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エルディス学園 ~氷来記~  作者: 絢無晴蘿
エルディス学園 ~氷来記~
1/15

プロローグ




かつて、世界は魔法で満ち溢れていたという。





――プロローグ




深夜――



ウィドール大陸に存在する王国、イルローガ。

首都ウィルトに若き国王の住まう城、ディース城がある。

その、とある部屋の一角では、深夜にもかかわらず明かりが煌々とついていた。

そこでは、まだ二十代前半ほどの青年が机に向かい、書類に目を通しては忙しく作業している。


「まだ終わらないのか……」

山のように積み上げられた書類の束をみて、青年はため息をついた。

「自業自得ですね。昨日も今日もさぼっていたつけです」

入りますよ?

と、あきらかに不機嫌そうな背の高い青年が扉を明けて入って来た。


「いや、その……ランカ、あれにはいろいろと訳が……」

「言い訳はいいですから、早く終わらせて下さい。あ、それと、先ほどこの書類も今夜中に目を通しておいてほしいとの事ですが」

「そ、そんな殺生な!!」

青年―ランカの手によって目の前に新たに積まれた書類の山は、これまでひたすら処理して来た書類の山の二倍ほどあった。

青年に出来る事と言えば、頬をひきつらせて唯夢であってほしいと見つめることしか出来ない。

「と、言うのはさすがに無理そうなので、明日までと話を通しておきましたので」

「ランカっ! すまない! 恩にきるよっ」

「謝るのは当然です。とりあえず、俺の残った仕事を終わらせてきたら、手伝いますから。それまで一人で頑張ってください」

それだけ言うと、ランカは目の前の書類の山にあたふたしている青年をおいて、外へと出ていった。

再び静かになった部屋で青年は作業を続ける。

静かに時間は過ぎていく――


ガタン


「ランカか?早かっ――?」

物音で顔を上げると、ただ部屋の扉が開いただけだった。

「なんだ」

誰もいないので、開いたドアを閉めようと立つ。

扉を閉めて、机に戻ろうとして止まる。

おかしい。

そう思ったのは、なぜなのか。


いつの間にか、机の上に何かが居座っていた。

「っ!!」

すぐに現状に気付き、扉を開けようとするが、開かない。

「誰か!ランカ、居ないのか!?」

扉を乱暴に叩くが、誰かが来る気配は無い。

そんなこと、ありえない。この部屋の付近には、常時衛兵や侍女がいるはず。

夜遅いとはいえ、周囲に人がいないなどあり得ない。

「くそっ!」

「おっと、動くなよ。後、うるさいから叫ぶな」

「っ!」

振りかえれば、先ほどまで見えない何かの居た場所に人間――いや、人間の姿をした魔物が、こちらに剣先を向けて立っていた。

魔物が剣を使うなんて考えられないことだが、現に使っている状況に青年は動揺する。

魔物――では無いのかもしれない。

人間の姿を完璧に模倣しているということは、怖ろしいほどの魔力を保有している。

魔族。その単語が脳裏をよぎる。

「ま、この辺にいた奴らのほとんどは夢の中だろうが、一応な」

「……どこの差し金だ」


ぬかった。

最近は暗殺なんて考えるバカ者もずいぶん減って来たし、来ても自分ひとりで対応できていたために油断していた。

コイツは……自分では勝てない。

魔人を自分一人で相手取るなんて、最悪の一言だ。


苦々しげに青年は魔物を睨みつけ、聞いた。

「どこって言われてもなぁ」

それに対して、魔物は困ったように頬をかく。

迷っている、様子だった。

「言うはずが無いか」


当たり前だ。

暗殺しに来た奴が、後ろの事を簡単に吐くはずが無い。

そんな事を考えながら、じりじりと後ろに下がる青年に、魔物はため息をつく。

「何を勘違いしているが知らないが、俺はあんたにようなんてないから。あるのはこっち」

「?」

魔物が指で指示した方には、魔物の主人らしき魔術師がいつの間にか部屋の中に立っていた。

「き、君はっ!?」

「驚きましたか? イルローガ王国国王。突然の訪問、お許しください」

少し間をおいて、魔術師は言った。



「このたび、ソルディア家の当主の交代を伝えに参りました。そしてもう一つ……あなたと、取引をしたい。イルローガの若き国王、ルシル・J・イルローガ殿」






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