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6.侯爵令息

「いやぁ、君は面白いね。―――さて」


ライアンは目の端に涙を浮かべながらひとしきり笑うと、手で涙を拭い近くの椅子に座った。


「君も座りなよ。ソフィアは僕の隣がいいな」

「いえ······私はここで」

ソフィアの反応にライアンは『ちぇっ』と軽く拗ねると口元に手を近付け、俺に内緒話をするように話しかける。

「ソフィアは俺のアプローチいつも無視するんだ。昔はもっと――」

「ライアン様」

「はーい、ごめんなさい」


ソフィアに注意されたライアンは姿勢を正すと一拍置き、問いかける。



「じゃあ、君がどこまで聞いているのか教えてくれる?」


俺は昨日教わったことを伝えた。

このルイート学園は魔法の素質があれば貴族·庶民関係なく入学すること。

共通科目については成績別のクラス、実技は属性(火·水·風·土)に分かれて授業を受けること。

それから学園での過ごし方等々。

話し終わると、それまで黙って聞いていたライアンが口を開いた。


「君は風属性だとは聞いてるよね?僕は水だから午後の実技は別々になるけど、午前中は同じ教室で受けるからフォローするよ」

つまり実技の授業さえ気を付ければ今日はなんとかなるわけだ。

ちなみにソフィアは一緒に授業は受けれないので、昼休みと放課後の待ち合わせ場所だけ決めておいた。



「アリアはあまり人と群れていないからそんなに問題はないかな。あとは休む前にあったことだけど······」

ライアンがなぜか顔を背けた。

「?」

なにかあったのだろうか?

「これは実際会ってからのほうがおもし······よさそうだね」

「『面白そう』って言おうとしませんでした?」


「······そろそろ時間だし行こうか!」


俺の質問を無視してそそくさと部屋を出る。

「えっ、ちょっ―――」

「いってらっしゃいませ」

差し出された鞄を受け取り、後を追うように部屋を出た。




ライアンの歩くペースは速く、アリアでは付いていくのにやっとで話しかけることも出来ない。

必死に追いかけると、突然立ち止まったライアンぶつかりそうになった。


「着いたよ。よく君が座っているのは――あの辺りかな」

「······わかった」


呼吸を整えて中へ入ると、周りに挨拶しながら席へ向かう。座席指定ではないが、なんとなく同じような場所に座っていたらしい。


途中でイヤな視線を感じてそちらへ向くと――男子生徒と目があった。


「お前よく出てこれたな」

ニヤニヤと笑いながらそいつが近付いて来る。


(うわぁ······メンドクセー)


『酷く振られていたのにすごいわ』とか『私ならもう出てこれませんわ~』とか、クスクスと笑う声が聞こえる。

(あぁ······こういうことか)

どうやらアリアはこいつに振られたらしい。


隣ではライアンが肩を震わせている。

絶対こいつ面白がってるな。


「ごきげんよう」


満面の笑みで挨拶してやると、なにか勘違いしたらしい。

「なに嬉しそうな顔してんの。お前、まだ俺のこと――」


「いいえ、もう貴方に興味はないですから。自意識過剰なその言動はどうにかしたほうがよろしいかと」


バッサリ言い切る。まさか言い返されると思っていなかったのか目を丸くしたまま突っ立っていたので、無視して席に着いた。


(そうだよ、俺は男に興味はない!)


男じゃなくてもこいつは嫌だけど。アリアもこんな奴と付き合わなくてよかったよ。

これならまだライアンのほうがマシだと思う。



俺に続いて隣に座ったライアンはまだ肩を震わせている。

「おい!さっき言わなかったのコレだろ」

小声で話しかけると、同じように声を潜めたままライアンが返した。

「いや~、あいつ君が休んでいる間『俺に振られて落ち込んでるから学園に来れない』とか言ってたから·········くく。まさかこんな面白い展開になるなんて」



タイミングよく先生が来て授業が始まる。


後から聞いた話によると奴はうちの隣の領地を所有している侯爵令息で、アリアはいつも追いかけていたらしい。

名前はロイ······なんとか。ムカつくから覚える気なし!


そして俺が転生した前日、アリアの勇気を振り絞った告白を『侯爵の俺様がお前と付き合うとかあり得ないから。まぁ2番目なら考えてやってもいい』って―――ふざけんな!爵位がなんだってんだよ!とライアンから説明された時はぶちギレ寸前だった。


「僕も同じ男として彼の言動は許せないね」と同意するライアンと意気投合した俺は、午後の実技の授業もなんとかやり過ごして放課後ソフィアと一緒に帰宅した。




「――って、なんでライアンも一緒?」

「気にしない、気にしない」


朝と同じ部屋に戻ってきた俺達は、なぜか一緒についてきたライアンと階段を上る。


「おかえり。あれ?ライアン君も一緒だね。一緒にお茶でもどうかな?」

廊下を歩いていると、ちょうど通りかかったロバートさんに声をかけられた。

ライアンはそのまま付いていき、俺は後で伺うことを告げて自室へ。


(あー、疲れたー)


部屋に入ると深い溜め息をついた。なかなか濃い一日だったと思う。


そして制服から部屋着に着替えるとロバートさんの部屋へ向かった。

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