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元平民だった侯爵令嬢の、たった一つの願い  作者: 雲乃琳雨


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11、王宮の事件

 夜も更けたころ、街の中心部にある警備署ではアレンがニコニコしていた。ここは街の治安を担うところで、署員は街の住人や農村部からの出稼ぎの者でまかなわれている。署員がアレンの(もと)に集まってきた。


「ご結婚おめでとうございます」

「ありがとう。今日は久しぶりの夜警だ、よろしく頼む。私はいつものように一人で行動する」

「分かりました。助かります」


 アレンが入ると、二人が休めるのだ。


「これまでに、変わったところは?」

「特にありません」


 アレンの代で24時間の四交代制になり、治安はぐっと良くなった。それまでは、辺境の地に流入してくるならず者が後を絶たなかった。少人数の低予算でまかなわれていたので、魔法使いも治安維持に駆り出されていた。今は給与もいいので、領地一帯から署員が集まるようになっていた。


「遅番の者はご苦労」


 班長が引継ぎを終えると、アレンは勤務が終わった者をねぎらった。

 夜警が始まり、それぞれがランタンを持って担当区域に出て行った。外には街灯が灯っている。これには魔法石が使われていた。ランタンは経費節約のためだが、それぞれが予備の明かり用の魔法石を持っている。


 アレンも深夜の街を歩いた。空気は冷たかったが、以前とは違い今日は心地よく感じた。帰ればニナリアがいることで、心が温かかった。



 朝、アレンは椅子に座って、眠っているニナリアを見ていた。アレンは着替えをこの部屋で済ませたが、ニナリアは起きなかった。

 ニナリアは目を覚ますと、アレンに気が付いて驚いた。ひどい顔をしてなかったかなと心配になる。


「…お帰りなさい。お疲れ様でした」

「ここで寝たんだな」

「アレンの匂いがしないと落ち着かなくて。ははは…」


 ニナリアは照れて小さく笑う。アレンはニナリアをぎゅっと抱きしめた。


「今日はお前がしてくれるのを、楽しみにしていたぞ」

「は、はい、頑張ります」(でいいのか?)


 ニナリアは顔を赤くした。二人で朝食を取ると、ニナリアは念入りに歯磨きをした。セルマンには、仕事に少し遅れると伝えた。


「ごゆっくりしてくださいませ」

「はい…」


(なんか照れ臭いな)


 アレンが寝やすいように部屋のカーテンを閉めたままにした。アレンは枕を背に座り、ニナリアがアレンの上になった。アレンの体にキスをする。


(私がアレンの体にキスをするなんて、変な感じ)


「くすぐったいな」(猫に舐められてるみたいだ)


 アレンは少し笑った。ニナリアは恥ずかしくならないように、そのまま続けてアレンの上にまたがった。



「きれいだ」

「そんなこと、言われたことないです」

「他の奴は言わなくていい」


 痩せていたニナリアの体は、ここに来てから女性らしくふっくらしてきた。その変化にアレンはほっとしていた。


「ニナリア、こっちに来てキスをしてくれ」


 ニナリアは、アレンに深くキスをした。


「私がアレンを食べてるみたいです」

「そうだな、俺はお前に食べられた。……お前の気持ちが分かったな」


 二人はまたキスをし、今度は長くしていた。ニナリアはアレンの上で横になった。


「お前は軽くて、ちょうどいい重さだ」


 アレンはニナリアを抱きしめて、眠った。


(しまった。これは起きられない!)


 この後仕事をしようと思ったのに、ニナリアも結局寝てしまった。



 ニナリアが起きると、アレンは起きていた。


「もう! あの後仕事をするつもりだったんですよ」


 ニナリアはポカッとアレンを叩いた。


「お前が逃げられないように、わざと抱きしめて寝たんだ。アハハ」

「あなたはもう少し寝てください」

「分かった。夜が楽しみだ」

「いいえ、今日はもうしたから、夜はなしです」


 ニナリアは服を着ると部屋を出て行った。まだ昼前だった。



 そのころ王宮では事件が起きていた。


「キャー!! 王女様がお倒れに!!」


 侍女が叫び、アーシャ王女が昼食のテーブルで気を失っていた。王子が慌てて駆け付けた。数名の衛兵もあとに続いた。アーシャ王女の姿を見て顔面蒼白になる。


「どういうことだ!!」

「分かりません。お食事をされていて、突然お倒れに。お食事に、毒が入っていたのかもしれません…」


 侍女は自分の身を案じて震えた。王子は王女の様子を確認すると、あることに気が付いた。王子は連れてきた衛兵に命令する。


「侍女を拘束しろ。すぐに侍医を呼べ!」

「はい!」

「私はやっていません! 本当です。お願いです!」


 連れていかれる侍女は泣き叫んだ。衛兵が部屋の外で見張り、呼ばれた侍医が部屋に入っていった。


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