炎灯、赤面す
「もしかして、フレイアってオルハの事、好き……なんですか?」
ぽかんと、フレイアがしていたのは一瞬だけだった。
何を言われたのか解らないと言ったふうに呆然としていて、ようやく話が呑み込めると耳まで真っ赤になっていった。
「そ、そんな、わけ、あるわけ、ないじゃないのっ」
言葉に詰まりながら否定する。
これでは、あまりにもバレバレだ。
時間は放課後。
全ての授業が終わり、教室から寮へと戻る道すがらのことだった。
周りの女子は友人らと話に花を咲かせていてわたし達の会話には気づいていない。
何人か仲良くなったクラスメイトといつもは帰るのだが、今日は掃除当番だとかでいない。
なんとなく歩いていたらフレイアがいたので話していたのだが、あまりにも一方的にわたしばかり話す事になってしまっていた。
だから、ちょっと空気を変えようと思っての質問だった。
「もしかして、オルハと一緒に居たから私の事……嫌いだった?」
「そ、そういうわけじゃっ、ない……わよ」
フレイアはそっぽを向いて否定する。
でも、確かにフレイアは私がオルハと話す前から私に突っかかっていたような気がする。
なら、理由は何なのだろう。
「貴女があまりにも……男とべたべたしていたからよっ」
「へ?」
べたべた?
……あの日のことを思い返す。
そう言えば、あの日はやけにショーマが抱きついたり普通に考えたら恥ずかしいような言葉を言っていた気がする。
でも、私にとってはあれはいつものことだったから、何とも思っていなかったのだけど、フレイアはそうじゃなかったようだ。
「見ていて恥ずかしいバカップルぶりに、怒っていたのよ」
バカップル……?
「えっ、わ、わ、私とショーマがカップルっ?!」
「傍からはそうにしか見えなかったってことっ!!」
怒っているフレイアの顔は真っ赤だ。
「それが羨まし……そうじゃなくて、その……」
「……?」
「……なんでもない、わ」
羨ましかった。
そう、フレイアは言えなかった。
フレイアの母親は、とある貴族の愛人だった。
大恋愛の末、フレイアを産んだ。
が、貴族としての立場により、父は他の女性と結婚した。
好きな人と離れ離れで、ひどく辛い暮らしを母親がしているのを、フレイアは見て来た。
だから、仲が良いセリスとショーマに、嫉妬したのかもしれない。
しかも、フレイアはオルハの事が好きなのに、何も言えない。
一緒の班になってもただ仲の良い友人としてしか話せない。
セリスとショーマのような関係になれない。
それがいやでいやで仕方なかった頃、ちょうどセリス達が来たのだ。
だから、つんけんな態度を取った。
その中に、転向初日からオルハと仲がよさそうだったことも理由の一つとして入っていたりするのだが、ともかく。
今は少し後悔している。が、今さら態度を変えることもできず、セリスとはうまく関係を築けていなかった。
同じ部屋だというのに。
オルハが好きだとばれてしまった。
それに対してフレイアは動揺する。
どうすればいいのか。必死で考えても焦った頭はいい案を浮かばせることが出来ない。
「フレイア?」
首を傾げてセリスが聞いて来る。
それにたいしてフレイアは
「べ、べつに、そういうわけじゃ、な、な、ないんだか、ら、ね!!」
どもりながら、なんというか、見れば誰でもわかるような、分かりやすい反応をしながら反論の様なものをしていた。
「じゃあ、そういうことにしておく」
セリスの笑顔に、フレイアは顔をそむけてそっぽを向くのだった。