家族ぐるみの歓待
「へえ。君が王女さま。へえ」
と、しきりに感心の声をあげる父。こいつマジで知らなかったのか。
「いやあ、そうはみえないねえ」
そして失言。もうやだ、この人。
父はベッドに腰かけ、ぼくとナナリーはテーブルについている。
ふたり暮らしなので、椅子がふたつしか用意されていないのだ。「お客様用」という概念はないのかと思ったが、めんどうだったので、突っ込まないことにした。
「よくいわれます」
父の不規則発言にたいして、ナナリーもなぜかまんざらでもないようす。案外、相性がいいのかもしれない。
「で、なんで我が不肖の息子と、やんごとない身分のナナちゃんが知り合いなの」
「王女さまを親戚の子どもみたいにいわないでくれ、不肖の父よ」
「はっはあ。俺の場合は、どちらかといえば不詳の父って感じだけどねえ」
と、わかりづらくて微妙に知的な親父ギャグをかます。
というか、不肖で不祥な自覚があるのか。
「でも、これくらいの脱力系ユルフワ親父のほうがいっしょに暮してて楽しいぞお。ナナちゃんもそう思うだろ? ん?」
両目をぎょろぎょろさせながら、いう。威嚇をするな。
「え、ええ……」
慣れない呼び方にとまどっているのか、それともただ単に不審な顔面動作が怖いのか。ナナリーは戸惑いを隠せない。
「ほら、息子よ。おまえは自慢の尊父を持ったんだぞ。恵まれた立場なんだぞ。もうちょっとありがたく思いなさい。感謝の手紙を読みあげてくれてもいいんだぞ」
「なんだその三流感動バラエティみたいな演出は……」
というか、そういうことがされたいなら、その軽薄な態度を少しは見直してはどうか。
「って、そんなはなしはどうだっていいんだ」父は思いついたように右のこぶしの腹で左の手のひらを叩いた。古風な動作だ。
「息子が王女さまとどういうコネをもっていて、俺がどうやってその恩恵に与れるかだった」
「父よ、心の声まで漏れてるぞ」
「正直な性格でね」
なぜかウインク。気持ちわるい。お願いだからやめてほしい。
「たまたまですよ」
ナナリーは、あっさりと答える。
「たまたま、チンピラにからまれていたのを――」
「へええ! カレイユが救ったと! おお、やるじゃないか自慢の息子よ」
さっきまで不肖だなんだと連呼していたのをもう忘れたのか、父は大げさによろこんでみせる。
しかし。
父はひとつ大きな勘違いをしている。
「ちがう。逆だ」
「ん?」
「ぼくが助けたんじゃない。からまれているぼくをナナリーが助けてくれたんだ」
「ああ」
父は、なぜか天を仰いで、
「母さん。カレイユはやっぱりぼくの息子だったよ」
と母に助けを求めた。なぜか笑みには、悲しげな色が浮かんでいた。




