上杉謙信(その2)
でも、私はどの魔法も上手く使えないが、とりわけ時空旅行の魔法は下手なのだ。小西に危険な橋を渡らせるのも嫌だった。腹を括って、ダメもとで安本先生に頼みに行った。
いつも松村さんにはお世話になってるので、龍に会わせてあげたいんですが、私の時代の緑池へ連れてっていいですか?そう言うと、先生は、龍を見て龍と遊ぶだけで、他の人間とは接触しないと約束できますか?と訊いた。もちろんです。松村は、龍に会えるだけでいいのだ。結局、先生が、松村を私の時代に飛ばしてくれることになった。
やった!許可が下りた。
先生は松村と私を一瞬で私の時代に飛ばしてくれた。
松村は余りにも様変わりした町に呆然としていたが、「そんなことより龍だ」と、急いで緑池へ出掛けた。
タツヤは大歓迎してくれて、私達を乗せて雲の上まで飛んでくれた。
「お前は懐かしい匂いがする」
タツヤが松村に言った。
「初めて会ったような気がしない」とも言った。
用心深い龍には、最大級の好意だった。
松村の顔が喜びに輝いた。タツヤの体をなでたり、タツヤのヒゲでくすぐられたり、一緒に転がったりと、私達二人と一匹は思いっ切りじゃれ合った。小太郎や小太郎子も合流して、三匹の龍が絡み合ってじゃれるのを、松村は嬉しそうに見つめた。
帰り際、松村が言った。
「私も、私の龍を探してみるわ」
思わず、松村の手を取った。松村の時代はずっと昔なのだ。きっと、龍だってもっといただろう。
松村が帰ると、小太郎と一緒に来ていた小西がポツリと尋ねた。
「あいつ、本当はばあさんなんだって?」
私は憮然として言った。
「ばあさんは、生まれた時からばあさんやったわけやない。年とったから、ばあさんになったんや。あんたが、そのうちじいさんになるんと一緒や!」




