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吉岡綾乃は魔女をやめたい  作者: 椿 雅香
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エピローグ

 ⅩⅥ エピローグ


中島と小西に新しい力を付与したことは周囲に知られるところとなり、彼等は羨望の的になった。

魔法使い達は私に媚びるようになり、安本先生の言っていた意味がよく分かった。

魔法使いの長老から、私の力が減らずに二人の力が増えたことから穏便に済ますように、と指示が出たらしい。先生から軽い注意があって終わった。

三人とは和解して、何となく付き合っている。静香は中島と小西のどちらにも決めかねて、そのうち、あの美しい髪が白髪になるんじゃないかと思うほど悩んでる。

でも、彼女は世の中のために何かしようと考え始めてから顔つきが優しくなった。今まで、周りから賞品みたいな扱いをされて消耗していたのだ。

中島と小西はそんな静香を静かに見守っている。そうして、ついでに、私のことも見守ってくれている。二人とも、ありがとう。

手品部は、文化祭を最後にやめた。どのみち、受験があるのだ。どこのクラブでも、引退する生徒が大勢いたのだ。いきり立った私が、馬鹿みたいだ。



お正月に、両親が日本に帰って来た。一時帰国と言うヤツらしい。私は、久しぶりに両親の匂いに触れて、ゆったりとした安心感の中にいた。

おばあちゃん家で、みんなでお雑煮を祝った後で、私は静香から巫女のバイトを頼まれていたので出掛けた。

早く帰ってらっしゃい。たまには、ゆっくり話をしましょう。オカンにそう言われていたので、早々に切り上げて帰って来た。

家に帰ると、オトンは飲み過ぎでダウンしていて、オカンとおばあちゃんが炬燵でミカンを食べていた。二人はオカンの結婚当時の話で盛り上がってて、私にも教えてくれた。

「私が吉岡姓になるって分かった時、おばあちゃんから聞いたんや。我が家が魔法使いの血筋で、ときどき魔法の才能のある子供が生まれるって。内緒やけど、おばあちゃんにも魔法の才能があって、娘時分に魔法使いの学校に通ってたんやって」

横でおばあちゃんが嬉しそうに笑っている。

「おばあちゃんはその学校で、吉岡って子に会ってたんやて。もしかすると、私の子か孫がその吉岡さんかもしれへんって言うんや。何せ、その学校は、時空を超えた場所にあったから、おばあちゃんの時代よりズッと未来の子がたくさんいたらしいんや。もし、私の子が十五歳になって魔法使い社会から連絡があったら、その子に魔法の教育を受けさせなならんって、真面目な顔で言うたんや」

おばあちゃんは、おたべ人形だ。首を上下にコクコク動かした。

「おばあちゃん、その子の下の名前も分かってたんやろ?だって、『綾乃』って名前にしたって言うたら、意味深に頷いてはったもん」

「知ってた」

「おじいちゃんは知らんかったん?」

「おじいちゃんは別の学校へ行ってたから」

どっちにしても、おじいちゃんは私が幼稚園に入る前に死んだから、関係ないか。

「お父さんは何て言うたん?」

「ダーリンも、自分が魔法使いの血筋だって結婚するまで知らへんかったんや。

ダーリンの転勤が決まった時、魔法使い社会から連絡があって、真っ青にならはった。というのは、ダーリンの従兄弟で、魔法使いの学校行った子がおったんや。

魔法使いの一族に生まれても必ずしも魔法使いになるわけやないし、親が魔法使いじゃなくても、魔法使いになる子もおる。

一族に繋がる人間は、結婚する時、その話を聞くんや。子供が劣性でも、そのまた子供が魔法使いになるかもしれへん。そやから、この連絡網は忘れんと続けなならん。そやから、あんたも子供が結婚する時、ちゃんと言うんやで」

「何で、話がそっちに行くん?自分は連絡せえへんつもり?」

「当然やろ?連絡せんでも魔法使いの遺伝子が優性なんや。必要ないやん」

ったく、他人の苦労も知らないで、いい加減なんやから。わが親ながら、この楽天ぶりに脱力した。

「おばあちゃん、予知能力あるん?」

私が訊くと、おばあちゃんが得意そうに笑った。

「いいや。私は、橙、青、緑。つまり、お天気と水と草」

「おばあちゃん、吉岡って子に会うたん?」

おばあちゃんが頷いたので、思わず叫んだ。

「あり得へん!だって、青木って子、いいひんもん!」

「当たり前や。おばあちゃんが青木になったのは結婚してからや。旧姓は、松村。松村芳子や」

オカンの説明に唖然とした。

あの松村は、子供の頃のおばあちゃんだったのだ。何となく、あの子の声が懐かしく思えたのは、そういうわけだったのだ。

私がタツヤを探していた時、いっつも、あの分かれ道まで迎えに来てくれたのは、そういうわけだったのだ。 

おばあちゃんは、あの急峻な山道を登った先にタツヤが住んでいるのを知っていたのだ。私が二週間以上通ってタツヤと知り合って、仲良しになることも。

ん?じゃあ、私がおばあちゃんからもらった杖を松村にあげたということは……おばあちゃん本人に返したことになるわけで……つまり、将来、再び私がもらうことになるってことで……何がなんだか分からなくなった。



意外な松村の正体でした。

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