表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/130

第2章 第18話 長い時、永い刻

 部屋に戻り、翼を伸ばして、クルクル回る茜を俺たち3人で眺めていた。

 「まー、良かったんじゃない?今はこれしかないでしょ。責任取って嫁に加えるとか言い出したら、本気でどうやって殺そうかと考えてたわよ」

 言わなくて良かった・・・。暴走した俺なら言いそう。

 昨日の3人の言葉が無かったら。

 今はこれしかない。茜さんの言う通り。

 いつの日か、彼女が自力で何もかもを思い出したら。どんな答えでも受け止める。その覚悟さえ持って、逃げなければいいんだと。信じるしかない。

 出来れば悪即斬だけは、止めて欲しいな。

 「これ以上考えたって答えは出ない。茜、ありがとな。戻ってくれて。その・・・おれが言うのもアレだけど」

 「戻ったほうの剛の事?」

 「そうそう。・・・大丈夫なのか?1人で」

 「大丈夫よ。剛と同じ事をしたからb」何その親指。って、うそん?

 「出来たのか?どうやって?」

 「そんなの女神ちゃんに頼んだに決まってるっしょ?ただ、少し性格のバランスが崩れて、ちょっぴり残忍なほうが帰っちゃった」

 いいのかよ!と心配した所でどうにも出来ん。戻った2人に任せよう。

 「こ、今度聞かせてくれよ。元の世界の事」

 「なーに?こちが嫌になって帰りたいとか?」

 バンとクレネが立ち上がった。気が早いですよ。

 「ちょ・・・」

 「違う違う。安心してくれ。向こうのお袋と親父が、どうなっていたのかが気になっただけ」

 「あぁ、そうね。元気だったよ。私たちが起きる寸前までは、たいぶ追い込まれてたけど。金銭的にも精神的にも。でもそこは私のパパさんが協力してくれてたみたい」

 「そっか、良かった。これで一安心。後はあいつに任せるさ。で、こっちでの挨拶だが・・・」

 今後の進路について悩んでいる事を話した。

 クレネの両親に会うのは確定。ウィートとゲップスの祖父さん、ペルディア現国王の扱いについて。現時点では国民共々生きている。元気かどうかは別で。

 「ウィートは帰りたいか?救いたいか?」

 「お会いしたい気持ちはあります。なぜ私たち兄弟だけを追放したのか。直系である両親を殺害してまで。何を思っていたのかを。お聞きしてみたいです」

 両親は既に亡くなっているんだな。

 「ごめんなウィート。君の前で、親の話をしてしまって」

 「お気になさらず。親とは言っても、生前も数回会っただけの不逞の両親でしたから。今ではお顔すら思い出せません。ツヨシ様は、寂しくはないのですか?」

 これ以上の深掘りは止めよう。デリカシーが無さ過ぎる。俺でも解るよ。

 「寂しくはない・・・と言えば嘘だな。元の世界を懐かしく、寂しいと思う時も度々ある。おれにはみんなが居てくれるから、寂しいよりは幸せ者だよ。おれの場合は、半分は望んでこっちに来たようなもんだしさ」

 「ツヨシ」クレネが飛び付いて来た。慌てて抱き止め、熱い抱擁。あぁ、いい匂い。

 「それで。これからの進路だが。ブシファーの強さを見た限り。このまま南に行ってもランバルに全滅させられるのがオチだ。勇者たちと共闘しようと、ウィートの宝剣があろうと、茜が居ようともな」

 「ではやはり。行くのか?おじさんの所へ」

 「しか手はないだろ。中央のペルチェは、ウィートが単独撃破出来る位にならないと。接近するだけでアウト。宝剣も先に手に入れないと戦えもしない」

 「うへぇ。私も修行に参加すんの?」

 「師匠なら何人増えたって変わらないから安心しろ。みんなで地獄見ようぜ」

 「剛。目が笑いながら死んでる。こ、怖い・・・」

 「お話を聞く限り、前代と同じになるのでは?」

 「そうでもないさ。グリエール組と行動を共にする。それだけでも師匠との修行期間が短縮出来る。グリエール組と別行動を取るかどうかを考えるのは、ゴラちゃんが暴れ出した時だけ」

 クレネの拳が握られる。燃やさせないさ。・・・消火はするからね。もしもの場合は。

 テレポートが使えるようになるのは概算で盡力が300以降。半端に使えば肉体の一部だけが飛んで行く。我ながら恐ろしい事をしたもんだ。冷静に冷静に。

 念話も500以上無いと厳しい。双方のバランス、通話時間と余力盡力にも影響が出る。

 マップは修行後辺りにならないと、ワールド表示不可+信用性に欠ける。

 現状でランバルと数十万の軍隊に挑む危険性が、充分にお解り頂けただろう。


 プランはこうだ。

 ゲップスと合流後、グリエールちゃんたちと聖都に訪問。教皇に仲間だと認めさせる。魔剣をチラつかせても良し。

 いや早いか。

 ダリエ君を招集。又は誘拐。ウィートの寡欲を芽が出る前に奪って貰う。

 これだけでもかなりハードルが高い。説明が超難しい&エリクサーをどう飲ませるの?

 アスモーデは今の所はスルー。

 北に渡り、師匠との修行。修行自体も短縮するか、最悪途中で切り上げる。

 南に折り返し、人間同士の戦争を食い止める。宝剣を報酬としてゲット。

 祖父さんに会うかどうかはウィートの気持ち次第で決める。

 「今直ぐには決め兼ねます。兄様とも相談したいです。寡欲はまだ発現していません。上手く行かなかったら自力で何とかして見せます!」

 よく言った!偉いぞウィート。犯人は妹の茜らしいが、真偽は不明。

 女神が信用出来ないんじゃなく、信じたくない気持ちが締める。何を思って与えたのか。

 南に行った時にあの小屋へ立ち寄るのもいいだろう。上手く聞き出せるとも思えないが。

 こればかりは不確定要素の色が強い。

 クレネを妊娠させなきゃいいじゃんて?それはその・・・その時の流れってやつさ。

 「以上が今浮かぶ最善と最短ルートだ」

 「ゴラと、里を後に回すの?」

 「不満だろうが今は我慢してくれ。ゴラちゃんが何時どの時点で暴れ出すのかが鍵になる」

 「ゴラちゃんも前の記憶持ってたりしない?」

 「期待したいけど。そこまで都合良く運べるとは思えないな。それに」

 「それに?」

 「ゴラちゃんは、おれの圧倒的強さを見せれば・・・。見せ・・・。ん?」

 「どしたの?」

 「ゴラは、前代よりも。格段に強い」クレネさん!

 大正解で大問題だ。単独撃破どころか、勇者組だけで倒せるのか。それより前に俺と出会わなければどうなるんだ?嫁に来たいと思わないのでは・・・。

 停止しながら思考中。

 「タイマンで。差しでおれが倒すしかない!今回はグリエールちゃんじゃなくて」

 やっべぇ。嫁にする前に嫁と戦うのか・・・。訳が!わ・か・り・ま・せん。

 今回のシーパス君たちには期待は出来ない。だって普通の一般人だもん。ベースではそこらの人間よりは強いだろうけどね!

 「ダメだ・・・。昨日の晩から無い頭使い過ぎて、疲れた。ちょっとだけ寝るわ」

 立ったままだと余計に疲れるので、クレネの肩を借りてベッドにダイブした。

 元世界の誰かさんよりも、最速で眠りに落ちた。スピードスター・・・?



 「ずっる。クレネそれ狙ってたな」

 ベッドの前でアカネが口を尖らせている。正妻特権だ、許せ。

 「元気になったけど。眠そうに見えたから」

 ツヨシの頭は今、私の膝の上に在る。大きめの鼾が可愛らしい。

 これから激しい戦いの連続となる。こんな一時の休息くらい、女神は許してくれるだろう。

 女神とおじさんは、残る力の限りで私の魂を過去へと飛ばしてくれた。

 記憶を持ったままと言うおまけ付きで。

 感謝しかない。感謝だけでは語れない。

 膝の上で眠る彼と、私にやり直す機会を与えてくれた。

 ツヨシの計画には不備は無い。無いのに、まだ何かが足りない。そんな胸騒ぎが鳴り止まなかった。

 期待してはいけない。解っている。その上で、ゴライアイスも同じなのではと期待する。

 東の竜の魔城で、私たちが来るのを。

 私よりも遙かに長い時を越えて。待っていてくれていると。

 「ウィート。お願いがあるの」

 「解っております。グリーと他の皆さんで、近くのダンジョンにでも潜りましょう」

 「私も。どうせやる事ないし。サポートするわ。大きな魔石は私が食べるってことで」

 凄いなアカネは。魔物の魔石を喰らうなど。前代でも思い至らなかった。

 「食べ過ぎて、魔王にはならないでね」

 「肝に銘じとくわ。大丈夫よ。私にだってクレネと同じ位に、愛があるから」

 笑ってはいるが、寂しげにも見えた。強くなる為でも、どうか無理はしないで。

 「二度と私に、弓を向けさせないで」

 「解ってるって。クドいぞ」

 ブシファーと戦っている最中でも、私はアカネに照準を引き絞っていた。

 あんな想いはもう沢山。早く終わらせたい。でも焦ってはいけない。

 眠れる旦那様の顔を見ながら、私は女神に祈った。

 「ワールドマップ、オープン」

 表示はまだまだ全盛期には至らない。

 けれども、北西の空に浮かぶ虹色だけは。あの時のまま、静かに佇んでいた。

 これが再び動き出す時。それが全ての答えを出す時だと。何となく解った。

 独りになった旅の途中でも。きっとこれからの修行の時でも。

 ブラインおじさんは、私だけを強くはしない。

 そこに、全く別の理由が有るかのように感じる。

スッキリなんて行きません。

4人は口には出さずとも、7つ目を心配しています。

いったい誰がと

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ