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悪役ヤンデレ王子の婚約者……あれ?私、死ぬのでは?  作者: 木村 巴


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11/12

婚約者としての対面

 あれから直ぐにヴィル様から手紙が届いたけれど、会えたのは二日後だった。

 貴族……めんどくさいね。


 でも、正式に二人で会うのって何気に初めてなのだ。いつもは大体お茶会で会って話す感じだったし、この前の監禁未遂の時も大きなお茶会後に連れていかれたという流れだったから。

 しかも、ちゃんと婚約者として会うのって初めてで緊張しちゃう! だって、推しだよ!! 緊張しちゃうよ! どんなファンサなの! しかも独り占めと書いて独占!! 独占ですよ?


 ほわぁぁ〜本当、生きてて良かった。鼻血出さない様に気をつけよう……。いや、死ぬのかな。こんな幸運ある?


 過労死かと思いきや、推しからの供給過多による出血死(しかも鼻血)とか……恥ずかしぬ。いや、本望なのか。尊死、極めり。



 などと、とんでもなく煩い脳内で嬉し、楽し、忙しい二日間を過ごし……もう前世で推しのイベント前の様に大忙しで過ごした。ハッキリ言って幸せだった。



 そして当日の朝はいつもの侍女さんが、いつも以上に可愛くセットしてくれた。


「お嬢様、今日を楽しみにしてらしたものね。私、頑張りました! はぁ~お嬢様は本当に可愛らしいです!」


 私もそう思う。ヴァイオレットは可愛い。ローズクォーツの瞳はピンクにキラキラしていて、零れそうに大きい。唇は何もしていないのに艶々している。ふんわりとしたラベンダー色の髪をハーフアップに編込み、ヴィル様から贈られた髪飾りを飾る。可愛らしい蝶や花の形に作られた宝石の髪飾りだ。最初は高そうな宝石に震えたけれど、「婚約者様に貰った物を付けて会った方が、喜ばれますよ」というアドバイスを聞いて直ぐに着けた。

 確かにヴィル様喜んでくれそう!!



 そんな事よりも、いざ家にきたヴィル様の美しさの破壊力よ。


 肩までかかるサラサラの銀の髪に、キラキラと煌めく金色の瞳。これ、黒魔法を施行している時は赤く染まるんだよね……なにそれ! めちゃくちゃカッコイイ!! 拗らせてるっぽいその設定、堪らなくイイ!(涙声)


「ヴァイオレット、今日は時間をとってくれてありがとう。もう体調は大丈夫?」


 ほわぁ〜まだ幼少期の少し高めのヴィル様のお声。頂きました。ありがとうございます。嬉しすぎて、ぷるぷる震えちゃう。


「はい。ご心配おかけしました」


 オートモードの様に勝手に答えてるけど、脳内はヴィル様の可愛さ美しさ優しさを讃える言葉が某動画投稿サイトみたいに右から左にワシャーと流れて止まらない。嬉しくて、草生えまくっていますよ。


「良かった」

 にっこり笑ってソファーにエスコートしてくれる紳士なお子様バージョンヴィル様……すごっ。公式にもないお宝だわ!



 こんなに格好良くて優しいヴィル様なのに、力の無い側妃の王子だからと王宮ではかなり冷遇されているんだよね。


 そして王様も見て見ぬふりをしているから……余計にみんな冷遇をしてくるんだよね。もうさ、そもそもそんな事なら側妃なんか娶らなきゃいいのに。


 何年も王妃様が懐妊する事がなくて、仕方がなく側妃様を娶るのはわかる。でも王子を生んだ側妃様に権力を持たせたく無かった王妃の派閥が、力の無い側妃様を選んだ……ここまでも、その後の操りやすさとか権力の関係でわかるよ!

 でも、無事王子が生まれたのにその後一年で王妃様も王子を生むとかさ! そのせいでヴィル様が理不尽な目にあうのって、おかしくない?


 ヴィル様は何も悪くないのに、監禁された上に命を狙われたり、毒殺されそうになったり……本当なんで? 終いにはヒロインがヴィル様以外を選ぶと悪役として断罪されちゃうとか……作者()はいないのか。


 絶対私が幸せにしてあげるからね。ヒロインと結ばれても幸せになれないんだもん。私が頑張って生き残らなくっちゃ。


 あ〜それにしてもヴィル様本当にカッコ可愛い。仄暗い笑顔じゃまだない、このヴィル様のまま一緒に生きて行きたい。いや、仄暗いヴィル様も好きだけど。出来ればそんな辛い思いをして欲しくない。


 そんな事を考えながら、中庭でお茶を楽しむ。ヴィル様もニコニコお茶をしているんだけど、たまにチラチラとこちらの様子を伺っている。どうしたんだろう。


「その髪飾り似合っているね。つけてくれて嬉しい」

 少し頬を染めて話すヴィル様の尊さよ! ヤバい私のライフは限りなくゼロだわ。


「ありがとうございます。とっても可愛いくて気にいってます」


 ふふふとお互いに笑いあう。


 なんてしあわせな時間なんだろう。そうして楽しく過ごしていると、ヴィル様は今度は少し何かを言い淀んでいる。


「あの……」


 よし、ここは心はお姉さんの私が聞いてあげなくちゃね。


「ヴィルフリード様、どうかしましたか?」


 そう問いかけるとガーンと顔に出ちゃうのもまた私を悶えさせる。


「この間は、ヴィル様と呼んでくれたのに……」



 小さな声のつぶやきをしっかりとキャッチしました! え? いいの? むしろ、呼びたかった!


「お呼びしてもいいですか?」

「うん。ぜひ呼んで欲しい……僕も呼んでいい?」

「はい! 家族はヴィオと……」

「じゃあ、僕はヴィーと呼んでもいい? 僕だけの特別な呼び方がいいな」


 特別! イイ!


「あの……嬉しいです」



 嬉し過ぎる……どうしよう。



 好き過ぎる推しからの愛称呼びを強請られるとか……嬉し過ぎるでしょ。恥ずかしくて下を向いていると、ヴィル様が椅子の隣に来て片膝をつく。


「僕も嬉しい。可愛い僕のヴィー。僕のお嫁さん。僕の事も呼んで?」


 この姿勢で、首を傾げるとか! この子悪魔め! 呼びますけど! 呼びたいですけど!


「……ヴィル……様」

「ありがとうヴィー。僕達二人ともヴィーで一緒だね。嬉しいな」

 

 本当にね!!! と叫び出したいのをギリギリ抑えて「うん」と頷く。


「ヴィー」

「はい。ヴィル様」


 という、名前をただ呼び合うだけを数回繰り返した。ただ……名前を呼びあっただけなのに、涙が出るほど嬉しかった。






 なんだここは天国か。







年度末&年度始めでバタバタしていました。更新遅れて申し訳ありません。

また一緒に楽しんでくださると嬉しいです。

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