3.車内にて
真っ赤なトタンの屋根、木造平屋建ての古民家。
趣があると言えば聞こえが良いだろうか。
電気が通っているのか不安になる程の趣さだ。
そんな古民家の前で、小夜子さんの車は止まった。
「はい到着。ここが私の家。今日からは君達の家でもあるわよ」
「わー、可愛い家!」
可愛い?
さすがにそのワード選択は適切ではないだろう、と車酔いで朦朧とする意識の中で思う。
「家の方にはもう君たちの荷物は届いてるから、さっさと開けちゃいましょう」
「はーい」
後部席で吐き気を必死に抑えている僕とは対照的に、前席の二人は楽しそうに会話をしている。
道中、小夜子さんはこの町について簡単に説明してくれた。
小夜子さん曰く、この町には神様がたくさんいるらしい。
そして神様はみな、日没後に活動を始め、夜明けには何処ともなく消えるのだという。
「神様……」
車酔いに打ちのめされている意識にとどめを刺すようなワードだった。
「神様!」
後部席でグロッキーな僕とは対照的に、声を弾ませる和琴。
和琴はこういうファンタジー的な事が昔から好きだった。
神様をファンタジーにカテゴライズしても良いか疑問だが。
「そう。神様」
「父さんと母さんはそんな話一言もしてませんでしたが」
頭を抱えながら僕は小夜子さんに聞く。
「町の外で神様の話をすると良くない事が起きるらしいのよ」
「良くない事?」
「一般的なのは神隠しかしら」
怖い。聞くんじゃなかった。
一般的って事は、他にもあるのだろうか。
「まあ、町の外の人に言っても、あまり良い顔されないだろうしね」
それはそうだ。
現に僕は今、相当険しい顔をしているだろう。
「ねえねえ小夜子さん、神様ってどんなのがいるの?」
「それはもう色々いらっしゃるわよ。私の家にも神様いるのよ」
「本当に?」
和琴は心底楽しそうだ。
本当よ、と小夜子さんは続ける。
「それでね、日の出から日の入りまでは外に出てても良いんだけど、日没後は外に出ちゃいけないの」
「どうして?」
「夜は神様が外を出歩く時間なのよ」
なんだかはっきり分らない。
「もし夜出歩いたらどうなるんですか?」
小夜子さんは少し考え、どうなるのかしらねぇ、と心許無く答える。
「多分、神罰を下されるんじゃないかしら」
神様ってこわい。
「まあ、私も詳しくは知らないんだけどね。町の古くからの風習だし」
頼り無さを感じる返答だ。
「郷に入っては郷に従えって事でよろしくね」




