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王都へ集まる者たち



〜〜〜


お母様へ!


お久しぶりです!ベルを送ってくれてありがとう。

お手紙読みました。びっくりしたけど、リナリアならどこに行ってもきっと元気にやってると思うから、心配しないで!


それと、例の伯爵令嬢の話を聞いてきました。

ここの4年生で、面識はないけど噂がすごい広まってるの!

なんでも王太子の婚約者候補達を貶しまくって、学年別のダンスパーティーで王太子に自分が婚約者だって宣言させたらしいわ。


陛下が怒って伯爵にクギを刺したら、あっさり切り捨てられて修道院行きが決まったのに、逃げちゃったんだって!

余計酷い目に遭うでしょうに、馬鹿な事したものね。


次の連休には、一度帰ります。

楽しみにしててね!


リリアより


〜〜〜




〜〜〜


拝啓 お母様


初夏の日差しが一層眩しく感じられる今日この頃を、いかがお過ごしですか?

なかなか家に戻らず、お手紙も稀な娘をお許し下さい。


ルナリア伯爵令嬢について調べて参りました。

名前はルナリア・ローレン。本校の4年生で成績は下の中。ローレン伯爵家の次女ですが、淑女としての素養が薄く、立居振舞も娼婦の様だと専らの噂です。入学当初より見目の良い男性には必ず声を掛けていたそうで、周りからかなり恨みを買われています。

4年生への進学時、第一王子が立太子されてすぐ役員でも無いのに生徒会に入り浸り、王太子と周辺の男子生徒と親しくされていたそうです。

年一回の舞踏披露会にて、王太子に婚約の宣言をさせ、その他の婚約者候補へ暴言を吐いたため、王家の怒りを買い、家門から切り離され、修道院に送られたそうです。

その後馬車に乗って逃走したそうですが、何処かで匿われている可能性が高いと思われます。


リナリアの事は本当に偶然起きた不幸としか言いようがありませんが、余りにも対処がお粗末なため、怒りを隠し切れません。事が済み次第、然るべき場所に抗議をさせて頂きたいです。


今年はオレンジが豊作です。色々試してみたところ、果肉をたっぷり使ったレアチーズタルトが特に美味しかったので、お母様もぜひ一度お試し下さい。


夏休みには帰ります。それまでお元気で。


                サフィニアより



追伸

手紙が長くなってしまい、フルートがかわいそうなので陸路を早馬に託しました、お許し下さい。


〜〜〜




アルバトロス邸のサンルームにて、優雅にモーニングティーを楽しみながら、夫人は手紙を読んでいた。


「やれやれ…いつの時代にもお騒がせは居るものね。ローレン卿へも連絡を取らなくては…」


「旦那様へはご連絡なさらなくてよろしいのですか?」


「あの人には全て終わってから事後報告でいいわ。途中参加させると面倒だから…」


「ではそのように」


「そしてコレね」




〜〜〜


親愛なるマダム・アルバトロス様

パティスリー・プラムの店長がご挨拶申し上げます。


本日の夕刻前に、コマドリをお連れしますので、お待ち下さい。


〜〜〜



「今朝届いたこちらのケーキの箱に入っておりました。」


「相変わらずねあの子。キザな事をしたがるのは誰に似たのかしら?」


「夕刻ですと、バジル様がいらっしゃっている時間では?」


「そうね、丁度いいわ!夕食でも食べながら今後の計画でも立てましょう!?」






その頃、ボーデン伯爵とその長男は空の旅を楽しんでいた。


「いいぞアレクサンダ!!もっと疾く!風を切れ!!」


「キュルルルルル!!」


大の大人二人を乗せた籠を軽々ぶら下げて空を飛ぶこの巨大鳥は、コーネリアスの親であり、魔鷹の中でも最大の体躯を誇るバジル氏の愛鳥である。


どんな嫌な事もアレクサンダに乗って飛べば、皆吹き飛んでしまう!と、バジル氏は語るが、その長男は籠の済で置物の様に動かなくなっていた。


「どうした?!アルエット!お前もこの景色を見てみろ!!」


「イヤだ!!コレならスレイプニルの全力疾走の方がマシだ!!」


「我慢しろ!スレイプニルだと王都まで丸一日掛かってしまうからな!アレクサンダならば半日で着く!」


ちなみに王都からボーデン領まで、一般の馬車で7日、早馬でも3日は掛かる。


「俺も留守番組が良かったっ!!!」


「ハッハッハッ!そう言うな!風を感じてみろ!?最高だぞ?!ハッハッハッハッハッ!!」


「親父はスピード狂だから嫌だ!!人が変わる!!」



「よーしアレクサンダ!あの山を越えたら急降下だ!!」


「キュルルルルルルッッ!!」


「ギャァァァーーーーーー!!」



〜〜〜



バジル氏が空の旅を楽しんでいる頃、ボーデン領の領主館では夫人と三男が、旅支度をしていた。


「兄さん達、今頃は領堺の山を越えたかな?」


「そうねぇ、まぁ私達はゆっくり行きましょう?!どうせリナはすぐ戻らないでしょうし…」


「タダじゃ転ばないヤツだし、何か見つけて来るだろうねぇ」


「それじゃ、準備はいいかしら?アンヴァル、よろしくね?!」


「ヒヒン!ブルルッ!」


四人乗りの馬車の中には、王都までの荷物とお土産が紐で括り付けられ、クッションがこれでもかと詰め込まれていた。


引手の馬は一頭。ボーデン伯爵夫人の愛馬、アンヴァルは額に銀の大角を掲げた巨躯の白馬であった。


「さて、王都まで3日掛かるかしら?」


「道の状態にもよるけど、今夜には領を出られるよ?!御者は任せてよ!手綱を取るのは得意だからね!」


「ロビンス?!ちゃんと休息も取りなさい!」


「ありがとう母さん!じゃ、しゅっぱーーつ!」


軽快な鞭の音と共に砂煙が上がり、あっという間に馬車は道の向こうに消えていったのだった





〜〜〜〜〜




その頃、ボーデン伯爵家では。


「………うん……わかってた……」


ジェイがコーネリアスが戻るのをひたすら待っていた。


「ジェイ様はボーデン領の最重要ポストに着かれておいでですからね!留守を守る要です!」


「…物は言いようだな………」


「あ!コーネリアスが戻って参りましたよ!?」


「あぁ、やっと……ってコーネリアス!?お前なんか食っただろぉ??」


遠目からでも血と肉片にまみれた愛鳥が、自分目掛けて一直線に飛んで来る。

巨体のホバリングで、ものすごい風圧と乾きかけの血が飛び散る。


「キュ~~~ルルル!!」


「くっっさ!!生ぐっさ!!」


「ほら、ジェイ様、手紙だそうです。」


「バートが受け取れよ!!」


「何をおっしゃいます。ジェイ様に手紙を届ける事がコーネリアスの喜び!それを私が邪魔する訳には参りません!」


「こーゆー時だけ俺任せな!?いつもの事だけど!!?わかってた事だけど!!?」


手紙にくっついたレバー片を払って、湿っぽい雑紙を開くと、リナリアの字が出てくる。



〜〜〜


兄さんとお父様へ


お元気ですか?私は元気でやってます。今朝また新しい友達ができました!機会があったらご紹介します!


それと、ハーブの種をありがとう。畑のすみで育てています。


それから大事なお話です!

修道院の裏手の森でルーが毎日狩りをしているのですが、獲って来た動物には全て魔石が入っていました。

こんな事は狩りの時期にも無かったので、森でなにか起きているのではないかと心配です。


関係あるかわかりませんが、今まで狩猟期の寒い時期にしか捕れなかったので、気になりませんでしたが、魔石持ちの動物達は、どれもこの時期には珍しい程脂がのって太っていました。

他にも異常がないか、色々調査してみます。


いずれ詳しく調べてみたいので、落ち着いたら誰か人を送って下さい。


追伸〜


金鹿の肉をいくらか送って下さいな。

酷い目に遭った可哀想な妹のために!!

一塊でいいので!頼みました。


リナリアより


〜〜〜



「…なんか…内容が……思ってたんと違う……?」


「人違いで修道院に入れられた事に関しては、一切触れていませんね」


「……うーーん…流石は興味のある事しか目に入らないヤツ……」


「キュルル〜〜」


「ひとまずお前は風呂だな!!」


「ギュピィィィッ!!!???」




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