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14.帰り道1

 登校初日に女子と一緒に下校することになるなんて。

 出来れば洒落たカフェのテラス席で、上品にコーヒーか紅茶をたしなみたいところだ。

天内(あまない)さん、学校から家まで歩くと何分くらいかかるのかな?」

「一時間くらいでしょうか」

「一時間……」

 一瞬目眩がした。

 今朝は初日と寝不足という事もあって、小夜子(さよこ)さんに車で学校まで送ってもらった。

 帰りは電話で連絡くれたら迎えに行くと言ってもらったが、携帯が圏外なので天内さんの一緒に帰宅しようという申し出はとても嬉しかった。

 正直一人だと家まで帰れる気がしない。

「ちなみに、バスとかは?」

「ありませんが?」

 無い事がさも当然のように返されてしまった。

 地下鉄も無ければバスも無い。

 頼れるのは自分の足だけなのか。


 それにしても天内さんは背が高い。

 横を見ると、並んで歩く天内さんの小麦色の首筋が見える。

 目を合わせて話すには見上げなければならないので、少し首が痛くなる。

 かと言って目線を落とすと、今度は胸に意識がいって一人気まずい思いをしてしまう。



 見渡す限りの田んぼと山。

 とりあえずアスファルト敷いときました的な道。

 自動車がぎりぎり一台通れるかどうかぐらいの道幅だ。

 と言うより、僕と天内さんが並んで歩いてるだけでも若干道幅に息詰まるものを感じる。

 一歩踏み外したら田んぼの肥しになってしまうこと請け合いだ。


折笠(おりかさ)くんは神様について知りたいんですよね」

 少し間を置いて天内さんが話しかけてきた。

「知りたい。本当に人間に害が無いのかどうか」

 あれらが、僕や妹に害があるようならばすぐに引っ越さなければ。

「そうですか。まず何から説明すればいいでしょうか」

 天内さんは顎に手を添えて、うーんと唸っている。

「最初に、これだけは約束してください」

 一段低い声で、念を押すように天内さんが言った。

「この町の外で、神様に関する事を決して口外してはいけません」

 さっきまでの柔和な雰囲気とは真逆の迫力。

 あまりの迫力に一瞬歩みが止まる。

「……わかった。口外しないと約束するよ」

 唾を飲み込みながら天内さんに宣言する。

 口外するとどうなるか少し知りたいが、今はそんな事を聞ける雰囲気ではない。

「次に、夜は基本的に外を出歩いてはいけません」

「それは小夜子さんに聞いた」

「そうですか。どうなるかは聞きましたか?」

「神罰を食らうとか神隠しに遭うって聞いたけど」

 僕が答えると天内さんは、うーんとまた唸りだした。

 柔和な雰囲気に戻っている。


「その認識で間違っていません。夜に出歩くという事は自殺行為に等しいです」

「マジか……」

 神罰や神隠しだと非現実的だが、自殺行為と言われると急に現実味を帯びてきて怖い。

「ただし、太陽が出ている間は」

「それだ。なぜ神様は夜しか現れないんだ?」

「あれを見てください」

 そう言って、天内さんは空を指さした。

 その先にはまん丸な太陽がある。

「太陽がどうした?」

「太陽だって立派な神様なんですよ」

「え?」

「言いませんか?お日様、お天道(てんとう)様とか」

「あ」

 そう言えば、太陽をそんな呼び方で呼称することがある。

「そして詳細は分りませんが、太陽は他のあらゆる神様の力を押さえる能力があると考えられています」

「お?」

 急な専門的な話にいきなりついていけない。思わずまぬけな声が出てしまう。

「簡単に言えば、太陽が出ている間、この町の神様は寝ている状態でしょうか」

「それならなんとなく分かる」

「そして人間は、神様がお休みしている時間を利用して暮らしているというわけです」


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