オウター家屋敷#48
心なしか嬉しそうなマギナの報告を聞き、俺は思った。ヤバイなこれ。たぶん、アレだろ、マギナと同棲なんて許さない。っていう警告のための晩餐会でしょ。そうでなくても、貴族で晩餐会とくれば、小説やアニメでも厄介なイベントが多発する行事だ。俺は駆け引きというのがまったく得意ではないから、小説やアニメの主人公みたいに晩餐会を上手く切り抜けることは出来ないだろう。最悪、いつのまにか、金を巻き上げられたりされるかもしれない。
ただ、小説やアニメの中でも結婚させられそうでした。とかで済む晩餐会もある。もちろん、結婚を持ちかけられる可能性はゼロに等しいが。まあでも最悪、金を巻き上げられても家を買った後なのでマギナに借金した後依頼でもこなして金を返していけば問題は無いだろう。そんなことを考えていると、マギナたち女子陣が何かを喋っていた。
「無理」
「そこをなんとか出来ませんか」
「当主の命令は絶対」
「ウンディーネいけないの?」
「行けない」
聞くところによると女子陣ではマギナが俺だけしか行けない理由を他の女子に説明していたらしい。なぜかマギナが心なしか嬉しそうな表情をしている気がする。マギナはSなのだろうか。一方マギナとは対照的にリーフィアは悲しそうだ。いつもは楽しそうにしているウンデイーネも心なしか悲しそうである。何か、ウンディーネは置いていきたくないな。リーフィアは何とかなりそうだが、ウンディーネはリーフィアが居ても不安が残る。いや、別に悲しそうな顔を見て保護欲を掻き立てられたからとかではない。そんなことを考えていると、いつの間にかマギナに手を引っ張られてワープホール的な奴に入っていた。すると、いつの間にかワープホールの奥を向いているのではなく前を向いていた。
オウター家の屋敷のどこかはシャンデリアが照明になっていてとても貴族らしい一室になっていた。訳ではなくマギナが作る地下の研究室が研究基地になるのを確信できるぐらいにメカメカしい、SFチックな一室だった。
まず照明だが、コレが凄い近未来間を演出していた。その近未来間を演出する照明とはそこらじゅうを通っている液体だ。その液体は強く青く発光していて天井に埋め込まれている透明なパイプで通っており、床に行くと色が変わり強く赤く発光していた。それだけだと見えにくいのか左右の壁はそれぞれ均等に普通のLEDのような白い光を出している。
次は机だ。机がディスプレイになっており、いろいろな、道具箱や、何かの部品の図、歯車、スイッチのアイコン。そしてキーボードを表示している。ただ、ディスプレイの色は青色を主体として時折赤が混じっているのでたぶん謎の液体だろう。ちなみに、その机はものすごく分厚かった。
観察して思ったのだが。なんで同じ2014年のはずなのに魔法がある異世界に俺の元いた世界は負けてんの。だって、魔法がある世界は魔法に頼りきりで科学はあまり発展していない。というのが一般的でしょ。なんで、こんなに発達しちゃってんの。コレじゃ、ただのSF世界だよ。一通り心の中でツッコミを終えると、マギナが扉を開けていた。ちなみに自動ドアだった。
そしてマギナはうんうんとうなずいたかと思うと、「付いてきて」と言ったので付いていくと廊下に出た。廊下は特にメカメカしいとかSFチックな感じではなくむしろ、中世の生活レベルのこれまで見てきたこの世界に準拠しているものだ。しいて言えばガラスから見える街の景色が異様に小さいということだろう。
確か、高い建物を建てるにはそれ相応の技術と資材が必要になるはずだから、この屋敷はこの世界では世界一、高いかもしれない。出て後ろを振り返ってみると、何気に木に数字が彫られたボタンが一つにまとめられていた。
数字は電話番号の配置に置かれていたが、もちろん井桁《#》や米印の点を線にした奴《*》などは無いためそこの部分は空いている。恐らくあれは、暗証番号を打つため用のテンキーで、暗証番号をアレに打つとこの部屋が開くようになっているのだろう。
そしてマギナが部屋を出てから待っているので何をしているのだろうと思い、声を掛けようと思ったところでそいつは現れた。俺は廊下が異常がなかったから、てっきり一部の部屋の中以外は他の貴族が来たときのために外の生活レベルにあわしてあると思ったのだが、どうも違ったらしい。
マギナが手を上げて停めたのは都合よく二体来たインターネットで見たソロウィリーに似た。赤く塗装されて足場がある筐体の中にタイヤが入っており、ハンドルみたいな円盤がついたものだった。なお、青いバージョンも有った。
ウンディーネが乗るとその機体が「健康状態良好」と低い男性の声の合成音を発した。ちなみに声は中○悠○さんの青騎○(機械)の時の声にそっくりだ。そして、その機械が「体重は」と体重の結果を言おうとした所でマギナは「言わないで」と言った。もちろん、そんなのこんな機械がわかるはずもない。と思っていたのだがその機械なんと「失礼しましたレディ」と機体が返したのである。
つまり、こいつにはマイクと人工知能でも乗っているということではないのだろうか。たぶんソフトウェアは魔法でどうこうできる問題ではないはずだ。なので、やはり魔法を抜きにしてもオウター家というのは科学が進んでいる天才の一族なのだろう。
あと、この世界でも女性に体重を聞くのは失礼に当たるらしい。そんなことを考えていると、マギナに「怖いかもしれないけど乗って」と言われたので、急いで乗った。すると、さっきと同じように機体が男性声の合成音が発された。
「健康状態・・すこしの運動不足」
「脂肪は普通。なお、すこし筋肉が足りないので歩くことを推薦します」
「乗らせてくれ」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」
「OK。出発します」
なんでそのネタをここの世界のロボが知ってるんだよ。というか今気がついたが怠けてアブナイ状態にならないようにするための健康診断なんだな。なるほど、よくこの機体は考えられてるな。
前座が長いのと、SFにしてしまいました。すみません。オウター家の異常さを際立たせるためにSF風にしました。ちなみに、一応すべてのあれこれには脳内設定があります。なお、本当の名前はソロウィールですが、カービィのウィリーライダーと混同してしまいヒョウガは間違えています。




