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あれは監禁じゃなかった事にしよう。そうしよう。

 再び目を覚ました私は、やはりキラキラした顔面に囲まれていて絶句した。いや、今度はどうした? この人達は誰?


 あれ? ヴィル様はどこへ行ってしまったの? あれ? やっぱり夢だった?? でも、この人達もキラキラしてるなぁ。



「ああ、ヴァイオレット! 目が覚めたのね。良かったわ」


 キラキラしたご婦人が泣きながら、私の手を握る。後ろに立つキラキラ紳士も、ご婦人の方に手を添え、目元を手で覆う…………。




 長い金の髪に、泣き腫らしてもなお美しい蒼い瞳をしたこの人は……私の母だ。後ろに立つシルバーグレーの髪に、今は見えないが翠の瞳だろう男の人は、父だろう。二人とも目の下の隈も酷いし、窶れて見える。




 そうか……うん。そっか……ヴァイオレット……うん。()()ヴァイオレットになったのか。



 という事はさっきの場面は、初恋の君ヴァイオレットが好き過ぎて監禁した所かな? それなら私のとる行動はただ一つ!!




「……違うの……ヴィル、フリード様は…………悪く……ない……の」



 ……うわぁ~ん!! 声が、声が全然出ない! 寝すぎてしまったからか、元々この娘()が喋らないからか分からないけれど、全然声にならないし、なんなら震えていて聞こえないかもしれない〜!

 推しを助けられない! ひいては、ヴァイオレット()を助けられなくなってしまうかもしれないもの! 頑張れヴァイオレット()!!



 どういう事なんだと、慌てふためく二人に一生懸命話す。あれは、遊んでいただけなのだと、そんなつもりじゃないんだと、たまたまなんだと支離滅裂だろうが話す。



 まだ子供だからなのか、声が上手く出ないからなのか分からないか、とにかく「あれは無理矢理の監禁じゃない」というニュアンスが伝わった様だった。


 むしろ本当は監禁だったんだから、この拙さはむしろラッキーだったかもしれない。


 話を聞いた父は慌ててお城に向かった。




「……ヴィルフリード様は?」

「今、お父様が説明に行ってくださったわ。ヴィオはゆっくり休むのよ」



 母に優しく撫でられ、静かに目を閉じる。



 ああ……私、本当にヴァイオレットなんだと、実感した。




 母は私が眠ったのだと思ったのか、優しく額にキスを一つして主治医と共に何か話ながら部屋を出て行った。



 目を閉じて考える事がたくさんある。


 目を閉じていると、だんだんと気持ちが落ちついてきた。それと共にヴァイオレットの記憶と私の記憶が、どちらもちゃんとあって、どちらも私なんだと分かる。




 この世界は乙女ゲームだ。それも異色の乙女ゲームだ。



 さらに悪い事に私は悪役王子の初恋の君で、ゲーム開始時期にはもう死んでいる、名前だけのモブだ。





 ヴィルフリード様は初恋の君(私)を好きな気持ちをもて余し、どうしていいのか分からなくなってしまう。これは生い立ちが関係しているのだが、とにかく帰宅しようとしたヴァイオレットが……帰ってしまう事が、嫌過ぎて薬を盛って監禁したって所か……な。


 うん。恐ろしい六歳児よね。ええ。ヤバみしか感じないわね。普通はね。私も最初はそう思ったよ? この乙女ゲームの悪役王子? 怖っ! ヤバって……。



 第一王子であるヴィルフリード様だけど、正妃様の子供ではない。権力のない側妃様の子供なせいでかなりお城で酷い扱いを受けているんだよね。

 周りからは愛されず、冷遇されていた……そんな中で出会って優しくしてくれたヴァイオレットに恋しちゃうんだよね。


 でも、どうしていいか分からないし、帰って会えなくなるのが嫌でウッカリ(?)監禁しようとしちゃうの。


 それが子供のやる事だから、すぐにバレて大目玉な上にヴァイオレットに会わせて貰えない様になっちゃうのよね。……まあ、当然だよね。



 そうしてさらに孤独を募らせ、天才的な頭脳と運動神経と魔法の才能を遺憾なく発揮したヤンデレに育つのよね(遠い目)。


 それもこれもヴァイオレットに会う為に、ヴァイオレットを手に入れる為にだったんだけど…………ここでヴァイオレットは乙女ゲームの舞台開始するよりも前に、死んでしまうのよ。


 行き場を失ったヤンデレの重すぎる愛の行く先が無くなって、さらにヴィル様は病んじゃうのよね……本当に可哀想。




 通常版だとヒロインに傷を癒やされ、ヤンデレ枠のハッピーエンド。




 でもね。ヴィル様のヤベー所は、ここじゃないの。事実は通常版では明かされなかったんだけど……。


 ヤンデレ枠のハッピーエンド……かと思わせておいて、インターネットの追加ダウンロードの18禁版ではその真相が明かされて、恐怖のコメントでネットが荒れてた。



 私は当時高校生だったから、追加コンテンツは買えなかったんだけど、ネット情報をまとめると……


 ヒロインをお飾りの王妃にして、さらに初恋の君の妹(ヒロインの同級生でヴァイオレットに顔が少し似てる)を監禁して、初恋の君の名前を呼びながら泣いているっていうのがヴィル様のトゥルーエンドらしいの。やってないから細かい所は分からないんだけど。



 そんな事ってある?



 辛い幼少期に、辛い結婚生活。ヴィル様の人生に幸せな時間は初恋の君である、ヴァイオレットと過ごしたほんの一瞬だけなの。



 さらに第二王子のエンドだと、ヴァイオレットの妹を監禁した事がバレて、王位継承権を剥奪されて幽閉されてしまうのよ!

 まぁ……そうじゃなきゃ、ヒロインの選んだ第二王子が優秀なヴィル様を押し退けて、王位につく事が出来ないもんね。


 ゲームのシナリオの為にヴィル様の不幸を用意したみたいで、本当に頭にきたんだよね。



 私は溺愛王子様とかヤンデレ位に好きだって言ってくれるキャラが好きだったんだけど……ヴィル様が可哀想過ぎて、もうツラい。



 因みに、メインヒーローはこの正妃様の息子である第二王子様なの。通常版の溺愛王子様エンドかと思いきや、追加版だとかなりのマザコン野郎で、ママ味を求められるらしい。こわっ!


 ……これ、追加版なぜ出したのよ。いや、そんな設定だったのかよ……ってコメントで溢れてた。けれど、それが話題になってかなり売れたらしいから、商売戦略的には正しかったのかもしれないけれど……ねぇ?








 

お付き合い頂きありがとうございます(〃´ω`〃)

続編でてびっくりする展開になってる時ありますよねぇ……わかります。

なぜそんな展開に……みたいな。


楽しくなります様に……(〃´ω`〃)

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