビルドアップ・ポーション」

 「良い勘だ。だが」

 俺の身体ではまだ師匠の一撃に堪えられない。補助を掛けたのは気休め。

 即時に飲める用に上級薬を用意した。

 「ぐぉぉぉ」

 悲鳴を上げるのは、背中を支え合うアーレン。アーレンのシールドも破られ、俺の腹は見事に抉られた。声すら上げる暇も無し。

 詰まった喉に薬を無理矢理流し込む。

 目で追うな。風を感じろ。空気の乱れを掴め。解ってはいる。解ってはいた。

 師匠は、俺の師匠は。俺たちの師匠は、遙か高い頂きの向こう側に立っていて・・・。

 俺の意識は、2週目の3日目にして。刈り取られ・・・。

 「違う!!!ダメだ!こんな物は、まだ温い!」

 血反吐を吐きながら、両膝を毟りながら。倒れようとする身体を奮い立たせた。

 「立つか。3割程度で行ったのだがな」

 嬉しいねぇ。1割て言われないだけ。

 「アーレン。3分だけ前を任せた」

 「死ぬなよ、若いの。この先のほうが遙かに地獄と心得よ」

 「言われなくとも!」

 俺は、消え去る師匠に向かって唱えた。

 「スピードスター・リミットブレイク!」

あんれぇ、エンディングっぽいぞ。

そんな事はありませんので、引き続きお願いします。

駄作らしく駄作っぽく終わらせるので。


以下、ネタばれ含みます。スルー推奨。



 本編短めにつき。設定のおさらい。今回は武器編


 何物でも打てる鎚。メギョンギルド。

 魔神編で再登場予定。しかし人間の身体では扱えません。一瞬だけ。


 ロックド・ソール・チェイン・ザ・アイテムボックス。現BOXの原型。

 一度発現させた物である為、スケカンも魔石無しで発動が可能となりました。具体的なイメージを持っていたのは、彼らだけ。


 世界を渡り、希望を繋ぐ。ホープアクス。

 並の人間には扱えない程の大きなバトルアクス、黒い戦斧が出来上がった。

 メデスの主装。前代までは旅立ち前に女神が闇市商人を通して手渡し、現代は変装師匠が同じく闇市経由で渡しました。


 全てを見通す、道標。ホークアイズメイス。

 アーレンの主装。同闇市経由。これとは別に、魔道書を道具袋で持ち歩いてます。

 僧職なので。書物は家宝を持ち出した物。殆ど使ってはいません。お守りのような書。


 守るべき者、守る者に従う。ガーディアン。

 ブラインの主装。過去にピエドロから受け渡されました。

 世界樹の枝の経緯については、別途魔神編本編にて紹介します。


 持つ者の生気を奪い、垂れ流す。パージ。

 ピエドロが悪戯で造った物ですが、現代でもアスモーデが手にします。

 強力な武器には変わりなく、使い方次第ですので。


 何事も、何度でも所有者の元に舞い戻る。リバース。

 ガレストイの主装。代々のリラの家系より頂戴する物。

 舞い戻れるのは所有者の命ある限り。死ぬ前に所有権を譲れば効果は続きます。

 儀式は不要で、杖のほうが認めれば権利は移譲されます。


 時を操る橋立。偽り無き魂の元へ。リヴィジョン。

 現在のノーネイム。クレネの主装。効果は失えど、性能はそのままに。

 再臨するかどうかは・・・。


 終焉を告げる物。集いし3錫。クリアポメロン。

 海底神が手にする魔槍。主に3章で出ます。

 王都崩壊時の流出で、海にまで流れ出しました。質量重量が膨大で、急場の女神には掴み取れずに。


 断罪する雷。揺るがぬ正義の名を借りて。エクスキャリバー。

 勇者から侍女へと移譲後、イグナシオへ変化。以後はウィーネストの主装。

 起点。始まりを告げる希望。


 魂をも喰らう、悪しき牙。ソールイーター。

 牙と言うのがポイントでした。現在のゴライアイスの主装。

 変幻自在の能力はありませんが、真価を発揮出来る彼女なら。

 やってしまうでしょう。なにせ最強なので。


 縛られる事も、縛る事もない。チェイン。

 ユードの主装。こちらは聖都に渡る前の盗賊のアジト襲撃時に入手。

 初期に出さなかったのは、レベルが低く扱えず。単に投げるのが勿体ないと思っていたという説も。投げても戻って来るのにね。尺は短くとも、一番自由度の高い武装です。


 人々の願いを集め、全てを断ち切る刃。アルテマ。

 現ペルディア国王に権利があり、勝手に持ち出しても本領は発揮出来ません。

 「あれもか・・・」と呟いていた物では勿論ありません。


 復讐の鉄槌。能力吸収機能搭載。リベンジャー。

 魔神の主装。打ち出の小さくはない槌。これで叩けば何かが起こる。

 女神でさえ読み切れない、底なしの力を秘める。


 全ての罪を問い質す、不屈の刃。エクスキューショナー。吸収自動進化機能搭載。

 現在のグリエールの主装。エンディアへと変化。変化時に自動進化機能は失われました。

 残る吸収機能に気付くかは本人次第。終点。終わりを告げる尊望。

 ウィーネストと共に居る事で起こるのは、導きだけではありません。


 持ち手の意志を反映する。聖にも邪にも。それは持ち手次第。メサイヤ。

 ゲルトロフに渡った両刃大剣。刀身は身の丈程に。こんな先輩の作品を見てたので。

 「チッ・・・こんだけ」となりました。


 変幻自在。迷い無き一撃は、如何なる壁も破るであろう。ニルヴァーナ。

 ダリエに渡された長槍。先輩たちの腕が、ピエドロの下などと誰が決めました?

 性能は凶悪。触手攻撃のイメージを有している彼が使えばどうなることか。

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