5.貰い物
「あなたが折笠悠和くん?」
天内さんは一歩歩み寄って僕の顔をじっと見る。
「そ、そうですが」
近い。
思わず声が裏返ってしまう。
「あなた、白神高校に転入するんですよね?」
白神高校とは明日から僕が通う学校の事である。
天内さんはなぜそれを知っているのだろう。
「どうしてそれを?」
率直な疑問だ。
「小夜子さんから色々聞いていたんです」
ニコっと笑って天内さんが言う。
「私、そこの一年生なんです」
「え、同学年?」
ほとんど無意識の一言だった。
なんという事だ。
僕より身長はかなり高いし、醸し出す大人っぽい雰囲気といい、完全に成人女性だと思っていた。
やはり田舎の食べ物は栄養豊富で、育ちも良くなるということなのか。
僕も今日から毎日牛乳を飲もう。日本男性の平均身長を目指して。
「私、高校一年生には見えませんか?」
ニコニコしたまま天内さんが言った。
「よく言われるんです。大人っぽいねって」
「そうだと思います」
つられて僕も敬語になってしまう。
そもそもなぜ敬語なのだろうか。
「天内さん、何か御用があったんじゃないですか?」
僕の後ろに隠れていた和琴がおずおずと天内さんに声をかける。
珍しい。
和琴が異様にかしこまっている。
「そうでした、うちの畑で長芋が獲れたのでおすそわけに来ました」
そう言い、天内さんはビニール袋を僕に差し出した。
なんて出来た娘さんなんだろう。
「よろしければ皆さんで召し上がってください」
「ありがとう。いいのか?こんなに貰っちゃって」
袋がはち切れんばかりに詰め込まれた山芋。
ずっしりと重い。
天内さんは軽々片手で渡してくれたが、受け取った僕は両腕で何とか持てる重さだ。
「そのうちまた伺いますと小夜子さんに伝えてください」
「了、解……」
両腕がプルプルしている。
手の平にビニール袋が食い込む。
「それじゃまたね、折笠くん、和琴ちゃん」
「はい」
「……またな」
天内さんが玄関を閉めたのを確認してから、小上がりにビニール袋を置いた。
「天内さん、大人っぽくて綺麗な人だったね」
「そうだな」
「ゆう君、天内さんに見惚れてたでしょ」
「そ、そんな事ないさ」
声が震えてしまった。
正直かなり見惚れてしまった。
「なんだ嫉妬してるのか?兄さんは和琴が一番大好きだぞ」
「うわー気持悪~」
と言いつつ、和琴はまんざらでもない顔をしている。
「私も長閑さんみたいな素敵な女の人になりたいな」
いつの間にか長閑さん呼びだ。
疲れ切った腕を振りながら、貰った長芋に目を移す。
近所の人から貰い物するなんて、今日が初めてだった。
同年代の友人もできたし、ここでの生活も悪くないのかもしれない。




