part2
はぁ、つかれた。
そう思い、台本から目を逸らしスマホを開いて時計を見る。
まだ20分しか経ってない。
もう少しやらなきゃなぁ。
そう思ってもう一度台本に目を向けた瞬間、ノック音がした。
「メイク失礼しまーす。」
甲高い声。
いつものメイクさんだった。
「ゆきさんじゃん。昨日ぶりー笑」
自然とゆきさんとは話が合うので、数いるメイクさんの中で一番ゆきさんが好きだった。
ゆきさんは30歳くらいの見た目で、5歳になる息子がいる。
いつも息子の話を何十分も聞かされることを除けば、ゆきさんはすごくいい人だった。
「優陽くん、また寝坊したんだって?もう、こうちゃん怒ってたよ?」
こうちゃん、つまりマネージャーのことだ。
ゆきさんはフレンドリーなため、色んな人との関わりがある。
さすがだなぁ。
と思いつつも、なんて言い訳しようか考えていた。
「あれは寝坊と言わないから。。笑」
少し苦笑いを浮かべて、自分の後ろに立つマネージャーを鏡越しに見つめる。
地雷を踏まなきゃいいけど。。
少しの間見つめていたが、マネージャーが口を開く素振りは無かった。
よかった。セーフだろう。
「こうちゃんも大変よねぇ。こんな子のマネージャーなんて。。」
なんか馬鹿にされている。
むすっとした僕をマネージャーが見てふっと笑った。
「ほんとですよ。こんな言うこと聞かないクソガキの世話を25にもなってやらなきゃいけないなんて。はぁ、。」
言うことを聞かないのは三割くらい認めるけど、クソガキなのは認めたくない。
だけど、マネージャーは一応、一応、いちおう、年上だ。何も言えない。
その後何分かして、また扉をノックする音が聞こえた。
「失礼しまーす。」
「どうぞ。」
声を聞いて誰かわかったため、あえて適当な返事をする。
こんなうるさい声なんて1人しかいない。
「一昨日ぶりですね!優陽さん!お邪魔でしたかね?」
うざい、どうしようもないくらいこいつは嫌いだ。
「そんなことないですよ。」
感情のこもっていない声で適当に返す。
こいつは共演者の1人である、河田仁美だ。
とにかくこいつのことを俺は嫌いだ。
「ほんとですかぁ。?ひとみ嬉しいなぁ。」
何が、嬉しいなぁだよ。
ふざけんな、、。
こいつ普段から、鈴音のことを嫌ってるくせに。
「そろそろ、いいですか?」
早く出ていってもらいたい。
「じゃあ、また後でね〜」
無視してやろう。
あいつが出ていってから、深いため息をつき、マネージャーに話しかける。
「あいつと共演なんかしたくない。」
「文句を言うな。もうすぐ最終回なんだから、頑張れ。ちなみに俺も嫌いだ。」
あっ、そうなんだ。
なんか今だけマネージャーが好きになれた。