第二十四章「ヴァイリス魔法学院」(8)
8
「正気なのか?! 彼は攻撃魔法も相当の使い手だぞ?!」
試合に呼ばれるまでのんびりしようと中庭でくつろいでいると、ヴェンツェルとミヤザワくんが駆け寄ってきた。
「トイレまでついてきそうだよね、ヴェンツェルって」
僕のツッコミなどお構いなしで、ヴェンツェルは主張を続ける。
「間違いなく、アーデルハイドとオールバックの彼は魔法学院の生徒の中で一、二を争う存在だろう。実力テストでそんな相手を選ぶなんていくらなんでも無謀だ!」
「ヴェンツェルは名前で呼んであげなよ……」
オールバックくんが可哀想になってきた。
「まつおさんのことだから、何か秘策があるのかな?」
「うーん、あるというか……」
ミヤザワくんの問いに、僕はアリサのおかげでハマっているジェルディク産珈琲を飲みながら答える。
「彼相手じゃないと勝てなそうな気がして」
「彼相手じゃないと……」
「魔法は、少しは撃てるようになったんだ。火球魔法に、雷撃魔法に、氷撃魔法とか……」
「え、す、すごいじゃない……」
アウローラに言われたように、「感情」を込めるようにして撃ってみると、魔法自体は発動した。
発動したのだけど……、今のままではとても実用範囲とは言えなかった。
「正直、それを聞いて私も驚いたが……、あれを見ただろう? 無詠唱どころか一瞬で防御属性が切り替わる「バルテレミーの盾」、バリアチェンジの前では、生半可な属性魔法では……」
「まぁ、そうなんだけどね……。でも、ほら、何事にも相性ってのがあるじゃない」
「相性?」
「そう、相性」
僕は残りの珈琲を飲んでから立ち上がると、ヴェンツェルとミヤザワくんを見てにっこりと笑った。
「彼にとって僕は、最悪に相性が悪い相手だと思うんだよね、たぶん」
ちょうどその時、僕の名前を呼ぶ教師の拡張音声が響き、僕たちはグラウンドに戻った。
「よろしくね」
「ああ、君と試合ができるなんて光栄だ、ベルゲングリューン伯」
僕は黒髪オールバックに銀縁眼鏡の高級官僚おじさん風の生徒と試合前の握手を交わした。
「君、名前は何ていうの? バルテレミー伯爵家っていうのは覚えたんだけど……」
「フッ、無理して覚えずとも、今はオールバックでいい」
銀縁眼鏡をおじさんくさい黒革手袋をはめた手で押し上げながら、オールバックくんは不敵に笑った。
「だが、もし私が君に勝った時には……、名前を覚えてもらうよ」
「了解だ、オールバック伯爵」
僕がそう言うと、オールバックくんがずるっとコケかけた。
「な、なぜ微妙に呼び方を変えたんだ! これまで違う呼び方だったじゃないか!」
「い、いや、ごめん、僕なりに敬意を払ったつもりなんだけど……、名前知らないし……」
「頼む。オールバック伯爵だけはやめてくれ」
「……素直に名前を教えてくれればよかったのに」
試合前の握手で盛り上がっていた周囲の生徒は、いつのまにか爆笑していた。
「魔法の才能はともかく、人を小馬鹿にする才能だけは天才的ですわね……」
アーデルハイドの声が聞こえてくる。
どうやら、試合フィールド全体に、緊急時の教師の声が届くよう、拡張音声魔法がかけられているらしい。
なるほど、さっき僕の声が試合中によく通ったのもそのせいか。
「魔法学院で君のことが気にならない人間はいない。みんな君に興味津々だ。私とて例外ではない」
「それはどうも」
「君の朗らかな人柄に好感を持っているし、その輝かしい功績や冒険譚に、他の生徒たちと同じく心を躍らせもした。だが……」
オールバックくんは眼鏡越しに、鋭く僕を見据えた。
「その一方で、こうも思った。魔法の分野まで首を突っ込み、名を馳せようというのは、いささか欲張りすぎではないかと」
「僕もできることなら、首を突っ込みたくなかったんだよ。ここに来て講習に合格しないと、僕は退学になっちゃうんだ」
「……にわかには信じがたい話だが……。おそらく君には、僕などには考えもつかないような試練があるのだろうね」
(いや、考えもつかないぐらい成績が悪いだけなんだ)
オールバックくんがいいヤツなので、成績が悪くて申し訳ない気持ちになってくる。
「いずれにせよ。バルテレミー家に連なる人間として、剣技や知略ならともかく、純粋な魔法の対決で君に遅れを取るわけにはいかない。手加減なしで挑むことを、先に謝っておく」
「それじゃ、僕も先に謝っておく」
「聞こう」
僕は肩をすくめて、オールバックくんに言った。
「申し訳ないけど、僕は純粋な魔法の対決はしない。しても勝てないからね。だから、僕が勝っても、それは魔法使いとしての君の名を汚すことにはならないから、あまり落ち込まないでくれ」
「ふっふっふ……、挑発ではなく、本気で言っているようだな。やはり君は面白い。それでは、勝負を楽しもう」
僕とオールバックくんが規定の位置に立つと、教師が試合開始を告げた。
「っ――!!」
こめかみのあたりに飛んできた氷の矢を、僕はすんでのところでかわした。
「おいおい、ベルゲングリューン伯、さっきから避けてばっかりだぞ」
「まぁ、相手が相手だからなぁ。ベルゲングリューン伯もちょっとバルテレミー家をナメてたんじゃないか?」
開始早々、僕はオールバックくんの連続攻撃に防戦一方になっていた。
出してくる魔法はどれも、魔法基礎講習で習ったオーソドックスなものばかりだけど、とにかく詠唱が早いし、狙いが正確だ。
火球魔法が飛んできたかと思うと、発動した瞬間には次の魔法詠唱に入っていて、僕がかわすであろう方向を先読みして、予測地点に詠唱時間は長いけど火球魔法より弾速が早い氷撃魔法を撃ってくる。
「どうした? 私に勝つのではなかったか? ベルゲングリューン伯」
「すごいね。こっちが仕掛ける余裕がないよ。……こりゃ落第かな」
「ふっ、戯言を言う余裕があるのは流石といったところか……」
次は雷撃魔法だ。
サンダーボルトは雷だから、基本的に上から下に放たれ、攻撃範囲が横に広いので、左右に避けるのは難しい。
だから、次弾はおそらく、僕がしゃがむと予測して、低空を狙った氷撃魔法を放ち、吹き飛んだところに火球魔法を撃ってくるだろう。
僕はそんなオールバックくんを読んで、あえて全速力で左に飛び込んで雷撃を回避した。
だが……。
「そう読むと読んでいたよ」
「ぐぅっ!!!!!」
そんな僕の右肩に火球魔法が直撃して、灼けるような痛みが広がった。
防護魔法がかけられていても、やっぱり痛みは感じるのか……。
「ベル!」
「まつおさん!」
ヴェンツェルとミヤザワくんの心配する声が聞こえてくる。
そして周囲の生徒のどよめきと歓声。
「オールバックくん、ひとつ質問してもいい?」
「試合中に質問とは面白い。なんだ?」
「今みたいなやつ、あと何発ぐらい食らったら、防護魔法ってはがれちゃうのかな?」
実力テストの試合は、教師によってそれぞれにかけられた防護魔法がはがれたら負けだ。
今みたいなのをあと何度耐えれるかが知りたかった。
「おそらく、直撃なら1発でアウトだろうな」
「えええ……防護魔法っていうぐらいだから、10発ぐらい耐えられるのかと思ったのに……」
「そんな魔法があれば、そもそも魔法使いは戦力にならないだろう」
「聞いておいてよかった」
「君がそれを知って、状況が好転するとは思えないが」
「いやぁ、なるべく君との距離を詰めたかったんだよね」
「っ――、君はそれで先程から、必要以上に大きく魔法を避けていたのか……」
「まぁね。……本当はもう少し詰める予定だったんだけど、仕方ない」
僕は小鳥遊を構え、魔法詠唱に入った。
「フッ、魔法詠唱速度で私に勝てるとでも?」
オールバックくんが僕に負けじと魔法詠唱を開始する。
でも、僕の速度に勝てるわけがない。
「万物の根源……以下略、ファイアーボール!!!」
「なっ!? 氷の壁!!」
僕が高速で放ったファイアーボールが、オールバックくんが無詠唱で発動させた氷の壁によって防がれた。
「ちぇっ、やっぱり距離が足りないんだよなぁ……」
その状況に、生徒たちから大きなどよめきが起こる。
「い、以下略というのはなんだ!?」
「以下略は以下略だよ」
「そんな詠唱聞いたことがないぞ!! 後略するぐらいなら無詠唱でやれよ!」
「できたらやってるよ。 仕方ないだろー、これしかできなかったんだから」
「それができること自体が異常なんだが……」
オールバックくんが驚きというか、ほとんどドン引きしていた。
「ベルゲングリューン伯って、相変わらずむちゃくちゃだな……」
「ウン・コーで火の玉が出た段階でむちゃくちゃだから、今さら驚かんけどな」
「わ、ばか! その言葉を口に出して火の玉が出たらお前退学だぞ?!」
生徒たちが騒いでいる。
「以下略……、現代魔術発祥の地たる神聖なヴァイリス語による魔法詠唱を、以下略……」
エタンのお母さんみたいな先生の呪詛のようなうめき声も聞こえてくる。
「たしかに驚かされたが……、無敵の魔法防御を誇る私の有利は動かない」
「ふふ、それはどうかな」
僕は再び、小鳥遊を掲げた。
「万物の根源……以下略、雷撃魔法!!」
「ふっ、属性変更!!」
僕が雷撃魔法を発動させたのを確認して、オールバックくんがすぐさまバリアチェンジを行う。
すぐさま氷の壁が、雷撃回避用の避雷針のような大きな柱へと形状変化した。
だが……。
「なっ?! バ、バリアチェンジ!!」
「ふはは、もう遅い!!!」
僕が発動させたのは火球魔法だった。
「ぐぁっ!!!!」
金属製の柱の横をすり抜けた炎の弾が、オールバックくんの左肩に命中する。
これであいこだな。
「な、なんだ今のは?!」
「ふふふふふ!! 万物の根源……以下略、氷撃魔法!!」
「っ――!! バリアチェンジ!!」
オールバックくんは僕が氷撃魔法を発動させたのを確認して、今度は鉄製の柱を瞬時に炎の壁へと変化させた。
だが……。
「バ、バカな!? バリアチェンジ!!」
「ぬはははは!! 遅いわー!!」
僕が発動させたのは火球魔法だった。
「ぐぅっ!!!」
僕が放った火球は、炎の壁によってさらに炎の勢いを増してオールバックくんに命中した。
「べ、ベル……、もしかして……もしかして君は……」
「あいつ……もしかして……」
「まつおさんって、ひょっとして……」
「「「何を撃ってもファイアーボールになるんじゃ……」」」
(くそぅ……もうバレちまったか……)
僕は心の中で舌打ちをした。
そうなんだ。
昨日の夜練習してみたら、たしかに、火球魔法だけでなく、氷撃魔法も、雷撃魔法も撃つことできた。
でも、なぜか全部ファイアーボールだった。
だんだん真面目に詠唱するのがバカらしくなって、「以下略」って言ったらそれでもファイアーボールが出たので、もうそれでいいやって思ったんだ。
「ふふ……ふふふ、そうか、そういうことだったのか……」
「あーあ……」
あと一発ぐらい当てれば勝てたのに……。
みんなのバカ……。
「君にはいつも驚かされるが、これでどうやら、私の勝利は確定したようだな」
オールバックくんは銀縁眼鏡を押し上げて、右手を前に突き出した。
「氷の壁!氷の壁!!氷の壁!!!」
オールバックくんは全方向に氷の壁を張りはじめた。
氷で作られた壁が彼の周囲に次々とそびえ立つ様は、まるで氷の城を根城にする王のようだった。
「ふ、ふふっ、こ、これで、君はもうどうすることもできまい……」
「できないけど……めっちゃ寒そう……」
オールバックくんのオールバックの黒髪はぴしぴしと凍り、鼻水が垂れ、腕を寄せてかたかたと震えている。
「ああ、寒い……。寒いから、さっさと降参してくれると助かる……」
このまま時間稼ぎをしたら凍え死んでくれたりしないだろうかと一瞬考えたけど、その前に魔力を回復した彼が攻撃に転じれば、僕の負けは確定するだろう。
何かを仕掛けるとすれば、彼が氷の壁の連発で魔力を消費した今しかない。
……ファイアーボールしかできないけど。
(感情をエネルギーに変える)
僕はとっさに思いついたことを口走った。
「ミヤザワくん! そこにいるアーデルハイドを口汚く罵ってくれ!」
「へ?」
「は?」
ミヤザワくんとアーデルハイドが、同時に声を発した。
「で、できないよ、そんなこと……」
「いいや、できる! 君にしかできないことなんだ! それで、思いっきりビンタでももらってくれると助かる!! あとでなんでもおごるから!!」
「べ、ベル、君は一体何を言って……」
「いいから、早く!!」
ミヤザワくんは動揺して、僕とアーデルハイドを交互に見てから……言った。
「え、えーと、えーと……、アーデルハイドのあんぽんたん!!」
「あ、あんぽんたん……」
も、もうおしまいだ……。
ミヤザワくんの悪口ボキャブラリーのあまりにもの乏しさに、僕はがっくりと膝をついた。
しばらく呆気に取られていたアーデルハイドだったが、心が折れた僕の様子を見て、にんまりと笑った。
「よくわからないですが……、貴方の邪な目論見は失敗してしまったようですわね」
自分が試合をしているわけでもないのに、アーデルハイドは勝ち誇ったように言った。
「貴方にしてはずいぶん浅はかでしたわねぇ? 私がこのような薄汚い下民風情から何かを言われたからって、気にするはずがありませんのに……」
ぷっちーん。
あ、きた、きたきた……。
感情エネルギーがものすごく湧いてきた……。
「ありがとう、アーデルハイド。愛してる」
「なっ、なっ、なっ――?!」
生徒たちがなぜかどよめく中、僕は膝をついていた身体を起こして、小鳥遊を突き立てた。
本当はミヤザワくんにアーデルハイドを怒らせて、怒ったアーデルハイドがミヤザワくんをビンタして、それを見た僕が怒った感情エネルギーを使うイメージだったんだけど……。
アーデルハイド、君は僕の期待を裏切らない。
「万物の根源に告ぐ、物質に束縛されし力を放ち、我のもとに収束せよ……」
僕は今度は略すことなく、自分の感情エネルギーの全てを込めて、詠唱をする。
あの分厚い氷壁を突き抜けることができるかは、わからない。
というか、多分無理だろう。
……でも、もう他に手は見当たらない。
全力でやって、それでダメなら、僕には魔法の才能がないということだ。
士官学校を退学になったら、冒険者ギルドの正職員にさせてもらおうかな。
あ、でもベルゲングリューン市もちゃんと開拓しないと。
なんだ、やれることは色々あるじゃないか……。
いや、今は余計なことを考えるな。
僕はいつも、考えすぎるから、感情エネルギーが散ってしまうんだ。
えらい貴族の令嬢が、ミヤザワくんを薄汚い下民風情って言った。
むきたてのトウモロコシみたいにつるつるで清潔感あふれるミヤザワくんを。
口汚く罵ってとお願いして、熟考した挙げ句、「あんぽんたん」しか出てこない、天使のようなミヤザワくんを……。
おおおおお、エネルギーがみなぎってきた!!
僕は全身のあらゆるエネルギーを小鳥遊の柄頭にはめられた「アウローラの目」に注ぎ込みながら、その魔法名を全力で叫んだ。
「ううううおおおおおおおあああああァァァァァファイアーボールウゥゥゥゥゥッッッッ!!!!!」
……。
……。
炎の弾は、でなかった。
「ふ、ふははははっ!! どうやら魔力が枯渇したようだな!! 君の負けだ!!」
「そ、そんな……」
勝ち誇ったオールバックくんの声と、呆然とするミヤザワくんの声。
「ん、おや……、天気が崩れてきたようだな……」
もはやゆるぎない勝利に酔いしれたオールバックくんが、なにげなく空を見上げる。
雲ひとつなかった青空に、みるみるうちに暗雲が立ち込め、雷鳴の轟きと共に無数の稲妻が走る。
「お、おい、これって……」
「い、いや、さすがにそれはないだろ……、だって思いっきり『ファイアーボール』って言ってたじゃん」
「だ、だって、さっきは思いっきり『サンダーボルト』って言ってファイアーボール出してたぞ……」
「また、石ころが降ってくるんだよな。そうだよな?」
そんな生徒たちのひそひそ声は、無数の赤黒い凶々しい光が分厚い暗雲をかき分けて、天空から地上に差し込みはじめた瞬間、悲鳴へと変わった。
「メ、メテオだ……うわああああ隕石群召喚魔法だ!!!!!」
「あのバカ、本当に発動させやがった!!!!」
「ファイアーボール詠唱してメテオストーム出すバカがどこにいるんだ!!!」
「そ、そんなこと言ってる場合か!! 逃げろ!!!!」
「……あ、あの男が隕石群召喚魔法を発動させたですって……?! あ、ありえない……そ、そんな、そんなことがあるはずありませんわ!!」
『えー、会場の生徒諸君、並びに職員はただちに試験を中止して避難してください。広域戦略級魔法である隕石群召喚魔法の発動を確認しました。繰り返します……』
教師による広域魔法伝達で緊急避難勧告が出され、生徒たちが悲鳴を上げて避難しはじめる。
「はわわわわわわ!!!!」
「オールバックくん、何してるの!! もう勝ち負けはいいから僕らも早く逃げよう!!」
「か、勝ち負けはいいからって、き、君が発動させたんじゃないか!」
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! ほ、ほら! 早く!! たぶん防護魔法とか関係なしに僕たち即死しちゃうよ!」
「う、動けないんだ……」
「は?」
「氷の壁にはさまれて……、う、動けないんだ……」
「バリアチェンジすればいいだろ!! 金属の柱にしたら通れるでしょ!!」
「な、なるほど!! ふふ、私としたことが、どうやらパニックになって思いつかなかったらしい」
「今度は落ち着きすぎだから!!! ほら、早く行くよ!!!!」
オールバックくんがバリアチェンジした瞬間、僕は彼の手を引いて中庭の方向に向かって駆け出した。
その瞬間……。
ズダァァァァァァァァァァァァン!!!
ズダァァァァァァァァァァァァン!!!
ズダァァァァァァァァァァァァン!!!
ズダァァァァァァァァァァァァン!!!
ズダァァァァァァァァァァァァン!!!
無数の巨大な隕石が流星のようにグラウンドに降り注ぎ、すさまじい衝撃音と共に大きなクレーターを次々と作っていく。
「ファイアーボールって言ったのに!! ファイアーボールって言ったのに!!」
「こ、こんなファイアーボールがあるわけないだろ!!! 君はむちゃくちゃだ!!」
目の前に広がる絶望的な光景を眺めながら、僕とオールバックくんは絶叫した。
「あ、だめだ……気絶しそう」
「お、おいっ!! こんなところで気絶するやつがあるか!!」
身の丈に合わない最上級魔法を放ったせいか、それとも、眼前の光景を目にしたからか……。
僕の意識は急速に遠のいていった。
(もう、おしまいだ……僕の人生はおしまいだ……)
薄れゆく意識の中。
巨大な穴ぼこだらけになったグラウンドを見ながら、僕はそんなことを考えていた。




