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エルディス学園 ~氷来記~  作者: 絢無晴蘿
エルディス学園 ~氷来記~
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氷雪、疑問を問う



「……ソルディア式魔術」

ふと、セリスは呟いた。

図書室の書架で本を探しているところだった。

「え? どうした?」

見ると、オルハは大量の本を見ているところだった。

「あ、オルハ君、ソルディア式魔術って知ってる? 本に書いてあってさ」

「あぁ、一応……」

オルハは答えにくそうに答えた。

短い間だったが、今までの授業でソルディア式魔術について教わった事が無い。

教科書にもソルディアの字も出てきなかった気がする。

その事を、今の今まで気にしていなかったが、よく考えてみるとおかしいのではないだろうか?

魔術についての本を調べて行くうちに、その思いが強くなっていた。

「昔の魔術書なんかにはソルディアについてとかいろいろ書いてあるけどさ、私、授業とかで、一度も教わったりしていないと思うんだけど、どうして?」

「えーと……。セリスって田舎とかに住んでたりする?」

「うん。かなーり田舎」

さびしい故郷を思い出しながら答えた。

「それだと聞いた事無いかもしれないけど、ソルディア式魔術はもう消えたんだよ」

消えた?

「廃れたというか、使える者がいないから、教えられる者もいないんだよね」

「なるほど」

「もともと、ソルディア式魔術を使える人が少なかったから、その影響もあるかな?」

「あ、それは知ってる。ソルディア式魔術は魔力の高い人とか、素質がある人じゃないと使えないんでしょ?」

お母さんが魔術についていつも話してくれていた内容にあった。

「ソルディア式魔術の特性として、魔術を展開、発動に演唱や魔法陣とかの補助とかを使わず、高速で魔術を発動できるんだよね?」

お母さんの言葉を思い出しつつ、ソルディアについての知っている事を言う。

「ホント、セリスのお母さんって何者?」

「さぁ?」

これまでの皆の反応をみると、やはりすごいのだろう。

「ちなみに、そのお母さんは今どうしてんだ?」

「んー……。まぁ、いろいろね」

「?」

「ちょっと、二人で何さぼってんのよ。特にセリス。その本、全然関係ない本じゃない!」

「え? ほ、ほんとだ!」

フレイアとアルクが集まって来た。

「ほら、調べるの、再開」






深夜、玄関を静かに明ける人影があった。

上級生がかなりいないので、寮の中は静かだ。

そのなかを、人影は進む。

と、その後ろにもう一人。そして……。

「セリスちゃん? どこか行くなら俺様も行くけど?」

「ショ、ショーマ!?」

「なんであんたの使い魔が居るのよ!」

人影……セリスとフレイアは急に表れたショーマに驚きの声を上げた。

「で、ほんとに二人は何してんの?」

「お、オルハ君!?」

「オルハ!」

ショーマの後ろにオルハまでも現れる。

「ショーマが突然部屋を出たから、付いて来たんだけど……どうしたんだ?」

蛇足だが、ショーマはオルハとアルクと共に、三人部屋で寝ているらしい。

「ちょっと、ね?」

フレイアがそっぽを向いた。

「わ、私が、忘れ物しちゃったのよ」

「どこに?」

「……時計台の中の部屋に」


夜になって部屋に戻ると、泣きそうな顔でフレイアがこちらに頼みごとをしてきたのだが、その内容は、時計台に落し物をしてしまったので一緒に来てほしいという内容だったのだ。

もう遅いし、明日じゃダメかと聞いてみると、大切な物だから、との事で、取りあえず一緒に時計台に行く事になったのだ。

「フレイアって、結構怖がりなんだね」

「い、いいでしょ!」

少し赤くなりながらフレイアはそっぽを向いた。

「で、なんでショーマはここに?」

「そんなの決まってんだろ?セリスちゃんが外に出たみたいだから、何かあったら大変だと思って」

「過保護」

「フレイア、うるさい。ショーマも、何そんな事で来てんの」

「だって、最近セリスちゃんと一緒に居られないんだもーん」

お前は子供か?

と、突っ込みたくなるような反応に、頭が痛くなった。

「愛されてんな」

「その通りだ。俺様はセリスちゃんを愛してるから」

「と、とにかく時計台に行こう!」


時計台のすぐそばまで来た時だった。


「っ?」

いやな予感がした。

なんとなく。

そう、本当になんとなく。

それに気づいたのはセリスとショーマ、そしてオルハ。

気づいたといっても、オルハははっきりとは気づいていない。

ただ、ショーマは焦っていた。

「セリス、逃げるぞ」

「ま、まって、ショーマ」

「いきなりどうしたんだよ?」

突然の事に、セリスは戸惑い、オルハもショーマを止める。

「誰かが結界に細工しやがった……誰かが、部外者がこの学園に侵入しやがった」

「わかってる。でも……」

先生たちが居る、と言いかけて止まる。

先生や上級生は今日、町に行って魔物の捜索などをしているはずだ。

「何者かが、この学園に侵入し、結界に手を出したっていうことか?」

オルハの茫然とした声が響いた。

「あぁ、そうだよっ。ったく、はた迷惑な奴めっ。結局あいつはこれを見越してたのかよっ」

オルハとフレイアは意味がわからないとショーマを見る。

あいつって? 見越してたとは?

その疑問にショーマは応えることはなく、ただセリスの服を握っていた。



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