真っ暗に包まれた夜には
「はぁはぁ。」
上がった息が一向に止まらない。
そりゃあそうだ、と自分でも分かるほどにぶっ通しで踊り続けた後だった。
「そろそろ切り上げて向かうからな。」
そのマネージャーの一言で、全員が一斉に世話しなく動き出す。
荷物をまとめて、車に急いで乗り込んだ。
テレビ局につき、楽屋に向かう。
その途中で鈴音を見かけたが、話しかける事はしなかった。
つい今さっき、マネージャーに熱愛報道等に気をつけろ、そう伝えられた。
流石に、言われた直後に話しかけるのはまずいと思い、気づかないふりをしてその場を去った。
その後、楽屋に到着しゆっくりしていると、軽快なノック音が聞こえた。
「失礼します。」
とその声で、鈴音だと悟った。
鈴音は、にこりとこちらに笑いかけた。
しかしその後はちゃんと話す時間すらなく、鈴音達は急いでどこかへ行ってしまった。
収録の後会えるだろうと思っていたが、自分たちのグループの出番が終わった頃にはとっくに鈴音達は帰ってしまっていた。
ついていない。そう思いながらも、楽屋でメンバー達と話していた。
その時だった。
メンバーの一人がSNSに写真をアップした直後に、大きな驚きの声をあげた。
「鈴音ちゃんのいじめ疑惑が出てる。」
その一言で、楽屋の中は動揺で溢れ返った。
そんなはずはない。と全員が心の中で思っていたものの、疑惑はぬぐいきれなかった。
頭が、がんがんと打ちつけられているような気分だった。
今頃、鈴音はどうしているだろうか。
そう思い鈴音に電話したが、一向に出る気配は無かった。
今すぐ鈴音の元へ駆けつけたかったが、何故か体が動かなかった。
頭では鈴音がそんな事するはずはない。
わかっている筈なのに、その日は何もする事ができなかった。
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