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ボーデン辺境伯爵家


辺境伯爵バジル・ボーデンは領地の南端の別荘にて、息子からの手紙に目を通すと、パイプを咥え直し遠くの山々を見つめた。


「どうなさったの、あなた?」


妻のアルメリアは、夫の向かいに座り、にこやかに紅茶を飲んでいた。


「いやぁ…ジェイがリナリアの事で重大な話があると知らせて来たのだがね…まぁ君も読んでみたまえ…」


「…あら……あらあら、うふふ……」


「笑い事じゃないだろう……?」


「そんなに心配なさらなくても大丈夫よ!そのうちリナリア本人からも何か知らせて来るでしょうし、ね?!」


「あの子は君に似てなかなか動じない性格だからね…問題があればきちんと報せてくれると信じてはいるよ。」


「それより…この伯爵令嬢とやらの話は気になりますわね。王都のお義姉様に少し探って頂きましょうか!


「ハウアー子爵家との取引も、リナリアの希望以外にも最近は品質も落ちてきたし、あまり良い話を聞かないからね、ここらで手を引かせてもらおう」


「アンジェリカの事が本当に悔やまれるわ…今後は彼女の生家のディール伯爵家と取引します」


「君に任せるよ。それじゃ私は姉に手紙を出すとしよう」


ボーデン家当主夫妻の夜はそうして更けていった。


その頃、ボーデン家ではリナリアの兄3人が集まって緊急会議を開いていた。


「なんてことだ……」


「ジェイ兄さんに呼ばれたから何事かと思ったら…」


長男のアルエットと三男のロビンスはジェイ同様、頭を抱えていた。


「そもそも修道院に入れられる様な女の顔がわからないってあり得るのか?」


「釣書なんかがそのまま人相書きとして修道院に送られる事もあるし、どんな容姿かの記述くらいありそうなものだけどねぇ」


「とにかく、向こうがリナリアを犯罪者だと思い込んでる以上は、何を言っても証拠が無けりゃ開放してくれないだろうな」


「リナは様子を見るって、自分で解決する気かなぁ?」


「いくら何でもひとりじゃ無理だろう?!こちらでも解決の手立てを探ろう!」


「知らない女の罪をいつまでも被せて置く訳にもいかないもんねぇ」


「よし!明日、王都の伯母上の所に行ってみよう!すぐに手紙を書くからコーネリアスに頼む!」


「リナリアがハーブの種が欲しいって、ついでにいくつか送ってやろう!」


「まったく、呑気な妹だよねぇ!」


3人は手紙をコーネリアス託すと、それぞれの持ち場へ帰って行った。




〜〜〜〜〜



東の棟にリナリアが戻ると、丁度メリッサが扉を開けてくれた。


「リナリア!戻って来たのね!?大丈夫だった?」


「うん!野菜洗って皮剝いて、畑作って来た!」


「そ…れは…大丈夫…だったの…?」


「ええ!楽しかったわ!メリッサは?どんな事したの?」


「今日は建物の中を案内してもらって、お母様の事をご存知の方達とお茶をして来たの…」


「良かったわね!あなたは少し休むべきよ!」


「皆さんにもそう言われたわ。とても良くしてもらって…ありがたいけど…少し申し訳なくて…」


「そんな事ないわよ!甘える事も大切よ!?きっと他のシスター達もそう思ってるでしょうに!」


「そう……かしらね……」


「大丈夫?今日は色々あって疲れたでしょう?明日も早いし、もうベッドに入りましょ!お休みメリッサ!」


「お休みなさい、リナリア…」


こうして二人の修道院生活の1日目は過ぎていった。



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