文化祭(その2)
文化祭が始まった。とんでもないことに、この学校の文化祭には、魔法使いのクラスで見た顔が押し寄せたのだ。
私の知らない魔法使い、つまり、学年の違う者とか、初歩的な魔法だけを使う者とかもいるらしいから、ここの文化祭はどうなってるのだろう。
魔法のクラスには文化祭なんかないので、こっちの文化祭で、せいぜいいい男なりいい女をゲットするように、と、指示が出ているのだろう。
魔法を使わない生徒達がおかしいと思わないのだろうか。理解に苦しむ。
よく見ると、今井恭子や、小林真美、それに長野貞子といった魔法を使わない生徒達は、魔法使いに気付きもせず、所属するクラブの出し物やクラスの出し物に夢中だ。
なるほど、文化祭というのは生徒が目一杯忙しいので、魔法使いの団体さんが押し寄せようが、その連中があちこちで色目を使い合おうが、誰も気にしないのだ。
準備期間中、授業中寝て放課後起きて準備するという猛者や、風邪で休んだ教師に、「先生は気楽に休めていいね。俺達、無茶苦茶忙しいから、休めないんだ」と、嫌味を言う者もいたらしい。
今井はコーラス部、小林は美術部だ。ウチのクラスは、焼きそば屋をしたので、私も手品部の出番が終わったら手伝うことになっている。
講堂の舞台では、コーラス部、吹奏楽部、演劇部、落語研究会、そうして、手品部が一時間ずつ、発表を行った。クラスごとの出し物で舞台を使うところは、体育館の舞台を使うから、ここは文化部の貸し切り状態だ。
私達手品部は、十一時から十二時までの一時間、適当な魔法を披露した。
魔法使い達のお目当ては静香で、客席に座って開演を待つ間も、みんなして静香をオカズにした淫らな妄想にふけるのが分かった。顔が引きつっていたのだろう。小西が私の肩をたたいて言った。
「ひどいだろう?パーフェクトの魔法使いとエッチすると霊力がアップするって迷信があるんだ。でも、大丈夫。シズには強力なフォーカスの魔法をかけてある。少なくとも、面と向かって妄想にふけらない限り、シズは気が付かない。じゃないと、やってられないから。
連中はお前のことを知らないんだ。噂には聞いてるだろうけど、どんな魔女か知らない。だから、今のところ、観客席はシズの妄想だけだ。でも、お前が舞台に立つと、お前を相手にした妄想が増える。だから、お前にも同じ魔法をかける。いいな」
他人に魔法をかけるとき、その相手の承諾を得るのがルールなのだろう。いつもは、いい加減な小西が真面目な顔で尋ねた。
黙って頷いて、小西に任せた。小西が杖を振ると、少し体の力が抜けたような感じがした。
「少しだるい感じがするらしい。でも、これで、面と向かってじゃない限り、妄想がお前を苦しめることはないはずだ」
「おおきに」
少し上目遣いで礼を言った。タツヤの一件以来、小西も中島も私に気を遣ってくれている。あんまり親切すぎて、ときどき静香が爆発するほどだ。
私の出番が来ると、中島が優しい目をして、「頑張れよ」と、背中をたたいてくれた。
出演中、観客席の異常な視線を一身に浴び、あちこちで、「これが例のパーフェクトの子?」と、ささやくのが聞こえた。でも、小西のおかげで妄想が押し寄せることはなかった。
話がエロくなってきました。(汗)




