第2章 第16話 晴天の空に誓って
奴の身体は堪えられなかった。
あらゆる生物であればそうだろう。完全な魂が2つ、抱えるには身体一つでは足りない。
可能な物が在るとすれば、無機物か単純構造の有機体。
金属と、植物。自然体。岩や大地や水。空気。
形は様々。魂と言う形も様々。自然体の中では、魂の意志ある形を保てない。
「あれは、今の勇者じゃ厳しい」
「でもこのまま放置も出来ないわ」クレネさんの言う通り。
ここまで来て放棄は難しい。グリエールを死なせる訳にも行かない。
「口惜しいです。先に南に行って、聖剣さえ手にしていればブレイバーが撃てるのに」
悔しそうに口端を咬みながら、魔王を睨み付けていた。
詰まる所、俺も魔剣は使えない。しくじればまた中に入り込まれる。
「翼には期待しないで、外周を抑えるのに手が一杯だから」
張り巡らせた壁も、長時間は保てない。解除すればモンスターハウスの出来上がりだ。
「通じるかは微妙だけど。終の陣。破限の追送。届いて!」
引き絞った弓の先に、光の鏃が浮かび上がる。
放たれた矢は、片方の眉間の前まで行って停止した。
「くっ。障壁の壁が厚すぎる」
考えろ。何か手はあるはずだ。
奴のタフさは折り紙付き。溶岩の熱さにも堪えられる身体。低温にも強い。
火ではなく、風でも雷でも地核でもない。残るは水か・・・。
覚醒ガレストイ君が居たなら、風の合わせ技も可能だが今の彼もレベルが足りていない。
「クソッ、面倒くせぇ!一匹目で躓いてられないんだよ!!」
「め、面倒って」茜が薄く笑っていた。
「スプラッシュカッター・スピニングアロー!!」
イメージしたのは、アクアカッターの進化形でのドリルタイプの矢。
どんな壁だって貫いてやらぁ。盡力?水筒を空にしてやるぜ。
「どちらかでいいから。邪魔な壁突き破って!もう一度打ち込む」
「頼んだぜ」
「私の盡力も使ってください!」
ウィートの手が右手に添えられる。
ブシファーの前の空間に亀裂が入った。
「これは、いったい何ですか!?」
「漸くのお出ましか、勇者!生憎説明してる暇は微塵もない。
ガレストイ!風の魔術をありったけあいつにぶつけろ!
アーレン!グリエールに補助とブースト!
ユードとメデスは外周の雑魚の掃除を頼む!
グリエール!片側を潰した瞬間を狙って、最大でレクイエムをかましてやれ!
返事はどうした!!!」
「「「「「はい!」」」」」
絶妙のタイミングでの加勢に、テンションが可笑しな方向に振れたがどうでもいい。
水筒の水を大きく口に含んで、口でウィートにも運んだ。
飲み干してから、右手の甲に左手、ウィートの両手を添えた。
「行くぞ、みんな。力を尽くせ。ウィート」
「はい!」
「「スプラッシュカッター・スピニングアロー・デュアル!!」」
ブシファーを守っていたガラスの壁が砕け散った。
「今よ。終の陣。破限の追送!」
光の矢が左側の眉間を貫いた。
「黄泉へと送り届けます。受けなさい魔王!ファルナイト・レクイエム!!」
誰も居ない右手から、撃ち込まれた一閃は。正確にブシファーを2つに分断して潰えた。
「あーしんどい。1つ目で総力戦になるとは思ってなかったぜ」
「疲れましたね」
「流石に私も疲れたわ」
「しんどいしんどい。私もBOXに戻ろうかなぁ」
4者4様に息を吐き、背中合わせで座り込んだ。若干1名、翼が邪魔なんですけどね。
「待って下さい。説明して頂けますか?そして」
グリエールは茜に聖剣を向けた。
「どうして魔族が平然と生き残っているのですか?」
魔王が討伐されると、城に居た魔族や魔物は一時的に消失する。数日すると、城も崩れ去り反転して地面が抉れて新たなダンジョンと化す。暫くすると魔物が沸いて、やがて力を蓄えた魔物が魔族へ、魔族が次世代の魔王へと進化を果たす。
魔神が何処かのダンジョンに居るとされる由縁。
地上に出ている人型の魔族は、殆どが人間種との混血だったり、人間が魔堕ちした成れの果てだったりと。一概に定義は難しい。
地上で成長した者も居るし、独自の進化を経て魔王まで成り上がる者も。
南の魔城は直ぐに崩れるタイプ。北の洞窟やゴラちゃんとこの城はそのままだったりする。
元々が自然に出来た造形であるからだ。
ここはダンジョンとなるタイプ。完全にブシファーが消滅した証のような物。
前回は最後まで見届けなかった。必要が無かった。魔剣の中で温々と生きていたのを知っていたから。
「失礼ね。私は魔族じゃないわ。天使よ、天使。女神様の遣いな訳。魔王とは関係ないの。お解り?ユーアンダスタン?」
「ゆ、ゆーあ、何ですか?天使だなんて聞いた事がありません」
「そりゃそうよ。天使は私が最初で最後だし。何ならレクイエム撃ち込んでみる?弾き返せる自信あるよ」
強気に出たな。前回両断されてたぞと、突っ込みそうになってしまった。
魔堕ちしてた頃とは違うのかも。深入りは止めよう。本人が自信満々に言ってるんだし。させたのは俺なんで、蒸し返したくはないな。
「勘弁してやってくれ。何れは魔族と共闘共存するような未来も在るかも知れない。それに彼女たちはおれの嫁さんだ。剣を納めてくれないか?」
「私は賢人種よ。訳あって森の外で旅している。文句ある?」
「い、いえ。別に他種族だからと、敵意があった訳では・・・」
バツが悪そうに聖剣を納めてくれた。
「因みに私は、まだ人間です。混乱しているのは解りますが、将来は誰にも解らぬ物。落着いて下さい。グリエール様」
「まだ?そうですね。解りませんね。解らないままに剣を向けてしまって、申し訳ありません」
「女神様と同じくらい、広ーーーい心で許してあげるわ」
「それで、なぜ私たちの名前と特徴をご存じなのですか?初対面ですよね」
「簡単よ。女神様から全部聞いてるから。風貌だけじゃなく趣味や趣向まで知ってるよ」
ご存じなのはマップ君だ。茜が調子に乗って、女神に全責任を押し付けようとしている。まあそれが一番丸く収まりそうではある。
「ぜ、全部。少し・・・、とても、お恥ずかしい」
グリエールちゃん、後ろ!ガレー君も顔真っ赤だぞ。振り返れ、今だ!そこだ!
あ、メデスの後ろに隠れてしまった。彼をナイーブ君と命名したい。
「積もる話もあるでしょう。何処か町まで戻ってからにしませんか?」
「それでしたら、オルタナ王都に宿を取っています。そちらでお話を」
「オ・・・」違和感に気付いた瞬間に、背中に悪寒が走った。
他の3人も同様の反応。
「オルタナ・・・。確かに、あそこはオルタナ・・・」
「ウィート。今は口にするな!2人も言葉に出すなよ。これは絶対に駄目なやつだ」
「わ、解った」
「ほーい」
「何でもない。こちらの話だ。オルタナのどの宿屋だ?」
「コルサと言う名の、南門からほど近い中級の宿屋です。必ず来て下さいね」
念押しされなくても行きますとも。違和感の原因も探りたいしな。
ここで、捕捉を加えておこう。
一つ、BOXの中に魔石のコレクションを入れて来なかったか。
理由。豚に喰われるのを恐れたから。
一つ、稼いでいた金はどうした?
簡単だ。俺自身が余計な事をしない為。金脈ならシュレネーさんとウォート氏が居ると踏んで全てを捨てて来た。
一つ、追加した武具はどうして入れてないの?
購入するのを忘れてました・・・。うっかりしてたぜ。
一つ、なんで半漁の身体を入れて来たの?
未来でどう使われるのかが解らなかった。水陸両用の身体を、器にでも使われたら厄介な代物となってしまう。パラソルたちに食わせても良かったかもと、今更ながらに思う。
愛着が湧いた身体を、目の前でガブガブやられるのもねぇ。嫌だよ。
他に遣い道があるかもとも考えて。
オルタナに到着後。
シュレネーさんから、ウォート氏への紹介状を早速使い茜の登録を行った。
グリエールちゃんとの会合を先行させる為、婚姻届を一旦保留。まだゴラちゃん居ないし。
金の角の換金と、ランクアップを同時に済ませた。
魔王を討伐した勇者のお零れを貰った丁で。
茜はBOXにはもう入れない。初手で魔剣の問題を解決出来たのは喜ばしい。
翼は有用だが、仕舞って貰っている。無論目立つっしょ。
ここまでクレネだけを翼で運んで貰い、俺とウィートは素で爆走トレーニング。
レベルの差を少しでも減らす為に。
俺、62。ウィート、58。クレネ、126。茜、143。
茜の詳細に関してはまたの機会にする。敵に回っていたらと思うと、ゾッとするぜ。
クレネの前代との差異があるのは、所々ショートカットしたからだと言っております。
ティアレスの所在を知っていた師匠が、融合を遅らせた訳?
現世の魂をある程度成長させないと、崩壊を起こしてしまうそうだ。
賢人の魂奥ゆかし。そして今度も、師匠ありがとう。前からだけど、頭が上がらないよ。
師匠が消滅するのを止めたい気持ちもあるが、女神の事を思うと止められない。
ここまでの説明は、クレネとウィートと茜には隠さず話をした。
みんなそれぞれに思う所があるのだろう。笑い話でもないしな。
表情は暗いが、俺たちは誰も絶望はしていない。大切なのは、この先。
今後、どんな失敗を冒そうと、もう後戻りは出来ない。決着は今世。必ず終わらせる。
そして、明るい未来に向かって。全員で生き残る。
さてさて、グリエールちゃんたちに、どう説明したものだろう。
説明する上で、ダリエ君の召集とアスモーデの扱いも考えなくては。
「あれは、要らない」クレネがムッすりしている。
「ですねぇ。とても気持ちが悪い人でしたから」ウィートも表情を曇らせる。
「その変態の目を潰させたのも、クレネだからね!」茜さんがお怒りだ。
アスモーデはスルーか、スルーなのか。スルーしていいのだろうか。
「味方に引き入れないとしても。次世代の魔王に成られても困る。何かしらの対処はしないとな。気は進まないけど、遭遇した時に考えよう」
今の段階では、お流れの方向で。
俺たちの部屋も、コルセに取った。最上階の、勇者たちの隣の部屋に。
別の宿にするのも違う気がするし、逃げているようで癪だった。
グリエールちゃんだけ、一階下の別部屋に居る。女の子だもんな。
ウィートが寂しそうにしている。まだ我慢だぞと。焦らない焦らない。
部屋の扉がコンコンとノックされた。約束の時間が来たようだ。
「グリエールです。入ります」
「どうぞー」
招いたのは、こちらだから俺たちの部屋に。
世界の命運を分ける、と言っては大袈裟か。交渉の始まり。決裂だけは絶対回避にて。
大テーブルを挟んで、対極に並んで座った。
中級でもスウィート。予備の椅子も物置部屋に納めてあった。
にしても大人が9人では、広いリビングスペースも少々手狭。
上座からウィート、対面にグリエール。ウィートがニッコリしている。対するグリエールは仏頂面までは行かないが、とても複雑そうな顔を浮かべている。仕方なし。
次いで俺、対面にはガレストイ。
俺の隣がクレネ、茜の順に座り、反対側はユード、アーレン、メデスの順。
「さてと、何から話したらいいか、正直迷ってる。だからって腹の探り合いは好みじゃない」
俺はBOXから、空の魔剣とエリクサーの小瓶を一行の目の前で取り出し、テーブルの中央に並べて置いた。
「な・・・。どうして、これをあなたが?」
「勿論、ブシファーから奪い取ったから。隣にあるのは秘薬中の秘薬、エリクサーだ。そっちは俺がとある場所で作成した物。今の段階では追加の作成は困難。俺は治癒師だから、上級ポーション作成までは楽勝さ」
冒険者カードを裏向きで置いて見せた。手の内は隠さない。
ゴールド-。ブシファーの評価が低い・・・。勇者のお零れだとこんなもんか。
表向きの職業も治癒師。シークレット、何処に行った!
ウィート、戦術侍女。初めて見たし聞いたよ!
クレネ、弓師。安定していて良かった。
茜、天女。いいのかよ出て!見せなきゃいい?そうですか・・・。
それぞれのカードを並べて置いて行った。
勇者一行は言葉も無く、口をパックリ開けて色々と目を回して眺めていた。
情報を一気に公開しすぎたかも。小出しにされるよりはマシだろさ。
「見ての通り。おれたちは何も隠さない。君たちの素性は、茜が言ったように女神様から聞いて知っていた。加えてこっちの4人は女神にも会っている」
グリエールちゃんのお口が更に開いた。喉のぶらぶらまで見えちゃってるよ?
「・・・羨ましいです・・・」我に返って一安心。
「本当に?そう思うの?」
何を言い出すんだい茜君。
「私は天使。大概の事は直で聞いてる。行き倒れの老人。すれ違った行商人。殺されそうな魔術師。意味深な神官。仲が良かった村娘。酒に溺れて死んだ剣士」
アダント君・・・。君は死んでたのかい?
「女神ちゃんは、何時も何処からでもみんなを平等に見守ってた」ちゃんて(笑)
「悪いけど、ツヨシ。周りの監視の目が酷い。あれやって」
「おぉ、ごめん。ありがとう。シークレット・ウォール!」
周囲の空間だけ反転させた。部屋を丸ごとはまだやれない。
「教皇派の監視員がそこら中に居るのを忘れてた。これで気兼ねなく話せるぞ」
「凄い術ですね。阻害魔術ですか。見習いたい」ガレース君に褒められた。
もっと凄いの出来るようになる。保証付き。
「教皇派と申されましたが、教皇がいったい」アーレン君。当然の疑問だけど、答えに困る質問は止めてくれ。先走ったウィート君が。
「聖神教の教祖である教皇が、第6の魔王です」断言してしまった・・・。
「何を言うのかと思えば、飛んだ世迷い言を」メデスが教皇を馬鹿にされたと思って憤慨している。初期の頃はまだ教皇を信じてたのか。俺たちの知らない恩義でもありそう。
「あいつが魔王・・・。有り得ない話じゃねぇな」
「何だと!ユード。その根拠を言え。返答次第では」
「まぁ落ち着けメデス。話を聞こうではないか」でかしたぞ、アーレン。
「チッ・・・」
「おれはウィートちゃんの意見は有りだと思う。おれは、教皇の暗部。護衛兼暗殺部隊に入ってた。仕事としてな。今は勇者の嬢ちゃんの監視要員、密偵さ。でもまぁ、今じゃ戻る気もさらさら無くてぶっちゃけるけどよ。別段義理も無ければ恩もねぇ。あいつは信者から集めた金を湯水のように使い捲り、世継ぎが欲しくて毎晩女官や信者の女を犯しまくってる。暗部の奴らは離反を起こしそうな連中を殺しまくり。正直でなくても反吐が出たなぁ」
「それに、加担していたの?」グリエールが青い顔をしている。
「そう思うかい?嬢ちゃん。被害者は皆向こうからやってくる。そこはどうしたって止められん。秘密裏に逃して回っても、教皇派の人間に見つかり殺されるか連れ戻された。一人じゃ何も出来ないおれは・・・、同罪だと誹られても文句は言えねぇわな」
「・・・」
「私は、ユードさんを信じますよ。私と兄の命の恩人でもありますし」
「・・・覚えがいいんだな。元気そうで何よりだ。兄貴のほうは?」
「ツヨシ様に足も治して頂いて、元気にアッテネートの商団隊の護衛をしています」
「そっか。あの選択は、間違いじゃなかったんだな」
何それ!ウィートはユードと知り合いだったの?凄い縁だねぇ。俺の嫁はやらねぇぞ!
「教皇が・・・。あの、教皇が」
「わしら兄弟の両親は、熱心な信者でな。先代の教皇には家族丸ごと世話になったし、大恩があった。恩に報いようと努力はしてみたが、わしらには魔術の才能が乏しく、正規兵団にも馴染めなくて。冒険者となり、そこそこ名を上げて行く内に勇者様の護衛役を仰せつかった。老いも見えるこの身体、グリエールの盾でも捨て石でも構わないと、この任を受けたのだ」
聖都でのクーデターの最中で、この2人が教皇を打ち損じていたのには、こんな内訳があったのか。悪い事をしたな。因みに暴走したのはグリエールちゃんだけどな!
「捨て石など、有り得ません!」
グリエールが机を叩き、場に静寂が訪れた。魔剣がブルってたのは気のせい?
「話を戻そう」
魔剣を手に取り、解説を加えた。拗れそうな話を逸らしたが正解。
「持っても、大丈夫なのですか?」
「呪いは解いたからな。今は単なる黒い剣。おれはこれを魔神を倒す鍵だと見ている」
「それで魔神を倒すのですか?この聖剣ではなく」
「倒せるのは聖剣で間違いない。この世界にはもう一振りの聖剣もあるし、魔剣ももう一本存在する。聖剣の在処は解っているが、魔剣の在処はまだ解らない。この魔剣は魔神の封印を解く鍵だと考えている。女神は封印された場所も、これの使い方も最後まで教えてはくれなかった。多分きっと、手順を間違えずに進み。おれたちと、今はここには居ない仲間を集め、魔神を倒せる力が備わったその時に、教えてくれるんだと思う。違うな、信じてる」
「途方もない話ですね。7つの魔王は踏み台だとでも?」
「信じないのは勝手で無理もないが、他の可能性があるか?ガレストイ」
「今はありません。ですが、貴方のお話を今すぐ丸飲みにも出来ません」
当然だ。それと懸命な判断だ。時間は必要。考える時間をと言っている。
「私は、勇者として。どうすれば良いのですか?聖剣がもう一つあると言われ、弱いと言われ、未熟だと言われた私は・・・」
勇者の信念か。師匠に会う前の彼女の本音。早急過ぎたかも知れない。
「勇者様。明日、私と戦いませんか?模擬戦で」
震えるグリエールの手に、ウィートがそっと手を重ねた。
「あなたと、戦う理由が・・・。まさか、あなたが?」
「はい。もう一つの聖剣を掴む者です」
ウィートは狼狽えて、退かれそうになった手を強く握り締める。
「逃げるのですか?怖いですか?レベルも低い私に負けるのが」
「こ、怖くなんか。ない!」
「それでこそ勇者様。この王都の闘技場を借りて、誰も居ない場所で。やりましょう」
「望む所です」
最後には手を握り返す辺り、負けん気と根性は一級品。俺も見習わないと。
「今夜はお開きにしよう。そろそろおれの魔術も限界だ」
こっそりと水筒をちびちびやっていたが、水筒も空に近い。
翌日。ウォート氏に頼み込んで、建設途中の闘技場を借りる事となった。
この結果は2人きりの秘密。勿論、他のみんなも外を見張っていたので詳細は知らない。
けれど、闘技場から出て来た2人の笑顔は、何よりも誰よりも輝いていた。
全身痣だらけで、所々服もビリビリだったけど。そんな2人にエリクサー水を処方した。
握り合い、晴天の空に翳したその手と手は、何処か遠くの頂を目指しているかのようで。
2人だけの秘密です。
親友と呼べる友は少なく、何処の世界で何処の時間でも。
ある日突然に出会うもの。だと思います。
大変失礼しました。
止めの場面がごっそり抜けておりましたので
追加して修正します。