懐かしい星空
「鈴音ちゃん、起きて。」
その言葉で目が覚めた。
ぼんやりと目に映る景色は見慣れなかった。
「おはよう、りんちゃん。」
そう言うと、にっこりと凛人は笑った。
「これから、お買い物に行かない?今日は平日だし、今お昼だから誰もいないよ。」
こんな私を励ますように、凛人は言った。
「行く!」
今はもう、何も考えたくなかった。
本当は外に出る事すら怖かった。けれど、今までずっと忙しかった分、外に出て買い物をする事がとても楽しみに思えた。
私が行くと言った瞬間、凛人は急いで支度を始め、あっという間に家を出ることになった。
凛人の車に乗り、少し遠くのデパートまで向かう。
「鈴音ちゃん、今日はうちに泊まってね。今鈴音ちゃんの家ネットで晒されてる。」
その言葉がすごくショックだった。それを察したのか、ごめんねとだけ謝られた。
凛人のせいでは無い。むしろ凛人に助けてもらっている身だ。感謝しか出てこなかった。
「鈴音ちゃんも出来れば、優陽の家に泊まりたいよな。ごめんね、俺で。」
そう言われたが、今は優陽にすら会いたくなくなってしまった。優陽にどう思われたか分からない。そんな状態で、彼と目を合わせられる自信がなかった。
だから、彼からの連絡や事務所の連絡等は全て無視することにした。今日くらいは、自由になりたかった。
私が少しぼーっとしているのを見兼ねて、凛人はそっとしておいてくれた。
デパートに着くと、凛人が少し大きな帽子と眼鏡を貸してくれた。
これで人目は気にせず過ごせそうだった。
「行こっか。」
とだけ言うと、凛人は私の歩幅に合わせゆっくりと歩き出した。
まずは、凛人に待っていてもらい、生活用品を揃えた。
いつ、家に帰れるか分からないので一応何個もの予備のものを買った。これらは全て凛人が払ってくれた。
申し訳ない気持ちで一杯だったが、凛人は惜しみなく払ってくれた。
その後は二人でゆっくりとデパートを回ることにした。
優陽と付き合う前は凛人とよく、このデパートに遊びにきていた。
懐かしいと思いながら、歩いているとアクセサリー屋さんがあった。
もう何年も前に凛人と行った思い出の場所だった。
「ねぇ、鈴音ちゃん。ここ覚えてる?昔さ、ここでお揃いの買ったよね。」
きっと凛人は忘れていると思っていたが、覚えてくれていた。
「私達が今みたいに仲良くなったきっかけはここからだったね。もう懐かしいや。」
おぼろげな記憶がうっすらと蘇る。
でも、時間は戻せないし、戻らない。そんな事は分かりきっていた。
「なんでこんなことになったんだろう。」
ただ自分の目には涙が溜まっていた。