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第一話 僕

読みやすさ重視、難しい言い回しはしませんできません

コメディ路線の予定です

 突然だけど、僕はこれから死ぬようだ。


 意味分からないだろう? 僕も意味が分からない。


 実は僕はある事で投獄されていたんだ。もちろん無実だよ?


 そして今日、見慣れない奴が僕の牢獄にやって来た。釈放かと思ったよ。


 ……でも。



≪治験に協力してくれたら、無罪放免としてやる≫



 こんな事言われて、疑いもせず受けた僕も悪いけどさ……釈放されるならって。


 ひょこひょこ付いて行った先の部屋は、まぁなんとも禍々しい部屋。血のような真っ赤な液体で描かれた魔法陣、陣の中央にあるのは夥しい数の頭蓋骨。


 普通に考えれば、明らかに異常だよね? どっかの狂った部族じゃあるまいし、陣を囲む人達は皆黒いローブを纏ってブツブツ呟いているし。


 極めつけは……。



「気分はどうだい? オルクス・リミットレス」



 僕を治験に誘った張本人。このモヤシ野郎……そのオシャレ眼鏡をぶっ壊してやりたいぜ。



「あなたにはこれから、とある神を呼び出す為の生贄となってもらいます」



 もう何回も聞いたよ、何回言うんだコイツ? モヤシに豆がくっ付いたような風貌しやがって、豆モヤシ野郎が……。


 豆モヤシはそのひょろひょろとした体を揺らしながら僕に近づいて来る。



「まぁ簡単に言えば貴方は死にます。貴方は死に、その器は神の依り代となるのです」



 簡単に言わないでくれ。もっと詳細な説明を要求する!


 口を塞がれている為、視線だけで訴えてみるが、このモヤシには届かない。



「光栄でしょう? なんの取り柄もなく、なんの役にも立たず、何の価値もない貴方ですが……偉大なる神の御降臨に使ってもらえるのですから!」



 ふ、ふ、ふ、ふざけんなぁ~! 確かに僕はなんの取り柄もないし役立たずだし生きている価値はないよ!? でもなぁ! 僕だって…………っふ、悲しくなってきたぜ……。



「おやぁ? 笑えるなんて余裕ですね? ではその調子で逝っちゃいましょう!」



 軽く言うなっ! あの世に行くんだぞ!? お使いに行くんじゃねぇんだ!


 そんな軽い感じで僕はこの人生に終止符を打つのか!? ふざけんなよ! 僕の人生をなんだと思って……。


 僕の人生……なんだったんだろう……。


 生まれてから今まで、良い事なんてあっただろうか?


 両親や兄弟からは蔑まれ、暴力を受け続けてきた。生傷が絶えず、暴力を受けるのが当たり前なんだとも思ってしまっていた。


 生まれ故郷の人間達は、一人を除いてみんな僕を虫けら扱い……。


 理由は……この世界なら誰でも扱える神の御業、神術が使えないから。


 神術は誰でも使える。それこそ、産まれたての赤ん坊ですら使えるレベル。


 いや、正確には僕にも使えるよ? でも、ビックリするほど才能がない……神に嫌われているんだってさ。



「さぁ、準備完了まであと少し……今の内にゴミ人生を振り返ったら如何です?」



 うるせぇモヤシだな、今まさに振り返ってるよ。


 この世界で神術が使えない……様々な神の恩恵を受けているこの世界で、神に見捨てられた子。


 なんか微妙にカッコよくない? 神に見捨てられし者……オルクス。


 ……馬鹿か僕は、見捨てられたこの人生、本当にゴミだったよ。


 唯一僕に普通に接してくれていた、幼馴染の女の子……貴方はこれから大変だろうから、私が貰ってあげる……なんて結婚の約束までしていた女。


 頭も普通、容姿も普通、他の皆は僕を腫れもの扱い……でも彼女だけは違ったんだ。


 何年か前にさ、村に勇者を名乗るイケメンが来たんだ。


 村は大騒ぎ、大はしゃぎ……僕は存在を隠され、納屋の中から様子を見ていた。



「ふふふ、ついにこの時が……神術などではない……神そのものの力を、私が!!」



 うるさい、黙ってくれ。まだ人生の半分くらいだ。


 どこまで話した? そうそう、幼馴染……あの女!


 言わなくても分かるだろ? あの女、勇者に見初められ簡単に着いて行きやがった。


 いや、着いて行くのは仕方ないよ? 人間だもの。


 でもアイツ、最後の最後でとんでもねぇ爆弾を爆発させて行きやがった。



≪……オルクス? あぁ、あのゴミですか? 少し優しくしたら、くっ付いて来ちゃったんですよ~。まぁ奴隷商にでも売って、お金を稼ごうとキープしていたんですけど……勇者様に着いて行けるなら、お金の心配なんていらないし~≫



 あのクソアマがっ!!


 後ろの豚小屋で僕が聞き耳立てていると知らずに、欲望を吐き出しまくり、煩悩まみれのクソビッチ!


 大体僕なんか売った所で大した金には……いや、やめておこう。人には金で測れない価値があるのだ!



「……なに? 血が必要? ちょっと待っていなさい」



 こんな村にいる意味がなくなった僕は、すぐに村を飛び出したよ! ……痛っ!!


 何このモヤシ? いきなり人の腕切ったんだけど……? 血、出てるんだけど……。


 まぁいい、今さら血の一滴くらい…………いや、ちょっと出血ヤバくね?



「ほら、生贄の血です…………そうですか! もうほぼ完了ですか!!」



 ヤベェ!! もう時間がない? 出血多量で若干意識も朦朧としてきた! 悪いけど急ぎ足で行くよ!?


 村を飛び出しても最悪だった!


 みんな僕を虐めた!


 やっと出来た仲間にも裏切られた!


 信じては裏切られ、信じては裏切られのループ人生!


 そして無実の罪で投獄! 罪状は仲間の女のパンツを盗んだから!


 いや盗んでないよ? ここ重要!


 パンツ盗んだだけで三年間も牢獄生活!


 おかしくね? どんな価値あるパンツだよ!? ……いや可愛い子だったけどさ……。


 そしてやっと釈放! ……かと思ったらこれだ!


 生贄!


 そう、生贄! 人生終了!!



「……ふふふ、ははは……はぁぁぁぁははははは!!!」



 時間切れか!? モヤシが典型的な雑魚笑いを始めたぞ!?



「……準備は整いました。オルクス君? 最後に言い残す事はありますか?」



 馬鹿かおめぇ、口塞がってんのに言い残す事もクソもあるかよ!?



「ほぉ……潔いですね? 座して死を待つ……最後の最後で貴方の事をミジンコほど尊敬します」



 ……え、初めて尊敬された…………ってミジンコってなんやねん!?


 座してねぇし! 磔だし! イエス何とかと同じポーズだし!?



「では、儀式を開始します……ありがとうオルクス、世界で一番の愚か者……」



 ……え、初めてお礼を…………ってやめろォ! 喋らせろォォォ!!


お読み頂き、ありがとうございます


宜しければブクマや評価のほう、お願い致します

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