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この想いが届く為に、僕は  作者: 逆張りオタクの天照大御神


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3/3

第三章 届かない、この想い


 今日も僕は、彼女に想いを伝える為に学校に来る。


 誰も彼女に手を差し伸べない、誰も彼女を救おうとしないのであれば僕が救うしかない。


(来て、くれるかな…)


 今日で10度目だ、流石に彼女がいくら優しいとは言えど、来てくれる保証はない。


 仏の顔は3度までと言うが、彼女の顔は一体何度までなのだろうか。


 少し気になる所ではあるが、そんな事を考えている時に、いつも通りの時間に足音が鳴る。


(来てくれたんだ…!)


 堪らなく嬉しくなった僕が振り返ると、そこに居たのは彼女では無かった。


「……は?」


 僕の前に居るのは、警官の格好をした不審者だった。


「君が、和我真々(わがまま)君だね」

 

「そうですけど、ここ学校の敷地内ですよ」


「知っているし、私達は学校に許可を取ってここに居る」


「い、いや、だからって警官の格好を真似している人は不審者なことに変わりは無いでしょ!」


「…悪いが、これはコスプレじゃない」


「は?」


「私達は正真正銘の警察官だ」


 そう言うと、不審者二人は左胸の外ポケットから偽物の警察手帳を出して見せてきた。


「…っ!本物なら、その手帳を見せてくださいよ!」


 本物なら躊躇なく、手帳を見せられるはずだ。


「これで良いか?」


「なっ…!?」


 不審者二人は何の躊躇も無く、艶の無い茶色と言うよりチョコレートに近い色合い、写真部分はプラスチック製で出来た手帳を見せてくる。 


「これで満足か?」


「嘘だ、貴方達が警察のはずがない!だったら、何で彼女を―――!」


 見殺しにし続けてきた、と言うのだ。


地愛(じあい)芽ヶ美(めがみ)さん本人と家族、そして君のクラスメイトや学校の先生方への暴行罪、脅迫及び殺人罪で逮捕する」


 不審者から突きつけられた紙には『告訴状』と書いてある。そこには確かに、僕の名前と年齢が書かれていた。


「な、んで、僕が…?」


「記憶喪失の()()をしても無駄だ、君の犯行はあらゆる人が目撃している」


「捕まえるのに、苦労したよ。家には居ないし、君と被害者が通っていた学校や周囲にも姿形すら無かったからね」


「だが、ようやく見つけれたよ。まさか、被害者が()()()()直前まで通っていた学校の放課後に姿を現しているとはね」


「そ、んな、嘘だ…」


 有り得ない、僕は彼女を殺してなんかいない。殺したのは、周りの奴らだ。


 何もせず、見向きもせず、見て見ぬフリをし続けたあいつらが彼女を殺しのだ。


「いくら未成年と言えど、この犯行は目に余る。無期刑は確定だろう」


「来い、君には罪を償う必要性がある」


「…っ!ふざけるな!」


「暴れるな、抵抗されると私達も手を出さざるを得なくなる」


「うるさい!誰も彼女を救おうとしなかった!僕がいくら言おうとも、何をしようとも、()()()()()()()()()!誰も彼女を救おうとしなかった!」


 あの日、僕がテスト中に堕としてしまった消しゴムを先生に見つからないように、拾ってくれた優しい彼女。


 それ以来、僕は彼女に恋焦がれたが彼女の優しさを理解している人は見当たらなかった。


 何故、誰も彼女の優しさを理解していないのか疑問だった僕は考えに考えた結果、世界の人間が彼女以上の優しさを持つからだと考える。


 だが、だからと言って僕は納得出来る程、大人でも無く子供だ。


 だから僕は彼女をイジメ、彼女の存在価値を皆に知らしめようとした。


 彼女は優しい、非力な僕に対しても暴力を振るわない。

 

 例え綺麗な顔が誰か判別出来なくなるぐらい蹴ろうとも、加工されやってもいない犯罪をしている写真をバラ撒かれようとも、縛りつけられ慰め者にされようとも、全身を焼かれようとも、プールで溺れる彼女の首を絞めても、彼女は抵抗をしなかった。


 それは何故か分かるだろうか?それは一重に、彼女が優しいからだ。


 にも関わらず、誰も彼女を助けようとしない。こんなにも優しい人がイジメを受けていると言うのにだ。


 可笑しな話だとは思わないだろうか、優しい彼女が大した取り柄の無い僕のような人間に、好き放題されているのに誰も、彼女を救おうとしない。


 仲の良い友達も、クラスメイト達も皆、誰も僕を通報しようともせず、ただ傍観(ぼうかん)しているだけ。


 勿論、声は掛けたが皆、自分が報復されるのではないかと恐れ、涙を流しながら傍観に(てっ)する。


 ここで初めて僕は、人間が恐ろしく醜いものだと知った。


 吐き気がした、ここまでされても尚、抵抗しない彼女を自分の身の可愛さに助けを求められようとも、拒絶する姿に。


 それが許せず、僕の彼女への想い(イジメ)拍車(はくしゃ)を掛けた。


 誰も彼女の優しさを理解しないのなら、もっと大きな悪を成し、巨悪すら許す慈愛の女神であることを証明しよう。


 最初は彼女の家族を脅し、彼女が巨悪であることを植え付けた。


 こうすることで、真実を知った家族が彼女をより大事にし、より家族の絆が深まると考えたからだ。


 だが、またしても僕の考えは間違っており、家族は彼女を追い出してしまった。


 唯一救いだったのは、遠い親戚の方が彼女の優しさを理解していて、引き取ってくれたことだ。


 しかし、これだけでは足りないのだ。一人ではなく、もっと多くの人に、彼女の優しさを理解して欲しいからだ。

 

 そして問題も多かった。まず、誰も僕が悪であることに気が付かないことだ。


 彼女の友人にも、先生達にも同じことをしたのだが、誰も救おうとしなかった。


 何故だ、何故、彼女の優しさに気が付いてくれないのか、僕はサボテン並に足りない頭を使って必死に考えた。


 考えに考えた末、どうしても気が付いて欲しかった僕は、ある一つのことを考えつく。


 殺人だ、家族も友人も先生達も殺すことで周囲に僕が悪であることを知らしめることで、通報しなくてはならない。


 強迫観念に近い形で、悪であることに気が付かせることで彼女の善性を暴き、皆に知って貰おうとした。


 だがそれでも、誰も僕を通報しなかった。勿論、ナイフを使い脅して通報させることはしたが、誰もが出来ないと涙を流しながら拒んだ。


 泣きたいのは彼女の方だろうに、彼女の気持ちも考えずに泣く愚かなクラスメイトや先生達が、どうしようもない巨悪に見えて、制裁の一手を加え続けた。


 その結果がこれだ。その結果が、彼女を死に追いやったのだ。

 

 彼女は10日前の今日、この場所で首吊り自殺を図った。僕は悲しくて悲しくて、仕方がない。


 だって結局僕には彼女を救えなかったのだ、彼女と言う善を認知して欲しかった行為は、僕が死刑囚になるだけの粗末な結果となった。


 もし少しでも、誰かが彼女の優しさを知っていれば、彼女を救おうと動けば、彼女を大事に思っているのなら、こんな事にはならなかったと言うのに。


「き、君!一体、何を!」


「こんな世界、クソくらえだ!」


 もう用はない、この世界にも、彼女を救えなかった僕にも。


(でも、最後に君の顔を見ながら死ねるのなら、生まれてきた意味があるのかな…)


「な、何て奴だ…」


「何をぼーっとしてる!救急車を呼べ、俺は応急処置をする!」


「分かりました!」


「何故だ、何故今なんだ!」


「場所は佐津仁(さつじん)防小有(ぼうこう)高等学校5-6-3です!」


「どうして、ここで自殺をするんだ!」


 こうして僕は地縛霊と化した彼女に、殺意と憎しみに溢れた視線を送られながら、17年の人生に幕を閉じた。


没案 「彼女」の名前 比嘉ひが 衣紗いしゃ

理由 倫理的にどうなのかと思ったので。

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