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愛の重い男たち  作者: 岬葵
5/7

あの後

あの土砂崩れのあった次の日すぐに叔父が駆けつけてくれた。私はすぐに叔父に引き取られる事が決まり東京に引っ越す事になった。

神社ごと土砂に飲み込まれたため持ち出す荷物は何もない。ただ友人やお世話になった人には挨拶したいと叔父にお願いし1日だけ東京に行く日をずらしてもらった。弓道の先生である陸斗の両親に挨拶していると部屋から出てきた陸斗が私の手を引っ張り外に連れ出した。

「波瑠、、、あと数ヶ月で高校を卒業したら俺、東京の大学に行くから向こうで必ず会おう」

陸斗は私の両肩をつかんでハッキリした声で伝えてくれた。私は一度だけ頭を縦に動かした。

「約束だ!」

陸斗は真剣な顔で約束した。その後すぐ東京行きの電車に乗り渡瀬家にお世話になった。渡瀬家は叔父と叔母に私の2つ上の優里亜と1つ下の颯太の4人暮らしだ。優里亜は幼稚園から一貫の私立高校に通っておりお嬢様だ。颯太も中高一貫の某有名中学に通っていた。私はこの時期から編入できる住まいから通える公立中学に入学し春からは自分の学力で合格できる都立高校を受験する事になった。東京の学校の事は何もわからないので通える範囲の学校と自身の偏差値で何校か叔父に教えてもらい志望校にした。

幸い私の学力は高くこの地域では進学校と言われるような高校が志望校になった。私にとって学校なんてどこでも良かった。ただ叔父に言われる通りに進路を決めた。無事都立高校に入学できた私を叔父は抱き寄せて褒めた

「波瑠ちゃんは優秀だね!大学もこのままいけば国立を狙えるよ!」叔父が喜んでくれた事は嬉しかった。まだあの日の事を思うたび苦しみが溢れたが少しずつ東京の生活にも馴染み高校では仲の良い友人も何人かできた。その友人の1人が森元君だ、森元君は森田元が本当の名前だ。少し茶色がかった髪に童顔でかっこいいよりかわいいが似合うわんこ系男子だ。身長は平均より少し高いくらいだろうか。普通にモテる方だと思う。森元君と友達になったきっかけは森田元と名前を自己紹介で聞いた時、森の中に田んぼを作ったはじまりの人。田んぼの稲を収穫すると田んぼには何も無くなるから田をとって森元君!なんてぼんやり思った事を友人に話したらそれから森元君とみんなが呼ぶようになった。彼もそれがきっかけでクラスのみんなと仲良くなり私の友人の1人になった。順調に高校生活を過ごしていたが1年の終わり頃、叔父にすすめられ書いた作文コンクールが私を闇に突き落とした。防災意識を高めるために必要な事をテーマにした大規模なコンクールだった。はじめ私は内容的に辛い事を思い出すので書く事を嫌がった。ただ毎日のように叔父に「波瑠ちゃんは国語の成績がトップなんだから書くべきだよ」とか「実はJPテレビもコンクールに協賛してるから沢山の人に作文を出して欲しいんだ」などあの手この手で毎日いい寄られ衣食住の世話になっている後ろめたさで書く事を了承した。私の作文は見事に優秀賞を受賞した。叔父が喜ぶなら良かったと思っていたが叔父にはこのコンクールに私を出したかった本当の理由があったのだ。私の作文をきっかけにメディアはこぞって防災や災害についての特集を競うように放送した。当時の叔父は仕事と言えば地方ロケやローカル番組のサポートなどたいした番組はまかされていなかった。だから叔父はこの流行りを利用してあの日土砂崩れで起こっただれも見たことのない迫力のある映像を使い番組を作った。その番組はその年の最優秀番組賞となりマスコミ会で叔父は高く評価された。その功績でJPテレビで重役職についたのだ。

叔父が使ったあの映像は土砂に全て飲み込まれた数少ない天宮神社と家族の遺品の中の1つで神社に設置された防犯カメラだったと知ったのは国立大学に無事合格し、ずっと避けていた地元に帰った時にわかった真実だった。私は叔父に対して不信感をいだいた。複雑ではあるがあの作文のお陰でお金にも少し余裕ができ学費と生活費くらいはなんとかできた。だから高校を卒業してすぐ渡瀬家を出る事にしたのだ。

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