7.廊下案内
午後六時。
「そろそろ晩御飯にしましょー」
だいぶ遠い所から、小夜子に呼ばれた。
「今行きますー」
引っ越しの荷ほどきの手を止め返事をする。
有り難いことに、小夜子さんは僕らに一部屋ずつ和室をあてがってくれた。
お座敷様との追いかけっこでこの家を走り回って改めて実感したが、この家はとても広く、様々なタイプの部屋がある。
畳張りの純和風なグレートルーム、真っ白な襖に白と黒のタイルが映える和モダンな書斎、囲炉裏のある和室、等々。
ただ、ほとんどの部屋が使われていない感じがした。
小夜子さんが一人で住んでいるのだから当然なのだが、なんだか物悲しい。
段ボールの散乱した部屋を出ると、目の前におかっぱヘアーのお座敷様が立っていた。
青いワンピースを着ている。
「あ、着替えてる」
ほぼ無意識の独り言だった。
お座敷様は僕の方をじっと見つめている。
まずい事を言ってしまっただろうか。
なんだか気まずい。
「あの、何か御用でしょうか?」
微妙な空気を何とかしようと彼女に話しかけてみる。
もはや恐怖心は無いに等しい。
神出鬼没なのと若干体が透けているのを除けば、普通の女の子だ。
「……」
それと、とても無口。
「もしかしてダイニングまで案内してくれるんですか?なーんちゃって」
ジョークのつもりで言ったが、彼女は微笑む。
どうやら最初から案内してくれるつもりだったようだ。
お座敷様に手招きされながら、長い廊下を歩いていく。
奥の部屋に明かりが灯っているのが見える。
「来たわね。迷わなかった?」
明かりの中から顔を覗かせた小夜子さんが言った。
「大丈夫です、案内してもらえましたから」
お礼を言おうとして辺りを見回すが、お座敷様すでにいなくなっていた。
白い清潔なダイニング。外を一望できる大きな窓がとても印象的だ。
フローリングの広い床の上には長テーブルと椅子が四脚置かれている。
和琴はすでに着席し、テーブルの上の料理に目を輝かせている。
三人分のとろろご飯に長芋の味噌汁と色とりどりのサラダ、そしてメインディッシュのハンバーグ。
豪勢な食卓だ。
「今度長閑ちゃんに会ったらお礼しないと」
「そのうちまた来るって言ってました」
「そう」
「長閑さんこの近所に住んでるって本当?」
「本当よ。ここから二十分くらい歩いた場所に住んでるのよ」
二十分歩くって近所なのか。
一駅分はあるんじゃなかろうか。
それより、天内さんはあんな重い長芋袋を持って二十分も歩いて来たのか。
僕ときたら、一瞬持っただけで明日筋肉痛になりそうだというのに。
恐ろしい。
「駅からここに来るまでに、赤いレンガ造りの三階建ての家あったでしょ」
「ありましたね」
畑や田んぼの真ん中にぽつんと建っていたあの家か、と思い出す。
家と言うよりは、洋館、城というイメージだ。
「あの家可愛かったよね」
和琴、お前は何でも可愛いと言えばいいと思っていないか。




