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愛の重い男たち  作者: 岬葵
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雨上がり2

あの不気味な地響きは不規則に鳴り響いている。今度はドーンとものすごい音が聞こえその場で青年と耳を塞いでしゃがみこむ。大きな音とともに汚い色の泥ついた水が階段から細く流れでている。その瞬間背筋が凍りついた。(まさか本殿裏の山がくずれたの?頭に過ぎるのは家族の顔、、、神様どうかみんな無事でいますように、、、)私は祈らずにはいられなかった。

今にも身体から溢れだしそうな不安を抑えつけて青年を支えた。(早く!早く!)気持ちばかり焦るが青年に無理をさせる事もできない。幸い道路に出ると道に異常はなく普通に歩くことができた。無事に青年を仲間の元に届け状況を説明しあとは任せた。青年はもう一度「ありがとう」と言い仲間に肩を借りながら学校の中に向かった。私は急いで来た道を走った。さっき通った道には先程よりも人がいて荷物を持って非難していた。(早く!)焦る気持ちなのか不安な気持ちなのか心臓が異常なくらいドクドクとなり煩い。焦れば焦るほど手足の血の気が引くようで力が入らなくなっていた。この時点で私は気づいていたんだと思う。(きっと神社は、、、。)

泣きそうな心を必死に抑えて(声に出してはダメだ。悪い方には考えない)

今にも涙が出そうなのを必死に堪えた。


神社に続く階段はさっき下りた時より沢山の泥水が流れ出ていて階段を登る事もできず立ち尽くした。私はその場にしゃがみ込みわんわんと大きな声でいつまでも泣いた。どれくらい泣いていたのかは覚えていない。辺りには消防車が数台止まりなにやら叫んでいたが耳に入ってこない。オレンジ色の服を着たレンジャーや消防団が忙しそうに作業する光景をぼんやりと眺めることしかできなかった。誰かの暖かい手の温度はなんとなく伝わったが誰に手を引かれて避難所に連れてこられたのかは覚えていない。私はぼんやりと弓道場に立っていた。

「波瑠大丈夫か!」

両肩を掴まれ声がする方へ顔を動かすと弓道の先輩、陸斗だと気づいた。私は陸斗の顔を見つめるとまた涙が溢れ出てきてしまい羞恥も忘れ泣き出した。そんな私の背中を陸斗は黙って優しくなで続けてくれた。弓道場内は避難所になっていて人の出入りが激しく陸斗の両親である弓道の先生は私室で過ごすよう案内してくれた。町の人達に沢山励まされたが正直思考が混乱していて頭に入らなかった。ただ唯一聞き取れたのはあの高校の野球チームが予定を早めて昼頃には無事甲子園に向かったらしいという会話だった。「よかった」私は小さく息を吐いた。

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