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1.引っ越し1

 プレハブ小屋を連想させる質素な無人駅。

 電車が多く走らないことを示すかのように、一本しか通っていない線路は雑草で覆われ獣道の様相を呈している。

 木造のホームは、歩くたびにみしみしと嫌な音を立てる。

 そして見渡す限りの山、山、山。

 ド田舎という言葉がお世辞に聞こえる程の大自然。

 果たしてこんな所に本当に人が住んでいるのか。


「調子、悪くないか?」

 キャリーケースを椅子代わりにしている妹に声をかける。

「全然平気だよ。心配してくれてありがとう」

 彼女はそう言って微笑んだ。

「でもちょっと疲れちゃったかな。こんなに長い時間乗り物に乗ったの初めてだったし」

 そうか、と僕は相槌を打つ。


 この寂れた無人駅に到着するまで、合わせて六時間ほど新幹線と在来線に揺られた。

 長時間の移動をした事の無かった僕達兄妹には快適な旅ではなかった。

 辺り一面が田んぼに囲まれ、コンビニすら近くに無いような田舎駅が延々続き、食べ物すらろくに買うことが出来なかった。

 事前に準備しておけば、と深い後悔に襲われる。

 

「叔母さんの家に着いたらマッサージしてあげるよ」

「それいいね!首から足先までガチガチなの」

 妹はあまり体が丈夫ではない。喘息持ちで今まで何度も入院してきた。

 そんな妹を連れて、わざわざ長旅をしてきたのには理由がある。

 

 叔母の家に居候&妹の療養するためだ。

 父が海外出張になり母がそれに付き添うと言い出した。

 息子目線でも仲睦まじい夫婦なので至極当然の事だと思う。

 そして両親は、僕ら兄妹の健やかな生活と妹の療養を叔母に託したというわけだ。

 

「なぁ、今更だけど本当に良かったのか?」

「何が?マッサージならもうキャンセルできないからね」

「そうじゃなくて、こんなド田舎に引っ越してきてさ」

「えー、良い所じゃない。静かで空気も澄んでてとっても素敵」

 大きく深呼吸をしながら妹は言う。

 我が妹ながら、ポジティブな着眼点。

「確かに。そう言われてみるといい所な気がしてきた」

「でしょ?どうせゆう君は、ド田舎なんてもんじゃねえとか思ってたんでしょ」

「まあな」 


 そんな話をしている最中、背後から草木の擦れる音がした。

 何か生き物の気配がする。

「ヒィー」

 情けない悲鳴を上げたのは僕だった。

「何かな何かな!熊さん?猪さん?」

 妹は目を爛々と輝かせている。

 何故そんなに楽しそうなのだ妹よ。兄は戦々恐々だぞ。

「だ、だだ大丈夫だ。僕が必ず守ってみせる」

 声が上ずっているのが自分でも分かった。

 都会育ちに野生動物の洗礼は辛すぎる。

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