part2
電話の着信音が部屋に鳴り響く。
誰だろう。
そう思いスマホに目をやると、凛人と表示されていた。
急いで応答すると、少し怒ったような声だった。
「優陽、今お前どこにいんの?」
「家にいる。」
「鈴音ちゃんの件、お前の耳にも入ってるんだろ。鈴音に何か連絡したか?」
「いや、まだ、、。」
とだけ伝えると、電話の向こうで小さなため息が聞こえた。
鈴音はいじめをするような奴じゃない。十分自分でも分かっていた。けれど、いじめを告発したのは自分の実の妹だった。妹が嘘をつくような奴とも思えなかった。
結局の所、自分はどちらの立場にもつけなかった。
「今、鈴音の所に行けそうか?」
と凛人は聞いてきた。
運がいいのか悪いのか、今日は予定がぎっしりと詰まっていた。
「今日は仕事がぎっしりで、。ごめん。」
「今、ネットで鈴音の家の住所が特定されてるから、俺の家連れてくからな。文句は言うなよ。」
文句なんて言える立場ではない。そんな事分かりきっていた。
「ごめん、ありがとう。」
自分でもわかっていた。最低だと。でもどちらを信じていいのか自分では決められなかった。
「じゃあな。」
それだけ言うと凛人は電話を切った。
はぁと少しだけため息をつくと、家を出る支度をする。
もう少し時間が経てば解決するだろうか。
そう思い、熱いコーヒーを口に含んだ。
その後マネージャーと共にテレビ局に向かった。
楽屋に入ると、もうメンバーの数人が集まっていた。
「おい、優陽大丈夫か?」
楽屋に入って直後に颯が心配そうにこちらの様子を伺ってきた。間髪を容れずにまた話し出した。
「妹さん、大丈夫か?精神的に、、ほら。でも意外だよな〜。あの鈴音ちゃんがいじめだなんて。女って裏表あるんだな、やっぱり。」
俺が言葉を返そうとした瞬間、康太が泣き出した。
「鈴音ちゃんは、そんなことしない。ずっと小さい頃鈴音ちゃんを見てきたんだ。そんな事しないって俺が一番分かってる。」
その言葉で俺の中の良心がズタボロになった気がした。
俺とは違う。康太は本当に鈴音を信じてるんだ。そう思うと余計に胸が苦しくなった。
その後楽屋全体が不穏な雰囲気になったが、律が場を取り持ってくれていたおかげでその後の収録には響かなかった。
全ては自分のせいだ。
ちゃんと二人の変化に気づいてあげられなかった。
後悔だけが、残っていた。