タオ爺とスーと…
〜リナへ 大至急俺のナイフセットと、解体道具を持ってきてくれ!金鹿が捕れた!〜
「金鹿ですって!!!??」
金鹿が森から出てくる時期にはまだかなり早いはずだが、だからこそこの幸運に感謝しなくては!
リナリアは屋敷の裏庭に走って行き、作業小屋の中から大型動物を解体する為の道具を片っ端から箱に詰めていく。
そして庭先でリンゴの剪定をしていた老人に声を掛けた。
「タオ爺!!兄さんから手紙!コーネリアスが持ってきた!金鹿が取れたんだって!!」
「そいつぁあすごい!すぐに向かいましょうや!」
それからリナリアは馬小屋に行くと、繋がれていた黒い厳つい馬を一頭ニコニコしながら引いてきた。
「このくらいならスーだけで大丈夫かしらね?!」
「そりゃコイツの足なら4頭立ての馬車だろうと引けちまいますよ」
そう言われた馬の額には鬣に隠れて銀色の角がキラリと光っている。普通の馬ではない。
「さぁスレイプニル!お仕事の時間よ!コーネリアスを追ってちょうだい!」
荷馬車にスーを繋ぐと、荷台に乗り込みタオ老人に御者台を譲る。
「タオ爺、御者はお願いしてもいい?」
「ホッホッ!そんじゃ、飛ばしますかね!」
パシンッ!と鞭が鳴るとスーが一気に駆け出した。
「転がり落ちんように掴まっとってくだされよ!」
「はーい!それじゃ行ってきまーーす!!」
ピュイィィーーーーー!!!
リナリアは遠ざかる屋敷に向かって指笛を吹いた。
途端、何かが屋敷の裏から走り出てきたが、すぐに森の中に隠れてしまい、姿を見つける事はできなかった。