表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吉岡綾乃は魔女をやめたい  作者: 椿 雅香
29/43

別れ(その4)

ⅩⅡ 三人組の反応

 

探るように伺う魔法使い三人組を、私はあえて無視した。

確かに、タツヤとっては謙信の時代の方が幸せだろう。でも、タツヤは私の心も持って行ってしまった。

情けなくて、寂しくて、分かっていても、私の意見も聞かずに先生に報告したことが許せなかった。あの三人を一生許さない、と心に決めた。

三人を代表して、中島が来た。まるで決死隊だ、端正な顔に憂いを浮かべて、私の顔を覗き込んだ。

「綾乃。大丈夫か?シズが心配していた」

口をきかない私に、中島が辛そうに言った。

「仕方がなかったんだ。タツヤは発情していた。この時代にはメスの龍がいないから。だから、君に恋をしたんだ。小太郎子のこともあったし……」

「あの時代の方が、あいつにとって幸せなんだ。龍だって、いっぱいいた。君だってそう思うだろう?」

「それでも、君は僕達を恨むのか?」

「君は眠っていて知らないけど、喧嘩しながら、あいつ、僕達にひどいこと言ったんだ。終いにシズが泣き出して、僕もトオルも、ものすごく消耗した。しかも、あいつは君を抱いたまま戦ってたから、こっちは君に怪我させないようにって必死だったんだ」

「いい加減、いつもの君に戻って欲しい」

黙って目を上げると、中島の凛々しい顔が目の前にあった。

「数学、おおきに。宿題テストの目処、ついたわ」

それだけ言うと、家へ帰った。



その晩、静香が家へ来た。静香は、鋭い目をして言った。

「綾乃ちゃん。私達を恨むのは筋違いよ。あのまま放っておいたら、タツヤはあなたを殺したかもしれないんだから。自分の住みかへあなたを連れて行こうとしていたのよ」

「タツヤは馬鹿やない。私が水の中が駄目なの、知ってる」

「タツヤはあなたを龍と間違えてたわ」

「タツヤは私が魔女だって知ってた」

「タツヤはトオルにもカオルにもひどいこと言ったわ!」

「?」

「あの二人が私に軸足を置いて、あなたを滑り止めみたいに扱うのは許せないって言ったの。二人とも真っ青になって。だって、二人とも悪くないわ。私が決められないだけなんですもの。

それに、タツヤは、魔法使いが、あなたを魔法使いの宝だって言うけど、肝心の魔法使いは、あなたに魔法を使わない一般人と付き合うな、他のヤツ等に心を開くなって飼い殺しにしてるって、そう言ったのよ。

そんなことないでしょ?トオルが、俺達にどうしろって言うんだ!って叫んで。カオルも蒼白になって……。

私達だって、あなたのこと大好きだわ。それなのに、タツヤは、龍のくせに、あなたを自分のものにしようとしたの。あれ以上、タツヤをここに置いておけなかったの。安本先生に相談するしかなかったのよ!」

私は何も言わなかった。

「あなたが、どっちかを選んでくれたら、残った方を選べるのに……」

静香が絞り出すように言った。

「どっちもシズのことが好きなんや。邪魔したら悪い」

「私がどっちか選んだら……あなた、残った方を選んでくれる?」

「私、そんなことせえへん。だから、前の通りや。シズがどっちか選んだら、前の通り、残った方は別の魔女を選ぶだけや」

「あなたは……別の魔法使いを選ぶの?」

「私……魔法使い……嫌い、や……選ばん」

思いっ切り心のシャッターを下ろした。



宿題テストは、無事に終わった。何とかクリアできたのだ。タツヤもいないのだ。勉強でもするしかないじゃないか。

って、オカンが聞いたら、激怒しそうだ。まあ、留年さえしなければ、オカンも文句言わないだろう。

廊下で中島と出会ったので礼を言うと、辛そうに言った。

「綾乃。礼を言ってくれるのなら、僕達を許して欲しい。確かに、ああするしかなかったのは事実だけど、君に相談もしないで安本先生に報告したのはまずかった」

「済んだ話や」

「文化祭の準備がある。手品部に来て欲しい」

「文化祭終わったら、手品部、やめる」

「どうして?」

「初歩的なことはあらかた習ったから。後は一人でやるわ」

 中島の顔が引きつった。




綾乃はタツヤと別れてしまいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ