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外道オオトリアスカの吐き出しエッセイ

見栄と面子と

作者: 鳳飛鳥

 見栄や面子と言うと、現代日本では「ヤクザ」や「チンピラ」の安く薄っぺらなプライド……と理解される方が少なからずいらっしゃる様ですが、実は現代日本でも似たような物は皆さん接する事が有るんですよね。


 例えばお仕事に出掛ける際に着るスーツ、安い物ならば¥5000-でツーパンツ付きなんてのも有れば、高い物は天井しらず……


 当然お高い方は見栄を貼って着る物! と思えますが……それが『億単位』の商談に挑む際に身に付ける物と考えるとどうでしょう?


『大企業』の看板を背負っている努め人ならば、大企業と言う信用の担保が有るので大きな問題には成らないかもしれません。


 ですがそれが新参の『名前も聞いた事の無い若造』ならば?


 しっかりとクリーニングはされて身奇麗では有る物の、それらは『安物揃い』となれば、高い金を払う仕事を任せる気になるでしょうか?


 もしかしたら『金だけ取って逃げる詐欺師』かもしれない、と疑いたく成りませんか?


 就職の際の面接だとしても、面接官の良いお年をした男性がそんな安物で身を固めていれば『この会社に入ってある程度出世したとしても、此の程度の物しか身に着けれない程度のの給料しかもらえないかもしれない……』そう思えるのではないでしょうか。


 無論、逆に面接に向う『若造』が『身の丈に合わない』高級スーツを着る様な『適切では無い』見栄は逆効果で有る事は言うまでも有りませんが……。


 漫画やドラマで描写される『社長室』に高級そうな絵画なんかの芸術品が飾られるのも、やはり同じ様な見栄による物といえると思います。


 とはいえ、私が見た事の有る数少ない『社長室』にそう言った高級品を飾っている人は殆ど居ません、社長室で社外の方と会う事は稀だからです。


 普通は社外の方と会う場合には別途用意されている『応接室』を使うでしょう、そしてその応接室には絵画や彫刻等の高価な調度品が飾られている事が多いです。


 対外的な見栄を見せる場所ですから、商談のために訪れた応接室にそれらの物が無ければ、

『見栄を張る程度の金も無い、此の会社と取引して大丈夫か?』

我が社(ウチ)相手では見栄を張る価値も無いってか?』

 と思われれば、明らかな不利益です。


 身持ちを崩さない程度の適切な見栄を張る事を『見栄を張っている』とはわざわざ言う事は有りませんが、それでもやはり最低限の『見栄』は張る側もソレを見る側も理解しているべき事だと思いませんか?


 昨今の日本は不景気と言う事も有ってか見栄を張る事を害悪だと思っている方も多いようですが……




 さて、話は変わって面子の方のお話です。


 面子を辞書で引くと『体面・面目』と出て来ます、ですが私は面子と言う言葉には更にそれに加えて『信用』と『プライド』と言う物が含まれていると考えます。


 喧嘩や揉め事の仲裁をする時『俺の顔を立てて収めてくれ』と言う言葉を使ったりしませんか?


 顔を立てるを辞書で引けば、やはり「面目や体面を潰さない様に配慮すること」と出ます。


 これは言い換えれば「俺の面子を潰さない為に収めてくれ」と言う事になりますが、同時に「俺が責任持って処理するから収めてくれ」と自分の『信用』を担保にして仲裁しているとも取れると思うのです。


 似たような物として『紹介』が有ります。


 就職の斡旋であったり、商売上の客のであったり、時には見合いの紹介をして縁談を取り持つなんて事も有るでしょう。


 どの場合でも紹介者の責任で紹介し、紹介された側は紹介者の『信用』を担保に紹介を受ける、と言う事になります。


 紹介された仕事から逃げたり、客が店に迷惑を掛けたり、何方か一方の有責による離婚や破談なんてことが有れば、紹介者から『俺の面子を潰したな!』なんて言葉が出る事も有るでしょう。


 家を借りるにせよ、金を借りるにせよ、就職するにせよ、今でも『保証人』を立てる様に言われる事があります。


 当然この保証人というのは、最悪の場合金銭的被害を賠償させると言う目的も有りますが、それ以上には保証した人間の面子を担保にしているのではないでしょうか。


 普通保証人を求められる様な事が有れば、本人に対して何らかの審査が行われている筈です、ですが保証人に対しては審査が行われると言う話を聞いた事がありません。


 親だったり親友だったり、その時々によって保証人となる人は違うかもしれませんが、極々一部のレアケースを除いて、保証人に迷惑を掛けるつもりで保証人をお願いする人は居ないでしょう。


 本人と保証人の間に有る『信用』を担保にしている、と考えれば保証人に審査が行われない理由としては納得できる気がしませんか?


『信用』は個人個人間で結ばれる「信用している」と言う言葉の『信用』とクレジットヒストリーや勤務先、年収等の所謂『信用情報』その何方もが面子と言う言葉に含まれていると思います。


 近年デジタルデータ技術が発達し『信用情報』がある程度簡単に取得利用出来る時代に成りましたが、それらが使われる様に成る前、本当に一昔前はそれらを利用することはできませんでした。


 そうなると全ては個人間の『信用』だけが頼りですので、人の『信用』を担保してくれる『保証人』が必要で、その保証人の信用を裏切らない……面子を潰さない、と言う事があらゆる生活の場に根ざして居たのではないでしょうか。


 昨今では人と人の繋がり付き合いという物が希薄となり、保証人を頼める人を用意するよりは保証代理サービス等を使う、という方も増えてきているようですが、そういうサービスでも『面子』を潰せば相応の補償料が掛かるものです。




 見栄も面子も昨今では余り耳にする事は余り無く、殆ど意識する必要の無い言葉と成って来たようですが、決して蔑ろにして良い物では無いと思うのです……適度ならね!

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