あの課の話
現在、私は自営業ですが、数年前まで役所勤めをしておりました。
この話は役所に入って、数年後にA先輩に聞いたものです。
その当時、A先輩は職員の健康管理をする課にいました。
「何でうちの課の職員ばっか、怪我して、病気になるんだよ、業務が止まっちゃうよ
って、あの課の課長が嘆いていてるんだ」とA先輩が私に言いました。
「あの課は大きくて、職員も多いですから、確率的にそうなるんじゃないんですか」
と私が答えると、A先輩は「いやいや、凄い割合なんだ、病休職員の代替のバイトだら
けだよ」
「へえーそうなんですか」
「それにさ、」
「それに?」
「夜、一人で残業していて、幽霊、見た奴がいるらしい」
「またあ、先輩、脅かすんですから。でも、節電で最低限の明かりしか点けてませんですから、
暗闇の中にポツンと幽霊が座ってそうですね」
「そうだろう」A先輩は私の答えに納得すると、さらに、
「あの課は市民の病気やら怪我の報告書が集まるから、その念が澱んでるんだよ、報告書の呪いだな」
「またあ、そんな事言ったら、日本中の役所のあの課は呪いだらけじゃないですか」と私は答えました。
「そりゃそうだ。そんな事ねえな、ははは」
そんな怪談じみた話を私に言って笑っていたA先輩ですが、残念な事に10年前に病気で亡くなりました。
A先輩が亡くなった時に在籍していた課は偶然にも「あの課」でした。




