part3
「凄い、めっちゃ美味しそう。」
たこ焼きの美味しそうな匂いが部屋中に漂う。
久しぶりの温かいご飯に、喜びを覚えた。
アイドルなんだからと、体重管理は必須条件で、あまり炭水化物を取らせてもらえなかった。
でも今だけは違う。自然と顔が綻んでいた。
「あ、ちょっと焦げた。もう、いきなり鈴音ちゃんが驚かしたからじゃん。」
「えっ、それって私のせいなの?笑笑」
少し焦げたたこ焼きは意外にも美味しかった。
それともう一つ意外だったのが、凛人が料理が上手になっていた事だ。
少し前に、一緒にご飯を作った事があったがその時は本当にひどかった。
「りんちゃん料理の修行でもしたの?前とは違ってめっちゃ美味しいんだけど、。」
「本当?良かった。実はね、ちょっとだけ自炊するようにしたんだ。」
凄いでしょ?と自慢気な顔をしてきた。
私にとってはご飯を食べる時間すらないのに自炊なんて尚更だ。
凄いなと心の底から感心してしまう。
「流石りんちゃん!私にはまだ早いかなぁ。」
「いつでも俺の家来ていいよ。簡単な物なら作ってあげるし。」
「ありがとう、でも大丈夫だよ。優陽がいつも家に来てくれる時は、自分で作ったお惣菜とか置いててってくれるの。」
「そっか、なら大丈夫だね。」
ふとスマホを見てみると、沢山の通知が溜まってる事に気がついた。
誰からだろう。そう思い、いざパスワードを入力し開いてみるとマネージャーと芹奈、康太からのメッセージだった。
きっと、他のアイドルが私と同じような立場にいる時は家族が電話だったりしてくれるのだろうが、生憎私にはそんな家族はいない。
そして、優陽からも連絡は無かった。そう思うと、自分が情けなくなってくる。
とりあえず3人には普段の感謝もあるので、丁寧に返信して迷惑をかけないように明日にはちゃんと会社の人たちと話し合いをする事を決めた。
逃げたばかりではいられない。向き合わなくてはいけない。あまり気は進まないが、やらなくてはいけない事だ。
「りんちゃん、今日は本当にありがとう。明日には事務所に戻るね。」
「明日、事務所まで送るから今日はゆっくり休みな。」
「そうさせてもらうね。今度ちゃんとお礼するから。」
「お風呂入ったら、もう寝な。おやすみ。」
「おやすみ。」
凛人のマンションから見えた夜空は少しだけ星が輝いていた。