申し子、魔脈について調べる
魔脈の種類名を修正しました。山脈系→山系 海洞系→海系
魔獣肉魔獣肉ダンジョンダンジョンって騒いでいるけど、だいたい、ダンジョンってなんなのか。
小説やゲームには出てきていたけど実際に日本にはなく、この国にはあると聞いて行ってみたかった場所。危ないんだろうけど、なんか気になる存在。
会食の時に熱心に話を聞いたせいか、国土事象局長官が好きなように調べていいよと資料室の入室許可をくれた。
なので、下番後に少しだけ読みに来たわけよ。資料室は巡回時に見回る部屋のひとつだけど本のタイトルを見ることはないから、どういった本があるのかは知らなかったのよね。
調べてわかったのは、洞窟がダンジョンになるらしいってこと。
日本にもあるような風穴とか鍾乳洞とかの洞窟に魔素が溜まって、魔獣や魔物のすみかとなりダンジョンになると。
まぁ、確かに、洞窟にはコウモリだのネズミだのがいる。で、あれらが魔素を取り込んでいって魔獣になるということだから、ダンジョンってそんなに不思議なことでもないのかも?
デラーニ山脈からデライト領の海の方へ伸びているのは山系魔脈っていわれているタイプ。魔素と山の気(地の気や風の気が混ざった気らしい)を含む魔脈なのだとか。
その魔脈に干渉しているのがデラーニ南三号という風穴らしい。メルリアード領にも近い場所。
溶岩流でできた風穴で、風が抜けるからか魔素は溜まりづらく、横穴ができると魔素が溜まるかもしれない。と、長いこと様子見されている記録が残っている。
もう一つのデライト領の海岸近くへ伸びている魔脈は、海系魔脈で海の気(水の気や風の気や地の気が混ざっている)を含んだ魔脈らしい。
こちらは海の侵食によってできたノスライズ海洞という洞窟に干渉している。
レオさんの話によると、魔獣の動きが活発なのはこちらの海洞付近なのだそうだ。
海面より上の入り口が小さく、そちらからの調査が望めないと書いてあった。地上側の出口は見つかっていない。
中で魔素が溜まっているらしく、地上に漏れ出ている分で魔獣が活発になっているのだろうとのことだった。
あたしは読んでいた本を棚に戻し、椅子で丸まって寝ていたシュカを抱き上げた。
『クー……(ごはん……?)』
「まだお城よ。もう帰るからあとちょっとでごはん」
(『わかったのー……』)
まっすぐ帰っていればそろそろごはんの時間だったから、おなかもすくか。
近衛団に戻ってからはおやつの時間もないもの。かくいうあたしもお腹はすいている。
それにレオさんがいない近衛団は、なんか物足りないというか味気ない。
――――早く帰ろっと。
また寝てしまったシュカを抱えて、早足で納品口へ向かった。
[転移]で前庭に着くと、アプローチの横に明かりが灯った。
通路に沿って魔ランプの道ができ、玄関の横のライトが光る。
アプローチを歩いているうちに玄関の扉が開いて、レオさんが途中まで迎えに来てくれた。
「おかえり、ユウリ」
差し出された手に指を伸ばそうとしてシュカを片手に抱え直す。するとシュカはもそっと起きて、差し出されていたレオさんの手の方へ移っていった。
ええ……? その手、シュカが乗っちゃう……?
困惑している間にレオさんはシュカを片手で抱えて、空いてる手をもう一度差し出した。
「――――ただいま戻りました……」
そう答えて、手を乗せた。
「今日は魔脈を調べてきたのか?」
「はい。いろいろと不思議なので。資料を読んでて思ったんですけど、洞窟からダンジョンに育つなら、その前にダンジョンにしないこともできるんですか?」
「――――そうだな、やろうと思えばできるかもしれないな。だが、ダンジョンは資源という面もあるから、その場の事情によるだろう」
ダンジョンは資源!!
そうか、そういう一面もあるのね。
「デライト領にできたら資源ですか?」
「今できているらしき場所なら資源と呼べるかもしれない。だがどんな魔物が出てくるか、できて入ってみるまでわからないからな。――――来週、国土事象局が調査に来るんだが、ユウリの都合が合うなら同行するか?」
「はい、ぜひ!」
「ではそのように手配しよう。さぁ中へ入ろう。今日も料理長が腕をふるっているらしいぞ」
三段プレートの夜ごはんが今日も待っているらしい。お店のためだし美味しいからいいんだけど、ちょっと飽きてきたのも本音だったりする……。
「……レオさん、あの、休みの日は自分で料理してもいいですか?」
「もちろん、構わないが――――食材はどうする? 料理長に頼んでおくか?」
「あっ……たいしたものは作らないので、厨房で余っている食材を分けてもらえるとうれしいんですけど。もしかして使う分だけ注文して余ったりはしないですか?」
「いや、多めに注文するから大丈夫なはずだ。なんなら俺が買って来ても――――その、もしよかったら、俺もユウリの料理が………」
獅子様はこちらを見ないまま小さい声でそんなことを言った。暗くてよく見えないけど、もしかしたら顔も赤いのかもしれない。
――――ああ、もう!
この大きな人は時々とてもかわいい。
「何になるかわからないですけど、レオさんがいっしょに食べてくれたらうれしいです」
見上げれば極上の笑顔。
繋がっている指先への力が、ちょっとだけ強くなったような気がした。
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