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8.夜の屋外

 小夜子(さよこ)さんの手料理はとても美味しかった。

 後で聞いた話だが、夕食のハンバーグは鹿肉の物だと聞いた。

 鹿肉って食べられるのか。


 椅子にもたれかかって、何気なく外を見る。

 夜だ。外は真っ暗、街灯すら見当たらない。

 それを見てふと思い出す。

「小夜子さん、車の中で話してた、夜は神様の時間ってどういう事なんですか?」

 今日は色んな事があって、今さっきまですっかり忘れていた。

「あ、私もそれすごい気になってた」

 和琴(わこと)も同じだったようだ。


「そう言えば詳しく説明してなかったわね、ごめんなさい」

 そう言って、小夜子さんは悪戯な笑みを浮かべる。

「日も暮れたしちょうど良いわね。外、見てみなさいな」

 小夜子さんに言われるまま外を見る。

「ひぃー!」

「すごーい!」

 窓の外、そこに広がっていたのは異様な光景だった。

 

 夜空を泳ぐ青白いイカ。異様に長い二本の触腕がだらりと垂れ下がり、地面をこすっている。

 天高く伸びた、赤く輝くモノリス。微動だにせず、元からずっとそこにあったような雰囲気すらある。

 骨だけの四足歩行の何か。自重を支えられないのか崩れて落ちては、巻き戻しの要領で元の形に戻る。

 ……等々。

 そしてそれら全てがもれなく巨大だ。

 

 まるで家ごと深海に沈んだような景色。


「小夜子さん!外に巨大怪獣が!」

 驚きのあまり嘔吐しそうになる。

「全部神様よ」

 小夜子さんは変わらず、意地悪そうな笑みで僕を見ている。

「え?」

 神様?

 あの魑魅魍魎の怪獣大戦争が?

 出るところに一柱でも出たら、航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発進するレベルだ。

「日が落ちるとね、ああやって神様達がお散歩されるの」

「散歩?侵略の間違いじゃないですよね?」

「ゆう君、心荒んでるー」

 和琴も小夜子さんと同じような表情で僕を見ている。

 あんな人智を超える者を見て、よくそんな平常心を保っていられるものだ


「だってあの神様達って、人には危害加えないよね?」

 和琴が小夜子さんに尋ねる。

「家にいる限りは安全よ。家にいる限りはね」

「家の外に出たらどうなるんですか?」

 うーん、と唸って小夜子さんは考える。

「この町で夜出歩く人なんていないから、どうなるかははっきり言えないけど」

 不穏な空気に、思わず唾を飲み込む。

「人の想像を超えた出来事に遭遇するのは確実ね」

 怖い。

 外に出るのは絶対にやめよう。

 だが、家にいる限り安全というのも、よく考えると意味が分からない。

「小夜子さん、例えばあのデカイカ様の触腕が家にぶつっかたら、全壊まぬがれないですよ」

「そこをお座敷様が護ってくださるの」

「はい?」

「夜になるとお座敷様が家に結界を張ってくださるの」

 なんだって。

「だから、家に神様がぶつかっても問題無いし、家ごと食べられることも無いの」

 お座敷様はそんなすごい神様だったのか。

 ただの無口な半透明な可愛い女の子と思って申し訳ない。 

「神様に関しては、長閑(のどか)ちゃんが詳しいから今度聞いてみたら?」

 そうなのか。

 ちょっと聞いてみようかな。

 

 その夜は、脳裏に焼き付いたイカ様の姿にうなされ、和琴に頼み込んで同じ部屋で寝かせてもらったのは墓場まで持っていくつもりだ。

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