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最終話 破壊神

序章完です

 あぁ……なんだ……目の前が真っ黒に染まっていく……。


 終わりか……本当につまらない人生…………いや、辛い人生だった。



 でも、これは良い事なんじゃないだろうか……? こんな人生続けても、何も良い事なんてないだろうし。


 死ぬ事が…………終わる事が…………良い事? なら何故…………僕は生まれてきたんだ……?



『………………………………ぅぅ』



 僕が何をした? 僕の何が悪い?


 何故、生きる事すら許されない? 何故死を他人に決められなければならない?


 神術の才能がないだけで、何故ここまでの仕打ちを受けなければならない?


 神術……? 神……? 超越者……? 支配者……? 崇拝対象……?


 ふざけるな、誰も助けてくれなかった……見て見ぬ振りどころか、一緒になって石を投げ付けてきた。


 神も同罪だ、自らの力を分け隔てなく与えておいて、この仕打ちは何だ?


 誰にも迷惑を掛けたつもりはない……誰にも助けを求めた事はない……誰にも祈った事はない。



『…………………………ぅぅぅぅ』



 存在が許されない、神に触れられなかった愚物は……排他される。


 神術が使えない、ただそれだけで。


 僕が間違っているのか? …………いや、間違っているのは世界、神術に支配された愚者達…………そして神だ!!


 こんな世界、未練などない。


 神によって支配された、こんな世界など。



『…………ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ』



 …………なんだよさっきから? うるせぇな……人が最後の最後で悟り開いたってのに。



『……ぅぅぅぅうえぇぇぇぇぇん……』



 鳴き声? 泣き声? なんだか抽象的……男か女か……人か動物かも分からない。


 この真っ暗な空間で、何かが泣いている……?


 僕は無意識に、泣き声のする方に向かう。向かうと言っても、歩いている感覚はない。ただ進んでいる……としか言えない。



『お~ぃおぃおぃおぃ……お~ぃおぃおぃおぃ……うえぇぇぇぇぇん』



 ……なんだこれ? 光? 黒い……光? 黒いのに光ってる……。



『うわぁぁぁぁぁん…………なんて……なんて悲しい人生……』


「……しゃべった!? ……あん? 僕もしゃべれた!?」



 え……声、普通にでるぞ? 死んでないのか……?



『うぅぅぅ…………いや、お前はもう死んだよ……』



 ……やっぱり死んだのか…………って心で思っただけなのに聞こえるのか!?



『そりゃ~お前の体の中にいるんだもん、我の心の声も聞こえるはず……』



 この光の心の声……? どれどれ……。



〈初めましてぇ! 我の名前はハカイ・シン!! シンって呼んでぇ!!〉



「だぁぁぁ!? 気持ち悪っ! こいつ!? 直接脳内にっ!? ……キャピキャピするなっ!!」


『むぅ……すまん、軽い神ジョークだ』


「……クソ女を思い出すからやめてくれ……」



 そっくりだった! ……くそ! あのビッチ、今度会ったら……。



「……会うわけないか……」


『す、すまん! まさかクソビッチがそんな喋り方だったとは……』


「……あんた、クソビッチの事知っているのか……?」


『……そりゃあ、ずっと聞いていたからな。豆モヤシが行っているあんな大掛かりな儀式などせんでも、呼んでくれたらすぐ降りて来るのに……』



 すぐ降りて来る? 何言ってんだこいつ?


 相変わらず黒い光がプカプカと浮いている……漆黒の空間に浮かぶ黒い光の球体。


 何故認識出来るのか分からないが……出来るんだから仕方ない。



『何言ってるって……お前さぁ、この状況で気が付かないのか? 我が何者なのか……』



 大体予想はついているけど……。


 僕は死んだ……手足の感覚はないのに動き回る事が出来る。僕の人生を知っていて、そしてさっきの言葉。



「……あんたが僕を生贄にして呼び出された神様か?」



〈ピンポンピンポン大せいか~い!! ご褒美ぃ、なにあげちゃおうかな!?〉



 ム、ムカつく、まさにクソビッチ……こんな女に惚れていた自分が恥ずかしい……。



『ふははは、そう睨むな。褒美をやると言うのは本当だぞ? あ、あと我は生贄なんて捧げなくても降りて来るぞ? 残念ですが、貴方は無駄死にです……』


「……神から褒美だと? 何を今さら、ふざけてんの?」



 こいつ、さっきの僕の憎悪の感情を聞いていたんだよな? 憎悪の対象の一つである神、その対象が僕に褒美だって……?


 別に無駄死にとかどうでもいい……僕は死を受け入れたんだ。



『…………まぁ、お前の気持ちは分かる。神を憎む気持ちも凄くよく分かる。……でもな、この世界は神の作ったルールで動いている。いくら抗っても、人間如きの力じゃ何も変わらない』


「……抗う? 何言ってんだ、別に神に抗おうなんて思ってない! お前達の作ったルール……神術のせいで僕の人生は滅茶苦茶だ!! ……だからもうこの人生は終わりにするんだよ、こんな世界、もうたくさんだ!」


『……それで? 今回の人生を終わらせて……その後どうなる?』


「ど、どうなるって……知らないよ、生まれ変わったりするんじゃないのか?」



 僕が死んだ後? どうなるって……死は終わりだ、何かが新しく始まらないとしても、この人生を終わらせる事は出来るんだから。



『そうだなぁ~お前の言う通り、死んだら生まれ変わるぞ? 転生ってやつだな』


「ならそれでいいよ、今までの人生よりはマシになるだろ……」



 僕の人生より酷いって事はないだろ…………いや、もっと酷い人もいるかもしれない。でもいたとしても、僕には関係ない。


 僕はもう、僕である人生は嫌だ。



『あらあら、すっかり生きる気力を失くしているなぁ……まぁもう死んでんだけどな』



 分かり切った事を言う黒い球体を睨みつける。


 もちろん、気分だけど……目があるのかどうかも分からないからね。



『……残念だが、お前の次の人生が今までより良くなる事はないかもしれない……』


「……は? なんで分かるんだよ? 神だからか……?」



 この黒い球体は神。何の神か知らないが、次の人生も良くないって? ふざけるなよ。



『……この世界はバランスで保たれている。全てだ、小さな事から大きな事まで、ありとあらゆる事柄がバランスを取って存在している』



 バランス……? 何が言いたい?



『運が良い奴もいれば悪い奴もいる、身長が高い奴も低い奴もいる…………そして、幸福な人生を送っている奴もいれば……酷い人生を送っている奴もいる』


「……なんだよそれ、僕の人生は神によって作られたものだってのか?」


『……言ってしまえばそうだ。お前が酷い人生を送っている裏で、どこかで知らない奴が幸せな人生を送っている……バランスだ』



 またしても神、正直神なんて身近に感じた事もなければ意識した事もない。


 それが今はハッキリと負の感情を覚える、死んでから気づくなんてね。



「……ほんとつくづく神ってクソだな? ……でも転生して、どうして次の人生も不幸って事になるんだよ? 幸福な人生が与えられるかもしれないだろ?」



 もしかして僕は神にも虐められているのか? 今回は悪い人生だったんだ、次はいい人生を送らせてくれ……頼むよクソ神様……。



『転生を司っているのは、転生神だ。あいつがこの世界に存在する者全ての転生先を操作している。人間に転生する奴もいれば、虫や魔者になるやつもいる』



 魔者……あんな醜い化け物に転生はしたくないな……。



『転生先を選んだら、その人生を決める。さっき言っていた不幸な人生、幸福な人生ってやつだな』


「はぁそうですか……それで? なんで次の人生がまた不幸になるのさ」



 だってそうだろ? 決まっているような言い方していたけど、その転生神とやらが決めているんだったら、良い人生にしてくれるかもしれないだろ?



『……奴は病んじまったんだよ』


「……はぁ? 病んだ? 神が?」


『昔のあいつは、ちゃんと考えて転生させていたようだ。今回は悪かったから次は良い境遇にしてあげよう……逆もしかりだ。……そう長い事転生を司ってきたが、自分が与えた人生で苦しむ者の姿を見るのが、耐えられなくなってきたそうだ。長い時間、苦悩し苦悩し…………そして奴は考えるのを止めてしまった』


「……なんだそれ? 神のくせにナイーブかよ? 自分でやった事に苦悩だ? ふざけるなよ……人の人生を無茶苦茶にしておいて、見ているのに耐えられません? 責任放棄もいい所だ」


『そうだなぁ~それについては我もそう思う。何はともあれ、奴はもう転生に頭を使っていない、同じバランスの繰り返し……いい人生の奴は次もいい人生、悪い奴は次も悪い人生、つまり……』


「……僕がその悪い人生をループさせられるって訳か……ははは、笑えない冗談だね……」



 死んでも同じ……? なんだよそれ、どうすればいいってんだよ。



「……転生しても意味がない……同じような人生……冗談じゃない、それなら転生なんてしないほうがマシだ……」


『転生させない方法ならあるぞ? 我なら可能だ』


「……本当かよ? じゃあもういいよ、僕を――――」


『――――本当にいいのか? 転生の輪から外れれば、二度とお前は生まれてこない。……果てしなき無、それはお前の今までの人生よりも辛い事……それが永遠に続くんだぞ?』


「じゃあどうしろってんだ!? 転生してもしなくても辛いなんて、僕は世界のバランスを取る為だけに存在しているってのか!?」


『…………だからさっきも言っただろ? お前に褒美をくれてやる。――――お前はその褒美で、この腐ったルールを破壊するんだ』


「…………破壊……?」


『気に入らない物は破壊しろ、邪魔な物は破壊しろ、お前を貶めた者は破壊しろ、お前に纏わり付いている呪縛を破壊しろ! 我がお前に力をくれてやる、全てを破壊する力を…………この、破壊神様がなっ!!』



 破壊神……この出会いが僕に起こった唯一の良い事。


 人生が終わってから、人生で一番の良い事が起こった。


 いや、まだ良い事なのかどうか分からない。


 神なんて信用出来るか、もし本当に全てを破壊できるのであれば……僕は神すらも破壊してやる……!!


お読み頂き、ありがとうございます


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