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吉岡綾乃は魔女をやめたい  作者: 椿 雅香
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文化祭(その4)

一人になれるのは部室だけだ。誰もいない部室で、ペットボトルの蓋を開け、一気に飲み干した。

あんなヤツ、大嫌いだ。あんなヤツと同じになるのは真っ平だ。あれじゃ、種の保存だけが生きる目的みたいじゃないか。私の存在にはもっと何か意味があるはずだ。

私が魔法使いだというのは仕方がない事実だ。嫌だと言っても付いて来る。この力がある限り、魔法使い社会は、プライベートにまで介入してくる。友人、恋人、結婚相手にまで口を出してくるのだ。

私はどう生きるべきなんだろう?どう生きたいのだろう?何のために生まれてきたんだろう?

この半年悩んで来た。

魔法の能力を周り中に押し付けて、能力を枯渇させることも考えた。しかし、私から能力を譲り受けた魔法使いはそれを使って何をするというのだろう?

松村なら、タツヤの治療に使うし、ときには、物資の不足したあの時代で周りの人々の命を救うだろう。だから、力をあげることに意味があった。

あのとき、私は、松村に力をあげたら、私の力がなくなって六色の魔女になると思っていた。それなのに、私の緑の魔力は消えなかった。

小西のときも同じだ。静香を助けるために小西の力が上がればいい、そのために私の力が減るのも悪くない、と思ったのだ。

大体、この馬鹿げた力のおかげで、達也くんとも別れたし、友達も減ったのだ。これがなくなるなら、お気に入りのCDだってあげちゃう。

しかし、魔法使いはそういう考え方をしないらしい。

魔法使いというのは、自分の力がパワーアップすることが永遠の欲望だと、先生は言っていた。中島が、力がアップするというふれこみの健康食品まで出回っているんだ、と笑っていた。

今日会った魔法使いのほとんどが、私が松村に緑の力を与えたことを羨み、自分もその恩恵を被りたい、と媚びた。

魔法の能力が衰退したのは、案外、そのせいかもしれない。昔のシャーマンは、みんなのために魔法を使ったから霊力が強かったのだ。

お天気一つで命が危うくなった時代だ。必死でみんなの命を守るために働いたのだろう。それが、昨今の魔法使いはどうだ?お天気がどうなろうが、よっぽどの災害がない限り、命に関わることはないのだ。

結局、優秀な子孫を残すために優秀な遺伝子を持った伴侶を手に入れること、もしくは、自分の力を増すことだけを考えているのだ。本末転倒もいいとこだ。

一体、その優秀な子孫に何をさせたいというのか?力の増えた自分が何をするというのか?考えたことがあるのだろうか?


綾乃は何のために生きるか悩みます。う~ん、哲学だ。

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