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変人現る






時は少し遡り、ジェイが王都にやって来て3日目の事。


街を散策していたら突然変な男に絡まれた。


「あぁぁぁ!!!やっと見つけましたよ!貴方ですね?!魔物を操り王都へ舞い降りた勇者というのは!!」


「…は…?!」


やや薄汚れてはいるが、身形から貴族か商人の家柄らしい青年が小走りに近寄ってきた。

髪はボサつき、ヒゲも剃り残しが目立つ。

歳はジェイと同じくらいだろうか?顔が前髪に隠れてよく見えない。


「あの……」


「あ、僕はリーマ・ピスタシュといいます!魔導師庁で魔物の研究をしていました!!」


「え…?!」


魔導師庁といえば、今回一番迷惑を掛けてきたボーデンにとっての諸悪の根源。

そこの職員が今更なんの用だろうか。


「仲間の暴走を止められなかった事は後悔しております。貴方方には本当に迷惑をおかけしました…でも僕等は誓って魔の森への干渉には関わっておりません!所長が懇意にする高位貴族以外、あの不正の事は知らされていなかったんです!」


「それで…」


「それで?一体その魔導師庁の元・職員が何の御用でしょう??」


「どっからともなく奪われてく台詞……」


睨むバートに臆することもなく、リーマという男がジェイに近づいた。


「どうか!あの魔鳥に会わせて下さい!!僕は魔物の中でも行動範囲の広い鳥類を専門に研究しております!しかし生きた実物を間近で見られる機会は無く、ほとんどが素材になった物ばかりで、普段は遠目から隠れて観察する事しかできないんです!!それが3日前、突然王都の上空を群れを成して飛んでいるのを発見し、それがボーデン家所有の魔物だったと門番に聞いたので居ても立っても居られず!!」


「うわーー!一気に喋って来るなコイツ!?」


「そもそも職場の解体は決定しているのに、研究を続ける意味あるんですかね?!」


「ありますとも!!そもそも魔物の研究はこの国の大きな課題です!僕はかつてマルス・ボーデン伯爵の魔物研究の論文を読んで感動しこの道に入りました!我が国は魔物とこそ共生するべきであり互いの生活範囲を侵さずむやみに干渉すべきではなく!!」


「うわーーー!早口で捲し立てて来た!!


「それで?貴方はその魔鳥に会ったらどうなさるつもりですか?」


「生きた魔物を間近で観察できるだけで良いんです!!あ、でも詳しい飼育の状況や普段の管理体制などもお聞きできれば…あとは文献と実物に違いはあるかとか実際の狩りの仕方とかどうやって訓練するのかとか色々お聞きしたくて」


「あぁーー……じゃ、こっちの奴に聞いてよ、家の獣舎の管理はだいたい任せてるから!」


「はぁっ??!!」


ジェイはバートの肩をポンと叩くと、リーマが気を取られている隙にサッサと逃げ出した。


「ちょっ…!?」


確かにバートは獣“舎”の管理もしている。

餌や寝床を整えたり、掃除をしたり。

が、中に居る“獣”に関してはボーデンの血筋の者が主体で面倒を見ている。

バートは仕上がった魔物達を言われた通り動かすだけで、指示を聞くよう躾けて仕込むのは主人達一家であった…


(後で覚えとけよ…)


人混みに消えたジェイを睨み付けながら、どうやって目の前の男から逃れようか、バートは久々にうんざりしていた。





「お前達に紹介しておきたい人物がいるから、出発の前に少し時間をくれないか?!」


公爵家襲来対策のため、裁判までの2週間の間はそれぞれ協力者達に匿ってもらう予定となった。

メリッサはロビンスと一緒にモーリー男爵の別邸へ行くことになった。

恐らく色んな商談を繰り広げるつもりだろう。

アルメリア夫人は昔からの知り合いが大勢手を差し伸べてくれたので、あちこちに挨拶がてらお邪魔するらしい。

シルヴィアは一度実家に帰って、今後の生活について相談してくるそうだ。

長男は既に友人宅へ向かってしまった…

残ったドロシー、リナリア、ジェイの3人はバートが引率することになっている。


リナリア達が慌ただしく準備する間に、ボーデン伯爵がホールに皆を集め、誰かを連れてきた。


「知っていると思うが、今回の事件で魔導師庁が解散する事となった。しかし、本来はこの国に必要な機関だ。そこで、陛下に今後は民間に委託する形で、魔力研究所の設立を許可頂いたんだが、そこの所長として彼を推薦することにした!」


「リーマ・ピスタシュと申します!ピスタシュ子爵家の三男です!若輩者ながら誠心誠意取り組ませて頂きます!」


「えぇぇぇ〜〜〜??!!」


「それでだ。魔の森と魔物の関係性と、共生関係の重要性を踏まえて、私は彼としばらく缶詰めで論文やら裁判所に出す書類なんかを作るから、居ないものとしてくれ!」


「…はぁ……?」


「いやぁ!流石バートだな?!いい人材をスカウトしてきてくれたよ!ピスタシュ子爵家は魔導具の開発や魔石の調整など繊細な魔力操作が得意とされている。なのでリナリアは特に気をつけるように!では、改めて解散!!」


それだけ言い残して、ボーデン伯爵はさっさとリーマを連れて邸を出て行ってしまった。


「言い逃げ?!」


「兄さんの知ってる人?」


「知らん!!!いや…一度絡まれて逃げた事があるだけで…」


「ジェイ様に雑に押し付けられたので、旦那様に丸投げしたらなんか上手いコトいきました」


「すげーな…お前…」


「覚えといて下さいね…」 


「あ…はい」


それから母達を見送り、邸に残るアイビー夫人に手を降って、リナリア達も馬車へ乗り込んだ。


「荷物が少なくてよかったわ」


「来る時も4人のバッグとトランクひとつだったもんね…中身ほとんどサンドイッチの…」


「で?これからどこ行くんだ?」


「まずは王立の貴族学園です」


「「「え?!」」」


「リナリア様に重大な依頼があるとか…」


「わたしに…依頼…?」


「今日中には済むそうなので、恩を売りつけて来いと奥様より…」


「なら仕方ないわね…行きましょう!?」


「では、最初の依頼先貴族学園へ向かいましょう」


「「「最初?!!」」」



こうしてリナリアは人生初の学園へと、足を踏み入れることになった。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 事件が進むよりも早く登場人物が増えすぎて、固有名詞で誰が誰か理解できなくなる。 個々のエピソードが連なっていって、最終的に形が見えれば良いのでしょうが、既に終わっている事件の裁判までに…
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