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鬼畜乙女ゲームの悪役令息の婚約者に転生した話  作者: 焼きそばこっこ


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《チャプター1:小鳥の森》②


「お、お嬢様ぁ!市街へ僕1人だけを連れていくなんて危険すぎますよぉ!」

「黙ってください。ケルト。それからお嬢様と呼ばないで。今の私は『セレナ』です。」

 

 拝啓 私の両親

私は今市民街に来ています。理由はお肉が食べたかったからです。最近の街のお肉はとってもジューシーで、特に串焼きは絶品だと公爵家の使用人たちの間でも有名なのです。使用人広間の天井に張り付いて聞き耳を立てたのですから間違いありません。

 …というのは建前です。もちろん私の目的は第2王妃の毒の流通の証拠を得ること。

 第二王妃が街へ流通させている致死毒『天使の涙』。無味無臭で一滴でも体内に取り込めば一定間隔で心臓を締め付けていく呪いが付与され、2ヶ月ほどで死んでいく優れものです。時間をかけてゆっくりと体を蝕んでいくために誰も毒殺だと疑いもしません。 

 けれども、私は『天使の涙』の歯牙にかかったかどうかを見分ける方法を見つけたのです。それはまさに、魔法の《小鳥の森》でカイン殿下は母親が体調を崩し死んでいくまでの間、ずっと彼女のそばにいたからこそ気づけた事実。

「お嬢様ぁぁ…もう邸宅をでてから30分も経ちましたよぉ…。出店のご飯を食べる許可を…」

「まだ30分、の間違えですよ。ケルト。」

 全く…私とそう年も変わらず背丈も同じ程度なのに、この食い意地はどうなっているんですか。

「グルキュルクェクルルルルル…」

 ……咆哮。

「…なんですかケルト。先ほどのは…お腹の音ですか?」

 ケルトは少々不満げな顔をしながらこちらをみています。しょうがないですね…。

大通りに並ぶ屋台の数々。どれも目新しいものばかりで好奇心が掻き立てられます。ふと、鼻先に香ばしい匂いが漂いました。この匂いは…

「…お肉を食べにいくとしましょう。」

「はいいいいぃぃぃぃ!」

 先程までの気だるげな表情はどこへ行ったのやら。目を爛々と輝かせて方向もさし示していないというのに一直線に串焼きの店に向かって行きます。一応あなた私の護衛ですからね?

「おじさん。このお肉を2つくださいな。」

 主人の素敵な胸筋をお持ちなおじさんが返事をしました。

「はいよ。お嬢ちゃん。3000ラブね。」


  …この世界に慣れたと言っても、これだけはいまだに慣れませんね。なんですか。loveが通貨単位って。ちなみに100000ラブは1ハートです。タイトル名といい、製作者センスどうなっているんですか。

 

「はい!3000ラブちょうどね!毎度あり!」


まぁ支払いますが。

 

「今から焼くから少し待っといてくれや!」

 あ、分厚いお肉の刺された串が、魔道具の上に乗せられましたね。鉄網の下から火炎魔法が展開される仕組みでしょう。

 では、あとは火にかけて待つだけというわけですか。惰性の極みですね。あ、間違えました。文明の利器というものですね。

 ……

 (5分後)

 ……

 (10分後)

 

「……、あの、おじさん。そんなにお肉を焼くのには時間が必要なんですか?」

「いや、お嬢ちゃん。それがな、どうも機械の調子が悪いようで火がつかねぇんだ。」

 支払いを終えてから3分後くらいからおじさんが葛藤していたのは見えていたんですが、健気なおじさんが可愛かったのでそのまま10分大人しく待っていたわけですが…。流石に助け舟が必要そうですね。ケルトのお腹も先ほどからまるでドラムのようになり続けていますし。


「魔印は何処にありますか?」

 魔印とは。この世界のすべての人が持ついわば指紋のようなもので、魔法の紋章です。体のどこに位置するか、どんな模様か、どれくらいの大きさか、人によって全く異なります。そして魔印は魔道具の制作にも用いられます。製作者が1つ1つ丁寧に作り上げた魔道具。その魔道具の構造、魔法の展開プロセスといった魔道具として成立するために必要な情報が魔印に全て蓄えられているのです。要するに魔道具の不調は魔印の不調、つまり損傷なのです。


 「た、確か…網と発火装置の間の棒に記されてた気が…」


確かに。魔印がありますね。でしたら、さっさと終わらせて美味しいお肉を食べることとしましょう。


鑑定(サーチ)。」

 損傷箇所は一件。燃焼プロセスとスイッチを繋げる回線に不具合があったようです。大方スイッチを何度も押したことによるプロセスエラーでしょう。でしたら処置は簡単です。回線の暗号を読み取り、損傷部分を周りの暗号記号に合わせる形で組み込めば…

調整(コントロール)。…完了です。」

「あ、あぁ…お嬢さん。ありがとう。」

「いえいえ。私はお肉が食べたいだけですので。(意:さっさと肉焼けや)」

「お、おう!任せとけ!とびきりうめぇ串焼きを作ってやるよ!」


 * * * * *


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