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吉岡綾乃は魔女をやめたい  作者: 椿 雅香
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小太郎

Ⅵ 小太郎


梅雨に入って、毎日、雨が続いた。

サイン、コサインや順列、組み合わせは、何が何だか分からない。フランク王国は、後にフランス、ドイツ、イタリアになる。光源氏は夕顔を誘うが、物の怪に殺されてしまう。

普通の学校でも学ぶことがたくさんあるのに、目下のところ、私が学ばなければならないのは魔法使いの部族の歴史だ。魔法の使い方は後回しにされている。

一度、小西に火を噴いて雷の攻撃をしたが、後で、あれは、あいつが私を覚醒させようと、あえて攻撃させたのだと知った。おかげで、本物のパーフェクトだと、必要以上の注目を集めることになってしまった。

静香は自分の他にもパーフェクトがいることが嬉しいのだろうか。何かと世話を焼いてくれる。

いつの間にか、私は手品部の部室に入り浸るようになっていて、静香のことを中島や小西と同じく『シズ』と呼ぶようになっていた。これには、今井や小林それに長野には驚きだったようで、私に一目置くようになった。

中島と小西のことは、もっぱら、『カ』や『ト』と呼んでいる。というのは、その下が二人とも共通項で『オル』と続くことに気が付いたのだ。

二人は、まさか共通項でまとめて括弧でくくって『カ』や『ト』と呼ばれることになろうとは思わなかったようで、唖然としていた。

そのうち、静香が面白がって、私の真似をするようになった。

中島と小西は、私のことを『綾乃』とか『綾乃ちゃん』と呼んでいるが、『カ』とか『ト』とか呼ばれるのは、面白くないのだろう。ときどき、「ちゃんと正しくカオルとかトオルって呼んでくれ」と、リクエストがあって、気が向けばそう呼ぶことにしている。

手品部の部員は十三人。

あの三人の他に、初歩的な魔法の他に虹の色一色だけ使う者が八人(この学校にいる全員だ)、初歩的な魔法だけを使う者が二人(初歩的な魔法だけ使う者はこの学校に五十人ほど――つまり、各学年に十六、七人ってとこだ――いるらしいが、静香のようなパーフェクトの魔法使いと一緒に部活する根性のある者はこれだけだとのことだ)いて、私が入部して十四人になった。

部室に行くと、三人を始め部員一同が初歩的な魔法を教えてくれた。

虹の色一色だけ使う者や初歩的な魔法だけを使う者にとっては、パーフェクトの魔法使いを指導するのは自尊心をくすぐるものがあるのだろう。みんな親切にしてくれた。ただ、何となく卑屈で屈託があるような感じがして、気になった。

手品部で教わったのは、水を牛乳に変える魔法(本当は酒に変えることもできるけど、未成年だからここまでだ。と、教えてくれた小西が笑った)。赤いペンを黒いペンに変える魔法。机の右端に置いてある消しゴムを左のポケットに入れる魔法。トランプの上から五枚目に必ずハートのエースが来る魔法。ハンカチを花束に変える魔法。破いた千円札を新札に変える魔法等々だ。これは文化祭の出し物になるから。静香にそう言われて、この世界にいる間は、せっせとこの辺の魔法の練習をした。

手品部の活動で驚いたことに、中島や小西を始め一同は杖を使うが、静香は使わないのだ。中島によれば、パーフェクトの魔法使いはパワーがすごいので、杖を使わなくていいそうだ。


読んでくれてありがとうございます。今回は、話の都合で短めです。

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