11.クラスメイト
「おはようございます。今日のSHRは転入生のご紹介から始めます」
教壇に立つ若水先生。
そしてその隣に直立する僕。
教壇に立っているとはいえ、あのだぼっとした金色刺繍の黒ジャージではまるで先生に見えない。
さっきまでガチガチに緊張していた僕だが、教室に入った途端に気が抜けてしまった。
原因は、クラスの人数である。
四人。
なんとクラスメイトが四人なのだ。
前に一瞬通った高校は一クラス三十五人だった。
それに比べると圧倒的に少ない。
さすがに四人相手の自己紹介なら少ししか緊張しない。
ここはビシッと一発決めてやろう。
「それじゃ、まずは折笠くんから自己紹介してもらおうかな」
「はい」
若水先生に促され、僕は黒板に大きな字で自分の名前を書いた。
「折笠悠和です。昨日この町に引っ越して来ました。色々分らないことがあるのでぜひ教えて頂けると助かります。よろしくお願いします」
頭を下げながら、面白みのない自己紹介になってしまったと少し後悔する。
「折笠くんは都会から引っ越して来たばかりで緊張気味だから、みんな仲良くしてあげてな」
ちなみに、と若水先生は続ける。
「先生と折笠くんはもう仲良しだぞ。折笠くんってばとっても良い子でさあ、先生の事若いって言ってくれたんだよ」
あはは、と笑いながら嬉しそうに言う若水先生。
若いって言われてそんなに嬉しいのか。変な先生だ。
でも優しい人だ。こんなに気遣ってくれるなんて。
着席している四人も困ったような、仕方ないなというような微妙な笑顔を浮かべている。
この先生はいつもこんな感じなのだろう。
「それじゃ一人ずつ立って自己紹介お願い。名前と、趣味とか好きな事を言ってください」
若水先生が言と、廊下側の生徒がおもむろに立ち上がる。
「天内長閑です。趣味は神様を研究する事です。よろしくお願いします」
柔和な声。
昨日小夜子さんの家で会った、日焼け撫子。
柔和な笑顔と日焼けした小麦肌、そして長い黒髪が印象的だ。
だがそれ以上に目立つのがその長身。
僕より頭一個分は身長高いのではないだろうか。
そして、この人が若水先生が言っていた神様に詳しい人か。
「伊東純也。趣味は筋トレ、好きな物はプロテイン。よろしくな」
大柄の美丈夫。
だが、天内さんより若干背が低い。
胸元まで開いたワイシャツから、発達した大胸筋が見える。
失礼ながら、若水先生のクソダサヤンキージャージがとても似合いそうだ。
「氏家香澄です。趣味は読書です。よろしく」
眼鏡をかけた大人しそうなセミロングの少女。
深窓の令嬢的な儚さを感じさせる。
細いながらもスタイリッシュな紫のメガネフレームは、清廉な雰囲気に磨きをかけている。
人見知りなのか目線を合わせてもらえなかった。
「私は榎尾芹。趣味は体を動かすこと!よろしく!」
元気で活発そうなポニーテール娘。
小柄だが、スカートから伸びる足がほどよく筋肉質だ。
運動が得意そうだが、天内さんより日焼けしてない。
室内スポーツがメインなのだろうか。
そして、ポニーテール。イエス・ポニーテール。
「みんなありがとう。それじゃ、折笠くんは窓側の空いてる席に座ってね」
窓側。榎尾さんの隣か。
「わかりました」
産まれて初めて出席番号がビリになった、なんて思いながら席に向かう。
「よろしくね、折笠くん」
席に着くなり榎尾さんが話しかけてくれた。
「こちらこそよろしく、榎尾さん」




