part4
「お願いします。」
スタジオに入る前には必ず挨拶をする。
「今日も、凛人くんと一緒なの?仲良いね笑笑」
そう言いながら、共演者の由衣が近づいて来る。国民的な女優で、二歳も年上だけれど、フレンドリーに接してくれる。凛人とこいつ由衣が並ぶと本当にカップルみたいに見えてくる。
「うんまぁ。」
「うんまぁってなんだよ。笑俺のこと友達だと思ってない?笑」
凛人が少し気に食わなかったらしい。拗ねている。
こういう所、鈴音に似てるんだよなぁ。と思ってしまう。
「はいはい、友達ですよー。」
と適当に返す。
「優陽くん適当すぎー。」
「それなぁ。由衣ちゃんこいつどー思う?酷くなーい?」
俺へのあたりが安定に強い二人を混ぜてはいけない。
そう思った。とりあえず、話を変えなきゃ。
「そう言えば、今回二人ってキスシーンあるんだろ?」
にやりとしながら、二人を見る。
二人とも少し顔が赤くなった。
「まぁ、でも仕事だから。ね、凛人くん?」
そうだそうだ、と頷いている。
「そんなもんかぁ。俺だったらそんな風に割り切れないかも。」
こんな二人みたいに、鈴音以外の人とキスシーンなんて出来そうにもない。
「優陽はお子ちゃまだからな。仕方ない仕方ない。」
「そんな事無いですー。」
「凛人くん、それな〜。笑笑」
その後も何かくだらない話をしていた。
「そろそろ優陽くんたち準備してねー。」
そのスタッフさんの言葉で、皆んなの顔つきががらりと変わる。やっぱり、この二人はプロの中でもトップクラスだと思う。
その後、2時間ほどの撮影を終えて、次の仕事に向かう。本当は二人が終わるまで待っていたかったが、そんな余裕は無い。
「ありがとうございました。」
そう挨拶して、そそくさと楽屋に戻り自分の荷物を持って、テレビ局のエレベーターを降りる。
そしていつものように、駐車場まで行き、マネージャーの車に乗り込む。マネージャーが居なかったので、しばらく車の中で待っていたが、しばらくすると何やら荷物を抱えて走って向かってきた。