その日彼女は笑みを浮かべながら、
死んだの。
シルヴィア・レジーナは私の一番の親友で幼馴染の一人…彼女は神に愛された子よ、幼い頃から何をやっても人以上にこなしてしまうの、それを羨ましいと思ったことは何度もあったけど、妬むことなんてなかったわあの子は優しいもの…自分より他人を優先するお人好し…根っからの善人、まるで聖女ね…あぁ、でも聖女ならもっとお淑やかね、あの子は無茶ばかりするお転婆さんだもの…一度やる言ったら誰が止めても成し遂げようとする、どんなことでもしてしまう子だから私は心配ばかりしてたわ…柔軟な考えを持ち人が考え付かないようなことを考え、彼女は若くして魔法、美食、環境などを極めた…他にも彼女の知恵で発展したものは沢山ある。彼女は世界の平和を願い生きてきたわ、きっと歴史に名を残す偉人になる…そう思っていたわ。
「何故!!認めてしまったの!!何もしていないでしょう?!」
「えぇ、そうね…何もしていないわ。でも、もう決まったことよ」
「シルヴィア!!…理由を聞かせて……何故、やってもいない罪を認めたの?国の転覆を謀った反逆者として処刑されてしまうのよ…?」
「エレオノーラ、私はね世界を発展させすぎてしまったの。」
シルヴィアが罪を被った理由は私には納得できないことだったわ“自分が発展させたものは悪用されれば人を、国を滅ぼしかねない”“発展させたことによって世界のパワーバランスが崩れる可能性がある”そんな言葉を並べあの子は“私は消えたほうがいいのよ”なんて言ったのよ…怒りや悲しみ、すべての感情が混ざって私は涙を流したわ、あの子は私を宥めようとするけど貴方が私を泣かせているのよ…。
「悪用されても貴方のせいじゃない、貴方が尻拭いをすることなんかないわ…!!貴方がいなくなったとしても…悪い人は沢山いるわ」
「そうね、私一人が消えても世界は変わらないわ。人口が一人減るだけ、世界に支障はないわ。」
「っ…貴方を想っている人を!!置いて逝くのよ…“私達”の世界は変わるわ…大切な人がいなくなってしまうの、とても悲しいことよ…!」
多くを救うために少ないものを切り落とす…どんな正義にも犠牲は必要…シルヴィア、貴方わね私達を犠牲にするのよ??貴方がいない世界で生きていくのよ…貴方は自分がどれだけ愛されているのかわかっていないわ、昔から…自分のことばかりしか考えてない、私達のことなんか考えてないじゃない…どれだけ悲しんできたと思うの?…貴方が死んだら一生悲しみ続けるのよ……酷い人だわ…
「今日の面会時間は終わりね」
「明日も、くるわ」
「嬉しいわ、明日が最後だからね。」
「…っ…ニコラウスも連れて、くるわ…沢山おしゃべりしましょう」
「えぇ…また明日ね。」
何度泣いたって足りないわ、瞼が赤く腫れても涙は止まらない…このままじゃ涙が枯れてしまうんじゃない?…どんなに泣いたって気持ちは収まらない、私泣き虫じゃないはずなのに…シルヴィアの処刑が決まってから毎日泣いているわ…
「エレオノーラ…濡れたタオルで目元を冷やそう」
「ニコラウス…ありがとう…」
「…今日も会いに行ったんだろ?シルヴィアはどうだった…??」
「元気そうよ…明日は一緒に行きましょう?……最後になるから」
「………ユージンはどうするんだ?」
「連れていけるわけないわ…っ!」
ニコラウスは幼馴染の一人で私の婚約者、ユージンはシルヴィアの年の離れた弟…三年前にレジーナ家の跡継ぎとして引き取られた義理の弟……シルヴィアはユージンをとても大切にしているわ、レジーナ夫妻はユージンを道具としか思っていない…実の娘であるシルヴィアを甘やかしユージンには必要最低限にしか接しない…それにシルヴィアは怒り、誰よりもユージンを愛し大切にしてきた……ユージンもそんな姉を慕い歪まず素直ないい子に育った…まだ七歳なのに他の子よりも大人びたところがある、でもまだ幼い子供…自分を一番に愛してくれた家族を失う…あまりにも早すぎるわ、私やニコラウスではダメなの…空いてしまった穴の埋め合わせにはなれない…あの子は、ユージンは…シルヴィアがいなくなってしまったらどうするの…
「シルヴィア…会いに来た、少し痩せたな…」
「そうかしら?来てくれて嬉しいわ、お話ししましょう?」
「あぁ…エレオノーラ、話すこと沢山あるんだろ?」
「えぇ……」
「話しましょう、私貴方達に伝えたいことがあるの」
「伝えたいこと??」
彼女は私とニコラウスの結婚式の時に話そうと思っていたことを私達に伝えてくれたわ…こんなところで聞きたくはなかったわ、結婚式で…聞きたかった。貴方自分の本心はあまり話したがらないからびっくりしちゃったわ、まさかニコラウスに私を取られて嫉妬していたり、二人で仲良くするから寂しかったことがあったり…もう、私達のこと大好きね…私もよ、ニコラウスと貴方が話してる時どっちに嫉妬すればいいかわからなくてモヤモヤしたりしたし、ユージンが来てから貴方に構ってもらえるユージンが羨ましかったりしたのよ…。あと子供の名前も考えてくれたのね、約束…してたものね、子供が生まれたら名前を付けてくれるって…それも早すぎるわ、結婚もまだなのに……“シルヴィー”だって、貴方の愛称じゃない…素敵ね必ずこの名前にするわ、沢山愛して…幸せな子に育てるの……私貴方の子供に名前を付けたかったのに、つけさせてくれないのね……
「二人は必ず幸せになるわ。」
「貴方が、いないのに…?」
「そんな自信満々に言われたら、なれる気がするけど…」
「なるもの、絶対。そのためにお守りをあげるわ」
「作ったの??何も言われなかった?」
「必要最低限関わってこないもの、魔力を封じられてもないし……これ、大切に持っててね?」
彼女が手渡したのをハートの形をした魔法石…すごい魔力を感じるわ…全て彼女の魔力で作られている…私とニコラウス、ユージン…それと自分の分を用意していたらしく、四つの魔法石を合わせると幸福のシンボル“四つ葉のクローバー”になる……本当に幸せになれそうね、貴方の愛を感じるわ…お揃いなのも嬉しい…ずっとずっと大切にするわ、貴方からの最期の贈り物…
「ユージンにも渡してね、あと幸せになるのよって伝えて」
「もちろんだ…きっと喜ぶさ」
「貴方からのプレゼントだもの…」
「ありがとう……もうすぐで面会に時間が終わるわ…最後のワガママ聞いてくれる?」
「シルヴィアがワガママ言うこと、あったか?記憶にないな」
「私の記憶にもないわ…貴方の最初で最後のワガママ…必ず叶えるわ、言ってちょうだい?」
「私結構ワガママな子だったと思うけど…ありがとう。……私のワガママは…」
“最前列で私の最期を見ていて”
こんなにも酷いワガママを言うなんて……必ず叶えるって言っちゃったじゃないの…貴方は私達との約束を果たしたわ…それなら私達も果たさなければいけないわ…貴方は一度も嘘をつかなかった…私は嘘つきになりたくないわ……目を逸らさず、貴方の最期を……
「エレオノーラ、ニコラウス…またね。」
その日も沢山泣いたわ、明日もきっと沢山泣く、明後日も明々後日も……しばらくはずっと泣いてしまいそう、立ち直れるかしら?…幸せになれるかしら?……なれるわ、ならなきゃ…あの子がお守りもくれたんだから。
『私シルヴィア・レジーナは今幸せです、皆様さようなら!!』
その日彼女は笑みを浮かべながら、死んだの。本当に幸せそうに、後悔のない…最期の言葉……彼女を知る人達は悲しみ、彼女を嫌った人達は喜び…世界には大きな穴が開いたわ、私はそう思ってる。だって争いだって起きそうになったんだもの…やっぱり貴方はいなくなってはいけなかったのよ…私達とずっと一緒に生きて幸せになるべきだったわ…貴方は沢山の人を幸せにしてきたのに……いえ、貴方の最期は幸せなものだったわね…貴方がそう言ったんだもの…。
「お母様、お茶会の時間だわ!」
「あらシルヴィー、もうそんな時間なの?教えてくれてありがとう」
「えへへっお父様はもうお庭に行っているわ!」
「じゃあお母様もいかなきゃね」
「うん!!今日は私の宝物を見せてあげるから楽しみにしててね!」
そうそう…シルヴィア、貴方が死んでから結婚も子作りも遅くなったわ、そのことは怒ってるんだからね……でも、素敵な名前をくれたし許さなくもないわ。…シルヴィー、私とニコラウスの大切な娘、今年で十歳になるの…ユージンが十歳の時に生まれて元気にすくすく成長しているわ…少しお転婆さんだけど、素直な頑張り屋さん……雪のような真っ白な髪をもっていて、まるで天使なのよ?貴方にも会わせたいわ…
「ニコラウス、今日はお茶会日和ね」
「あぁ、庭の花も満開だし…シルヴィーも喜ぶだろうね」
「そうね…そういえばあの子が宝物を見せてくれるって、何かしらね?」
「さぁ?…蛇の抜け殻かもしれないな」
「っ…それはちょっと困るわ…心の準備をしなきゃいけなくなる」
動物に好かれやすいし、あの子自身も動物が好きで大切にしている……虫を素手で触ったり、淑女らしからぬこともするから、たまに驚かされるわ…悪気はないのだけれどね…昔のシルヴィアみたいで微笑ましいけど、毛虫を持ってきたときは気絶したわ。
「お母様、お父様!お待たせ、持ってきたよ!」
「おや、その手に持ってるのがシルヴィーの宝物か」
「早くお母様達に見せて?」
「ふふ、いいよ!!私が生まれる前からの宝物なの!」
そう言ってシルヴィーが私達に見せたものは、ハートの形をした魔法石で…まるで私とニコラウス、ユージンが持っているものと同じようで……私もニコラウスもネックレスにして今もつけているわ…シルヴィーに魔法石を買った覚えはないし…どういうことなの?本当に同じようだわ…いえ、込められた魔力も……私とニコラウスはなんて言えばいいのかわからず、戸惑っている…世界で四つしかないシルヴィアの魔法石…私達以外持ってるわけがない……
「ねぇ、エレオノーラ、ニコラウス…幸せになれたでしょ?私のお守りを大切にしててくれてありがとう。」
あの日シルヴィア・レジーナは絞首刑でこの世を去ったわ、私とニコラウスは目の前で見ていた……この子はシルヴィー・フォルナンテ…今年で十歳の娘で…名付け親はシルヴィア………似たところはあるわ、お転婆なところや綺麗な白髪……でも、これじゃあまるで……
「シルヴィア・レジーナとして私は13年前に死んだわ、でも生まれ変わって今はシルヴィー・フォルナンテなの……またエレオノーラ、ニコラウス、ユージンと一緒にいられるわ…私今幸せよ、久しぶり!!」
これ、昨日完成したけどネットが切れてることに気づかず投稿しようとしたら消えてがん萎えした作品です、いろいろ割愛しながら書き直しました…。
登場人物の設定や物語の話は活動報告で書きたいな、と思ってます。




