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ネガイゴト

作者: NAO

自分なんて、暴力団とはまったく無縁の人間だと思っていた。むしろ、怖かった。軽蔑していた。恵まれた家に産まれ、両親の愛に包まれ、何不自由なく育ててもらった。私立の高校、大学と出て、ぐれたといっても少しの万引き、タバコそんな程度だった。

「極道の妻たち」に出てきた言葉にこんなのがある。

「極道に惚れたんじゃない、惚れた男が極道だっただけ・・・」こんな言葉を実感するなんて、思ってもみなかった。

 最近では、私は極道と付き合った、極道の妻ですといった本がよく出ている。私は、そんなことを書きたいのではなくて、ただひとつの恋愛として同年代の女に読んで欲しい。読んで何を思うかは一人ひとり違うと思う。ただ、自分の恋愛に悩んでいたり、行き詰っていたり、そのひとつとしてこんな恋愛もあったというだけ・・・。

 これを書こうと思ったのはこの恋愛をきっちりと自分の中で終わらせたかったから。その手助けをしてもらいたかった。それだけ。自己満足・・・。

今この瞬間にも、できることなら彼に逢いたいと思ってしまう自分がいやで嫌でたまらない。

どうしたら忘れられますか

どうしたら逢いたいと思わなくなりますか

どうしたら思い出にできますか



どうしたら、彼のことを思い出さない日がきますか・・・?


目次


はじめに

出逢い

日常

浮気

喧嘩

幸せ

友達・家族

別れ

祐一へ








はじめに・・・

自分なんて、暴力団とはまったく無縁の人間だと思っていた。むしろ、怖かった。軽蔑していた。恵まれた家に産まれ、両親の愛に包まれ、何不自由なく育ててもらった。私立の高校、大学と出て、ぐれたといっても少しの万引き、タバコそんな程度だった。

「極道の妻たち」に出てきた言葉にこんなのがある。

「極道に惚れたんじゃない、惚れた男が極道だっただけ・・・」こんな言葉を実感するなんて、思ってもみなかった。

 最近では、私は極道と付き合った、極道の妻ですといった本がよく出ている。私は、そんなことを書きたいのではなくて、ただひとつの恋愛として同年代の女に読んで欲しい。読んで何を思うかは一人ひとり違うと思う。ただ、自分の恋愛に悩んでいたり、行き詰っていたり、そのひとつとしてこんな恋愛もあったというだけ・・・。

 これを書こうと思ったのはこの恋愛をきっちりと自分の中で終わらせたかったから。その手助けをしてもらいたかった。それだけ。自己満足・・・。

今この瞬間にも、できることなら彼に逢いたいと思ってしまう自分がいやで嫌でたまらない。

どうしたら忘れられますか

どうしたら逢いたいと思わなくなりますか

どうしたら思い出にできますか



どうしたら、彼のことを思い出さない日がきますか・・・?













出逢い・・・

「今度、私の彼氏と彼氏の友達とゴルフ行こー」

「行くいく!自腹かなあ・・・。」

どこにでもある、女たちの会話。

そこそこの高校・大学を出て、3年マスコミ関係の仕事を勤めた。上司のセクハラと、こんなんで一生を終えるのは嫌だという根拠のない理由で仕事をやめた。自分の夢諦められず、何かを探していたんだと思う。23歳。人並み以上に恋愛も経験もしてきた。どこにでもいるような女。女友達とお茶をして、ご飯を食べて、コンパして、夜遊びしてそれなりに幸せだった。

「少し休んでもいいんだよ・・・。」

マスコミ関係の仕事で疲れ果てていた私に優しい母はそう言ってくれた。そのときタイミングよく高校の同級生で、パブのままをやっている子から手伝ってくれないかと頼まれた。正直言って、大学のときに両親に隠れてキャバクラで働いてみたこともあったのであまり抵抗はなかった。

夜の9時から3時までの仕事・・・。話すだけで今までのバイトとは比べ物にならないくらいのお金がもらえる。でも私は客と寝たことがない。枕をする女もいたが、別に軽蔑もしていない。むしろ尊敬するくらいだった。そんなこんなで、1年が過ぎたころ佑一と逢った。

ゴルフをするのが初めてだった佑一は私より3歳年下。OBを打つたびにかっとなって、顔が真っ赤になるのがかわいくて年下の男と付き合ったことのない私にとっては新鮮だった。

佑一がやくざということは友達から聞いていたが、水商売でそれなりにそっちの人たちを見てきたことがあったし、年下でまるでそんな風には見えない佑一に私は何の壁も感じなかった。

 それから、2ヶ月ぐらいが過ぎ「事始め」やくざの新年会にコンパニオンとして呼ばれた。やくざの始まりは12月。クリスマス前。そこで佑一と再会した。佑一の何が良かったんだろうと今思い起こすと、ゴルフのときの頼りない姿しか頭になかったときにみた、スーツ姿。女はやはり男のスーツ姿に弱い。

「佑一意外と男らしくてかっこよかったね」

・・・「なんかね、友達が佑一のことかっこいいって!」

人の話を最後まで聞かない友達というのはどこにでもいる・・・。

それから、ちょくちょくと店に来てくれるようになって、クリスマス酔っ払った私は、佑一に抱きついていたらしい。暴言も吐いていたらしい・・・

 3日後、店に来てくれた佑一に謝ると、笑いながらまったく怒らずに許してくれた。(なんて優しい人なんだろう・・)男はみんな始めは優しい。

その日に、佑一の部屋に泊まりに行った。でも、テレビを見て話して、一緒のベットで寝ただけ・・・。絶対にうそだと思うかもしれないけどほんとに本と。キスしかしてない。今までこんなことがなかったから少しの驚きと少しの自信喪失。自分が軽いとも思っていないけど、でも好きな男の部屋に行ったら当然そうなるのが当たり前だと思っていた。

 ちょっと凄いのは、そこから何回泊まりに行っても、体の関係は無くなんと初めては、旅行先!!なんてロマンチック!今どきそんな我慢のある男いない。ただの小心者・・・?ううん、後で聞いた所によると、大切にしたかったらしい。今となってはこれが本当かうそかもわからないけど、そんなのはどうでもいい。私が信じていればそれでいい。

 旅行から帰ってきて寝ようとしたとき

「ねえ、私たち付き合ってるの?」

「俺からは付き合ってとは言えない。俺はやくざになったばかりだし、迷惑も苦労もたくさんかけるのが分かってるから、言いたいけど言えない。」

なーんてうまいいいわけだと思った。でもこれが佑一なりの付き合って欲しいという言葉だったんだと思う。それから、毎日のように家に行った。




「祐一、3年前のあの時、

      祐一に出会えたことが

         今の私にはかけがえの無い宝物になってるよ・・・」












日常・・・

私のうちはそんなにゆるい家ではなかった。ましてや男と同棲なんて許されるはずが無い。泊まって朝帰るという生活を続けた。今思えば、母は毎日毎日私の帰りを待ち続けて眠りについていたんだろうと思うと、それだけは後悔している。でも、佑一と一緒にいたかった。佑一は自分から会いたいとあまり言う人ではなかった。やくざたるもの女に会いたいなんて言わないもんだと思っていたんだと思う。私が逢いたいといえば、佑一は快く「待ってる」といってくれた。本音を言うと逢いたいのはもちろんだけど、私がいない間にほかの女と会われるのがいやだった、不安だった。怖かった。自分に自信が無かった・・・。

 佑一の兄貴と呼ぶ人は、本当に女癖が悪い。私の友だと二人とも付き合ったし、家に毎日毎日違う女が入れ替わり立ち代り行き来する。やくざというのは、自分の兄貴に憧れて、喋り方から服装、好きな歌、生き方、女の扱い方、何から何まで真似をしようとする、男が男に惚れてやくざになるというけど、ある意味そのとおりだと思った。そんな兄貴を私も見ていたので、佑一がやくざは女がいっぱいいる事がかっこいいと思っているのが本とに迷惑な話だった。確かに飲みに行ってどこの店にも自分の女といえる女がいるのはかっこいいのかもしれない。もてる男はかっこいい。ほかの組織の人間からも一目をおかれる。私もそれは納得ができる。でも、それはあくまで自分の嫁といわれる一人の女を幸せにして、ある程度の座布団まで言ったら言えることだ。一人の女も幸せにしていないで、座布団も一番下。そんなんで兄貴のまねをしていたって何もかっこよくない。佑一にとって自分が一番であるという自信はあった。でも自分だけだという自信は最後まで持てなかった。

自分はいいのに人一倍やきもち焼きな佑一と付き合ったことがきっかけで、ちょうど水商売をやめたかった私は、飲食店に勤めを変えた。朝佑一が事務所に行く日は10時には佑一を起こして、服を渡してドアの所まで見送る。そこから自分のうちに帰って、母と昼食をとり、準備をして仕事に行く。終わるとコンビニで買い物をして佑一のうちに帰る。大体は私のほうが早く帰って、佑一の帰りを待つ。たまに祐一が先に帰っていたり、私が少し飲んでいると、ひやひやもんだ。何とか言い訳を考えて、そーっとドアを開ける。機嫌がよければいいけど。悪いとその日は大体一言も話さず一日が終わる。

O型だった祐一は次の日になって、何かいいことがあると前の日のことは引きづらない人。だから、そんなに大喧嘩にはならなかった。

そんな毎日が淡々と過ぎていった。何も無い毎日だからこそ祐一がかけがえの無い存在になっていったんだと思う。本当に祐一が全てだった。そのときは誰にもそんなことを言わなかったけど、きっとすべてだったんだと思う。依存しているとかそう言う事ではなくて、別に祐一がいないと死んでしまうとか、そういうことではない。あなたのために死ねるとかそういうことでもない。ただ一緒に入れること、一緒に寝ること、そばに入れることが嬉しくて嬉しくて仕方なかった。ほんとに本とに大好きだった。




「あなたと過ごす毎日が、

        幸せで幸せで、これ以上の幸せは無いと思った。」

  

























浮気・・・

隠し事が下手だった。男は隠してるつもりでも女は直感で分かる。よほど鈍感な女でなければ、これは間違いない。

明らかに祐一の様子がおかしくなったのは付き合って半年ほどたったとき。やたら喧嘩を吹っかけてくる。疲れたといって夜すぐに寝る。うちにいるときの電話やメールがやたら多い。職業柄、電話には凄く敏感になっていなければいけないから、マナーモードにするといった普通の男がしようとするようなことはできない。そのときは、確か大塚愛の着うたが浮気相手だったのだと思う・・・いや間違いない。そのせいで大塚愛には何の恨みも無いが、私は大塚愛が大嫌いだ。

ある日、帰ってくると同時に意味の分からない喧嘩を吹っかけられた。

「今日は事務所で寝るから勝手にしろ!」

「どうせ女とところに行くんでしょ!」

怪しんでいた私は思わずこんなことを言ってしまったのだ。余計にかっとさせてしまったのか、少し動揺した様子で出て行った。事務所はうちから車で5分くらいの所だったから、見に行こうと思えばいけた。でもできなかった。本当のことを知るのが怖かった。その日は一睡もできなかった。

 次の日から、何も変わらないけど何かがおかしい毎日が続いた。祐一の帰りが少し遅いだけで気が狂うような気持ちになった。リストカットもどきのような事もした。

(何がいけないの)

(どうしたら自分の所に戻ってきてくれるの)

毎日おんなじことを考えながらすごした。

 あるとき、3日連続で晩御飯を一緒に食べに行った。やたらと優しい祐一。その女と終わったんだ。一瞬で分かった。今思えばおかしなことだけど、嬉しくて嬉しくて祐一がほかの女と寝たことなんてどうでもいいぐらい嬉しかった。

このあたりから、私の恋愛に対する感覚はおかしくなり始めたのかもしれない。

 私が、会社の慰安旅行で数日間出掛けたときの事。帰ってきた私は、偶然というか、いいや、見てやろうと思って祐一の携帯を見た。

「あの日、お前の彼女が家に来たことにして!」

最初は意味が分からなかったが、すぐに発覚。家に飾ってあった二人の写真も、私の荷物も隠してあった。いくらなんでもルール違反だと思った。

泣きながら一人でベットカバーもシーツも取り外して窓から捨てた。こんな所で寝れない。そして一言祐一に言った。

「二人の家に入れるのだけはやめて」

なんて、寛容な女だろう。ありえない。でもそれが当たり前の世界だった。兄貴に相談しても、お前が一番なのは誰が見ても分かるから我慢するしかない。そんな答えだけだった。

不思議だったのは、私も寂しいから、悔しいからやり返してやろうと思わなかったこと。祐一以外の男といる意味を私には見出すことができなかった。

ほかの女と会わないで欲しい

ほかの女と寝ないで欲しい

ほかの女を家に入れないで欲しい



私にばれないようにして欲しい

一度下げたラインはどこまでも落ちていく。一度許したら許し続けなければいけない。私には別れることができなかった。浮気に腹を立てることに疲れていた。でもひとつ言えることは、やくざにとって本気の女、浮気の女は雲泥の差である。これだけは言える。・・・・いやそう思いたい。




「祐一にとっては遊びでも、

      私にとっては毎日が地獄だった

           その女を殺してやりたいと思った・・・。」







喧嘩・・・

喧嘩なんて、どこのカップルにもある。ないほうがおかしい。始めは言い合いから始まって喋らない時間が過ぎ、いつの間にかどちらかが喋りかけて、仲直りする。そんな喧嘩が普通だと思っていた。

私の誕生日のとき。居酒屋でお祝いをしてもらい泥酔した私は祐一に迎えに来てもらい、ふらふらと一緒に家へと帰った。

「おまえ、こっちは待ってるんだからそんなに飲むな!!」

「みんなお祝いしてくれたんだからしょうがないでしょ」

「お前、何が一番大切なんだよ?!」

怒鳴りつける祐一にいってはいけないことを言ってしまった。

「あんたのせいで幸せな誕生日が最悪になった」


その瞬間、右ほほに鈍い痛みを感じた。馬乗りになった祐一に死ぬほど殴られた。怖くて怖くてどうしようもなかった。こんなに男は女のことを殴れるんだと思いながら、必死に許しを乞いた。それでも真っ白になっている祐一には無意味だった。裸足で逃げ出し、それでも追いかけてくる祐一に捕まえられては殴られた。結局は家に連れ戻され、隅でがたがたと震えているのが精一杯だった。冷静さを取り戻した祐一は「ごめんごめん・・・」となきながら謝っていた。そのまま二人でベットに行った。何でこんなことになったんだろうと思いながらも、一緒にここにいることが幸せだった。強く抱いてくれる祐一の手を離したくないと思った。

 次の日私は誰かも分からないような顔で、そして39度の熱を持った体で仕事に行った。酔っ払って階段から落ちました・・・ドラマでも使われないようなありがちな嘘で言い訳をした。

優しかった。当分の間は優しかった。

 こんなこともあった。男友達から電話が鳴った。「誰だ?」と聞かれ「友達」と答えた。確かにこの人は私に好意を持ってくれていた。だから祐一の前で電話に出ることが出来なかった。

「何で出ないんだよ」

「出たくないから・・・祐一だってよく電話で無いじゃん」

動揺した私はつい言ってしまったが、この一言が良くなかった。自分は良くても女は駄目!そんな基本的なことを忘れていた!

その男に電話され、殺されると察知した私は、ゴルフクラブを振りかざした祐一から逃げ出した。何発か食らって、真冬に裸足にで半そででタクシー会社に駆け込んだ。傷だらけの私は実家にも帰れず友達のうちにかくまって貰った。もうここまでくると、愛や恋やなんて言ってられない。警察に行くと思った祐一は舎弟のうちに逃げてたらしい。殴らないという約束をして、結局うちに戻った。今考えると、結構私も怖いもの知らずだ。何で同じことを何度も繰り返していたんだろう・・・。

殴った男は優しくなる。そんなことを誰もが本で読んだことがあるだろう。

(馬鹿じゃないの・・そんなんでだまされる女は・・)

そう思っていたが、その優しさにだまされているんじゃない。殴られた女は分かるかもしれないが、男が殴るのは最低だし、力が強いものが弱いものをねじ伏せるのも最低だ。そんなことは分かっている。あの人は私のことを愛してるから殴るんだ、そんな安っぽいことも言わない。男は愛していない女でも殴れる。でしょ?

自分の思い通りにならないから殴るだけ。言葉巧みな女は男の癇に障る言葉を言い過ぎる。負けず嫌いな女ほど男をカットさせる。女にとっての涙が卑怯な場合もあるように、男の暴力もおんなじだ。自分に不利になって、口で勝てないと思ったら殴るだけ。ただそれだけ。暴力に理由も結果も愛も憎しみも何もない。体の傷なんていつかは治る。

 しかし、浮気とおんなじなのは、一度許したら何度も繰り返される。さっきも書いたけど、

殴らないで欲しい

傷が残るほど殴らないで欲しい

病院に行かなければいけないほど殴らないで



死ぬまで殴らないで

一度下げたラインはやはりどこまでも落ちていく。

それから、何度となく殴られた・・でもその度に感じるものは少なくなっていった。次の日に普通に笑っている自分が今となっては怖い。暴力が毎日という境遇の人もいると思うが、それとは違うからまたたちが悪い。そうなったらそれを理由に別れようとか逃げようと思うかもしれない。日常にならない程度の暴力は、日常になる・・・。

殴られてもそれ以上の幸せが、すべてを無かった事にさせてしまう。

そのうち、殴られるのはもしかしたら自分が悪いんじゃないかという錯覚にまで陥ってしまう。殴る男は、結局その頻度は変わったとしても、一生殴るのだと思う。でも今でも思うのは、必ずしも殴る男がいけないと私は思わない。こんなこと声を大にしていったら「馬鹿じゃないの」って言われそうだけど・・・

「私は殴る男なんて論外だわ!」と簡単に言う女がいるが、その体の痛み・心の痛み、何も分からないくせにそんな事言うなよ思ってしまう。

あー怖い怖い。




「祐一、殴られてるときは、本当に本当に怖かった!!

                     次の日本当に痛かった!!」























幸せ・・・

いやなことばかりではもちろん無い。幸せなこともたくさんあった。普通の恋愛と一緒。一緒にご飯を食べにいったり、旅行に行ったり、プレゼントをもらったり。

ただ悲惨なことが普通の恋愛に勝るから、ちょっとしたことで、本当に幸せだなと感じられる。この考えは間違っていないと思う。下を見たらよくないのかもしれないが、この世の中には、ご飯も食べられない恵まれない人がたくさんいる。だから毎日のほんの些細なことに感謝して生きていかなければいけないと思う。ちょっと話は違うかもしれないけど・・・。

 やくざというのは、どこにいっても「かた」を気にする。要するにかっこ付けと言うことだ。服を買いに行けば、自分にも女にも高いものを安そうに買ってくれる。ご飯を食べに行けばこんなに食べきれないというほど頼んでくれる。飲みに行けば派手な飲み方をする。そりゃ若い女にとっては、これほど無いくらいの優越感を味わうことができる。でもここで間違えてはいけないのはやくざと付き合ってこういうことをしてもらえるのは付き合い始めか、もしくは遊びの女。ほんとの女は家にいて、お金が無いといえば渡し、服が無いといえば買いに行く。

でもでも・・・本当に心のそこから大切と思われる女になれば、最大限の愛をくれる。それは人それぞれ感じ方が違うかもしれないけど、絶対に。もし私がだまされてたんだとすれば祐一は凄い男だ。言葉では決して「お前が一番」とか、「愛してる」なんて言葉は言わなかったけど、極上の愛をくれた。どうしてそう思えたんだろう・・・今これを書きながら考えてみた。うまい結論が出てこない。多分、外で気を張り、かっこつけて生きている人が、自分にはかっこ悪いところ、弱い所、愚痴、泣き言を見せてくれた。それが一番だったと思う。私にどんな「自分」を見せても愛してくれると思っていたと思う。反対に私は、何があっても私を「一番の女」だと思っていてくれると思っていた。ある意味普通の人には負けないくらいの不思議な根拠の無い自信が二人にはあったと思う。

 何を持って幸せとするか・・・それは一人一人感覚も次元も違って、お金があれば幸せという人もいれば、お金が無くても愛があれば幸せと思える人もいるだろう。私は、お金がまったく無いという状況に生まれてこの方陥ったことが無かった。だから言えるのかもしれないが・・・祐一との生活の中で決してお金が十分にあったわけではない。でも幸せだった。あの人がいてくれることが、この世に存在して私と同じ時間を共有していてくれることだけで、幸せを感じられた。所詮別れが来たということは、ままごとのような恋愛だったのかもしれないが、心も体も満たされていた。恋愛を一度でも経験したことのある人は共感してくれるかもしれないが、これ以上好きになる人はこれから一生出来ない、そう思う。今の私はまさにそうだ。これからの恋愛で、あんなに悲惨な経験も、あんなに感情むき出しの喧嘩も、あんなに素直に好きといえることも、何の見返りも期待しない無償の愛も、あんなに極上の幸せも・・・もう感じることは出来ないような気がする。きっとできない。

 この先に幸せな恋愛を出来ない、結婚も一生しない、そう言う訳ではない。きっと誰かと出会いまた恋をして結婚して子供を生むのかもしれない。でも、あのときのような幸せはもう無いと思う・・・。




「一番幸せなときはいつだったんだろう・・・

          佑一と過ごした2年間だったな・・・。」













友達・家族・・・

 大切なものはいつもそこにあると、そのありがたみを忘れてしまう。両親の愛、友達の愛私は、そのことに気がつかなかった。

 一年半ぐらい付き合ったころ

「今年の終わりくらいに結婚しようか」

「・・・!!」

嬉しかった。涙が出るくらい嬉しかった。祐一の「嫁」になれる。浮気をいくらしても私には「嫁」という自信が持てる。それから、一人になったとき仲のいい友達にメールを打った。二人に・・・。

(私、佑一と結婚しようと思う。凄くうれしいし凄く興奮してる。でも、やくざと結婚・・・客観的にどう思う?冷静に考えられないから意見して欲しい)

すぐに携帯がなった。


(そうしたいなら、親も親戚もほとんどの友達も切る覚悟をしないといけない。あんたがそこまでの覚悟が出来てるなら私は全力で応援する。でもね、考えてるほど甘いものじゃないし、ちゃんと10年後・20年後が見える相手なのかをしっかり考えて)


(馬鹿じゃないの!?そんなことしたら、私はあんたと縁を切るから)


こんな二つのメールが返ってきた。

どちらも私のことを真剣に考えてくれた上での意見だと思った。ただ、最初の意見の子はやくざと付き合った経験もあったし、結婚を考えたこともあった。だから私のことを全否定すれば、自分の過去さえも否定することになってしまう。

 人に相談するときは大体自分の中で答えというものは決まっている。このときの私の正直な気持ちは、結婚したい、この人以外に結婚なんて考えられない・・・でも、結婚できない。これが本音。私には両親を説得する自身も、家を捨てて一緒になる覚悟も、両親を欺いてやくざということを隠して結婚するしたたかさも持ち合わせていなかった。祐一にはいえなかった・・・。そのことを言って別れを切り出されるのが怖かったから・・・。毎日のように「子供が欲しい、子供が欲しい」といってくれる佑一に死んでもそんなことは言えなかった。祐一は、自分のお母さんにもいつの間にかそんな話をしてくれていた。こんな幸せだと思えることはもうないかと思うくらい幸せだった。もし今の今まで付き合っていたら、もしかして私はどれだけ両親を説得するのに時間がかかっても、多くの友人に白い目で見られようと、結婚していたかもしれない。この手にわが子を抱いていたかもしれない。

 親殺し・子殺しが多い今の世の中、私はやはり両親のことが心から大切。きっと親に結婚を反対される人はたくさんいると思う。その辛さ痛いほど分かる。でも悩んでも結局同じ。多少の反対ならどうにかなっても、どうにもならない事情なら、薄情かもしれないがどちらかを選ぶしかない。仕方が無い・・・。

仕方ない・・・自分にそう言い聞かせるしかない。男は、もしかしたらこの先同じくらいすきになれる人が出来るかもしれない。今はそんな風に思えないけどゼロではない。

 親は変えられない。死ぬまで親・・・。




「あなたはよく、ほんとに好きなら結婚できる、そう言ったね。

                    はっきりしなくてごめん。 

                       本とにごめん・・・。怖かったんだ。」









別れ・・・

 そんな毎日が当たり前のように続いていた。何度も別れ何度も寄りを戻して、この恋は永遠に続くものだと思っていた。終わりが見えなかった。でも・・・10年後もこのままのような気がしていた。このままというのは、何も変わらないということ。喧嘩して、泣いて別れてよりを戻して、そんなことを考えていたら、私は祐一に会わずに家を出た。何が不満だったのか今になっても分からない。涙も出なかった。でも、祐一の帰りを待ち、浮気されても我慢し、それより何より、自分が祐一のことを好きすぎて将来が無いかもしれないということを考えるのに疲れてしまったのかもしれない。祐一からはメールしか入らなかった。祐一は「戻って来い」といってくれた。そのとき初めて涙がとめどなく落ちた。でも、どうしても戻れなかった。このまま戻れば、また前のように幸せになれるのは分かっていたけど、怖かった。祐一だけの生活の戻るのが怖かった。

3ヵ月後、祐一に会った。何ヶ月ぶりにあって、何ヶ月ぶりに抱かれ涙が止まらなかった。これは愛情なのか、惰性なのか、情なのか・・・。でもそんなことどうでも良かった。ただ嬉しかった。女の存在も知らずに私は浮かれていた。

 それから、一週間に2,3回祐一に会いに行った。女のものもあったが気にはならなかった。まだ自分が一番という変な自信が私にはあったから・・・。不思議と二人に、戻ろうとかそんな言葉は無かった。今思えばもしかしたら都合のいい女だったかもしれないが、でもでもあの人は私にしか格好悪い自分は見せられなかったんだと思う。それが私に対する愛だったのかは分からないが、安らげる場所であったことは確かだと思う。私も居心地が良かった。今までよりも縛られず、今までよりも祐一は優しい。そんな幸せも長くは続かなかった。祐一が捕まったと風のうわさで聞いた。まずそのことで一番に知らされなかったことで、私はショックを受けていた。そのうち祐一の兄貴分という人から連絡があり、話に行った。やくざは、自分の男が捕まればその間の家の家賃、差し入れ、面会すべて女がやらなければいけない。どれだけ女がいてもそれをやらせてもらえる女がいわば本命とされる。私にその役目は回ってこなかった。ほかの女がやることになり兄貴は言った。

「お前の存在がもう少し速く分かっていればお前にやらせた」

その兄貴もずっと中に入ってて、祐一のここ2,3年の近況を知らなかった。仕方が無いと思った。そこで、「私がやります」といって、すべてをやることも出来たかもしれないが、果たして祐一はそれを望んでいるのかも分からなかったし、そのときは、ほかの女が佑一のことを全部やっているという事実に耐え切れなかった。もう、自分が一番だという自信はなかった。

その女がうらやましかった。

女が毎日面会に言ってるので私は逢いにいけない。毎日毎日、私がやりたい、どうして私じゃないのと悔しさでいっぱいだった。へんな女の意地だったのかもしれない。別れてからも持っていた祐一の部屋の合鍵も返すことになり、祐一の部屋においてあった私の荷物も、その女に返された・・・。惨めだった。どんな女かは知らないが、そんな女に負ける気はしなかった。でももしかしたら祐一は凄くほれているのかもしれない・・・そしたら私はでしゃばったところでただの馬鹿女だ。

祐一に何度か手紙を出した。それしかなす術が無かった。祐一からの返事を毎日毎日ポストに見に行っては、ため息だけつき部屋に戻る。そんな毎日が続き、結局・・・・・返事は来なかった。

3ヵ月後、祐一に執行猶予がつき出てくることになったのだ!出てきてその日に電話がなった!着信画面を見て私は泣き崩れた。

「はい・・・。」

「いろいろ心配かけてごめんな。手紙読んでたよ。ちゃんと考えるから。これからのこと。でも今の女には義理があるから・・・。」


終わった・・・すべてが終わった。

祐一はやくざにしては心が優しすぎる。女にひどいことが出来ない。義理が愛に変わる。そんな祐一の性格を誰よりも知っている私は、もう私と祐一に先はないとそのとき思った。

私の負けだな。

馬鹿女!ってその女の事思ってたけど、私が負けた。

悔しいな。




「祐一、捕まってるとき

     私のことほんの少しは思い出してくれた・・・?

              私は、思い出すことなんて無かった。 

                   だって一日も忘れたことが無かったから」










祐一へ・・・

 あなたにもらった指輪はまだはずせずにいます。早く忘れたい、早く違う人を好きになりたい。そう思って毎日飲んで毎日泣いていたときもありました。でも、もう忘れようとする努力をするのはやめました。嬉しいこと、悲しいこと、有線から流れる音楽、テレビ番組、漫画、どんなこともすべてあなたにつながってしまうんだ。だから忘れられるわけが無いんです。

 私がほかの人と付き合ったら、あなたは嫉妬してくれるかな?私の時間はもうあなたのものじゃないと分かったら、ちょっとはやきもちやいてくれるかな?一緒にすごした時間は、私の中でまだきらきら輝いていて、まぶしくてまぶしくて、私は前が見えません。その輝きもきっとだんだんと落ち着いて、いぶし銀のようになったら、私はしっかり前を向いて歩いていこうと思うよ。まだ、酔っ払うとメール打っちゃったりして迷惑かけると思うけど・・・許してね。あんなにも誰かを好きになって、あんなにも素直に感情をぶつけ合って、あんなにも誰かのために何かをしてあげたいと思えることは、もう無いかもしれないなあ・・・。

 私は、正直相手が幸せになってくれればそれでいい・・なんて考えは、ありえないと思ってた。一緒に幸せになるんじゃなくてほかの相手でもいいから、ただ相手の幸せを願うなんて出来ないと思ってた。でも今はなんとなく、少しだけだけど分かるような気がする。あなたがこれから一緒に生きていく人と、幸せになれればいい。きっと結婚するなんて話聞いたら、凄く泣いて泣いて、3日ぐらいご飯も食べられなくなっちゃうと思うけど、きっと心から、幸せを願えるようになると思う。そういう女になりたい。あなたと出会えたことを感謝して、ほかの誰からも認められなかったこの恋愛を否定したくない。

ありがとう。そんな陳腐な言葉じゃ伝わらないけど、その言葉が一番適切かな。大好き・愛してる・今でも好き・・・うーん、やっぱりどれもぴんとこないな。でもね、今でも思うのはこんなに愛してたのは私しかいないと思う。その自信が自分を強くさせる。自分を大きくさせてくれると思う。

祐一、たくさんの涙は無駄じゃなかったし、たくさん抱き合ったことも絶対に忘れないよ。だから、あなたのことを今好きなその人を泣かせないでください。人に愛されるという奇跡を大切にしてください。この広い世界でその一人に出会えるというその偶然を、奇跡をもう一度考えてください。私ももう一度そんな出会いをするために、頑張って前を向きたい。その強さをください。


 

















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― 新着の感想 ―
[一言] 文章の間違いが多いかな? 後、これは連載にした方が物語りに厚みが出たと思います。
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