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第1話 助走

激戦。その名が似つかわしい、疑いようもない景色が眼前に広がる。

淡白く長く太い剣が舞い、赤黒い業火が飛び跳ねる。この身に激しく打ち付ける暴風。疑いようもない熱量。逃れる場所など無いまま、俺はただ呆然とその景色を眺め、深い溜息を吐き出した。


俺の名は童蒙剛どうもう つよし。日本人のはずだった。

平凡な大学卒業間近で、平凡な商益会社に就職が内定しただけの平凡を絵に描いたような男である。人より秀でた頭の能力も身体的特徴も無い。身長は175cm、体重70kgとそこそこの筋肉、インドア的趣味によりややウエストに脂肪が付き気味な。

 大学2年の時に出来た彼女は、これまた平凡な顔立ち。スタイルはまあまあ。何が言いたいかというと、俺は普通にモテる程度の顔と骨格で、女性を不快にはさせない自信はあるほうだと伝えておきたい。


 彼女とは主に室内デートがメインであるが、しっかりたまには外にも出掛け、記念日などはファストフード店でバイトして貯めた金を惜しむようなことはしなかった。社会人生活に慣れ、お互いに軌道に乗って落ち着いたら結婚しようなどとも、やんわりとではあるが話合ったりもして順調そのものだった。惰性ではなく、ちょんと愛情もあった。


 話を戻そう。いやしかし、ここは何処だ?

 朝、自分の部屋で起床して、まだ彼女が隣で眠るベッドを抜け出し、トイレを済ませ、洗面所で顔を洗い、歯を磨き、朝食でも軽く作ろうかと狭いキッチンに向かった。足下に妙にヌルッとした感触を覚えた・・・そんな記憶を朧気ながら持っていた。

 よもや、昨日悪戯で放置したバナナの皮に自分で嵌まったなどとは口が裂けても言えないし、言いたくもない。よもや、滑って後頭部をコンクリート剥き出しの玄関土間上がりにぶつけたなどと、認めないし、認めたくはない。


 俺は死んだのか?人生の終わりがバナナの皮などとは?残された彼女が不憫過ぎるだろう。悲しさや虚しさを通り越して、寧ろ鼻で笑ってくれたらいい。泣いてくれたかな。希望的観測。重ねる謝罪に彼女はどう答えてくれるのだろうか。


 で?ここはいったい何処で、自分は何をしているのか?聞きたいことも言いたいことも山程あるだろうが、どうか落ち着いて欲しい。それを一番聞きたいのは俺なのだから。


 腰に手を回す。当然スマホなんて都合のいい物は無く、左腰にごんぶとの厳つい、ビジュアル的にまがまがしい装飾が施された剣のような物体が据え付けられていた。おもむろに鞘から抜いてみた。それなりの重量を感じるが、見た目大きさほどの重さではなく、高校時代にソフトボール体育授業で握った金属バット程度。体感で800gといったところか。軽いな。

 真っ黒な刀身をしげしげと眺め、再度深い溜息を吐き出した。

 「こえぇぇぇ、そしてダセぇぇぇ」

 あっさりと赤い絨毯が広がる床に投げ捨てた。後ろを振り返ると、そこには豪華絢爛な絵に描いたようなどでかい椅子があったので、取り敢えず座ってみることにした。座り心地は悪くない。

 肘掛けに片肘を着けて顎を手の甲に置いて、脚を崩して寛いでみた。暫く目を閉じて瞑想に耽る。

 「魔王!お前、魔剣を捨てたな!それは戦いを放棄し、敗北を認めるのだな!」

 片目を開くと、階下にこちらに真っ白な剣を差し向ける女性がいた。どこぞのモデル級に美しい容姿でありながら、返り血を浴びまくってさながら聖戦士といった出立。

 魔王が居るのかと、振り返ってみても大きすぎる背もたれで何も後ろは見えない。ここの家主がいるのかと少し焦ったが、誰も向かって来ないので安心した。

 「王よ。今はお逃げ下さい!何を寛いで」膝を地に着けて肩で息を切らせていた顔色の悪い人が、必死な形相でこちらを見ていたが、女戦士を追いかけて来た仲間だと思われる一人に蹴り飛ばされていた。近くの太い柱に身体ごとめり込んでいた。あれは死んだだろうな。女戦士と仲間数人が剣先を、槍先を、斧を杖をこちらに向けながら躙り寄って。

 「お前だ!魔王。とうとう追い詰めたぞ」女と目が合った。突然目の前に現れた美女を直視出来る程のダンディズムの持ち合わせがないので、かなりドキドキする。その目線から逃げるように、周囲を見渡して魔王さんを目で探してみた。女と仲間以外はこの場に誰も居ない様子。大変に嫌な予感を覚え、空いている手の指で自分の鼻辺を指してみた。

 「そうだ魔王!お前だ!」

初投稿となります。

読んで下さる方の、良き暇潰しになれば幸いです。


ネタも使い古しで、よくある物語です。

表現力の足り無さは本人もよーく解っておりますので、ご愛敬。

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