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妖と私。そして時々欠陥品  作者: いちよん
2/2

手を開けると、天井が映った。

ごめんなさい、そう思った。何時からか起きるとそう思うようになっていた。

もう一度目を閉じ、もう一度開く。

やはり天井が映った。

しかし何故か不自然に思えた。

何か違う気がした。

きっと何か夢を見たのだろう。

天井が見えるのなんて当たり前だ、床に寝ているのだから。

起き上がって、すぐ横を見ると父がこちらを見た。テレビを見ていたようだ。しかしすぐに私から目線を逸らした。

先程の言葉、撤回しよう。

やはり、父は私の事など見えていない。目の中に入らないのだ。まるで一種の病気のように。いや、病気なのは私なのかもしれないが。

ゴミ袋が高々と積まれた部屋の中で、私はなるべく静かに、音を出さないように着替える。

そんな事はもう当たり前で、当然の如く毎日同じ様な反応を得られる。父に関しても、勿論私に関してもだ。

私の毎日は単調だ。

朝起き、そしてまた寝る。

それだけの繰り返し。

食事は1日1回。

それだけで事足りるのだ。

私の、一般常識にかけた頭ではそれが普通なのかは分からないが。

「おい、うるさい」

「ごめんなさい」

冷たい声で、外出を促された。

あと5分でも家に居ようものなら平手打ちが待っているだろう。

とにかく、私は父に怒鳴られないように外へ出た。


今日は土曜日なので、学校はない。

一応、名目上は学校に通っているがそれはやはり名目上で、勉学に励む為日々通っている訳では無い。

父から、高校にはいかせてやる。なんて言われたので行っているだけで、私は別に高校になんて興味は無かった。

生まれてからこの方、私が何かに関心を持ったことなどあっただろうか。さて、そんな事分からない。

外は生憎の晴れで、強い日差しが私を貫く。

黒い髪に日光が反射し、だんだんと熱がこもってくるのが分かる。

出来るだけ日陰を歩くようにしていたが、しばらくなると面倒臭くなってきて止めた。

10分くらい歩くと、いつもの公園に着いた。

ここが私の、父から怒鳴られない為に外へ出る場所の1つだ。

私はいつものベンチに腰をかける。やはり、日光のせいで腰に温もりを感じる。

もう昼前だと云うのに、人っ子一人いない。

いつもは誰かしらはいる筈なのに。あまりに不自然だ。

まぁ、いい。

誰にも迷惑をかけないのだから、案外良かったのかもしれない。

私はいつも言われる。

迷惑だ、って。

かなりの人数に言われた筈なので、私はかなり迷惑なのだろう。

居るだけで迷惑。

「居るだけで迷惑なら、なんで生きているの、私って」

ぽそりと呟いた。

そんな小さな言葉、風邪が攫ってくれる筈だった。

しかしその瞬間、日光よりも眩しい光が私を包んだ。

それは不自然では無かった。

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